グレン・ビルップ氏 ハリウッド・アートセミナー
~公開!ディズニーが認めたデッサンテクニック~
ディズニー、ドリームワークスをはじめとする大手アニメーション制作スタジオのクリエイターを対象にデッサン教育を実践してきたグレン・ビルップ氏。このたび本学客員教授であるグレン氏によるデッサンの実演を交えた特別公開授業が行われました。当日はデジタルハリウッド大学の学生のほか、「クリエイターにとって“デッサンの神様”ともいえるグレン氏のデッサン技術をぜひライブで学びたい」と一般の方々も多数参加し会場は大盛況。“キャラクターに命を吹き込むデッサン技術”を丁寧に伝授してくださったセミナーの様子をお届けします。
想像とは思えない細かく正確なデッサンの数々
「初めてディズニースタジオで働いた時に、今までしてきたことをして欲しいと言われたんです。私が今までやってきたこと、それは“想像力でデッサンを描くこと”でした。」と自分のバックグラウンドから話し始めたグレン氏。
ルネッサンス時代のデッサン技術に興味があったというグレン氏は、15世紀に活躍したミケランジェロの絵画など、模写ではなく想像からデッサンを描いていった例を沢山見せてくださいました。
想像とは思えない細かく正確なデッサンの数々。
これらは近年の設計に見られる、縦、横を見取って描く現在の3DCG技術とまったく同じ技法だそうです。
「デッサンとは考えること、想像なのです。アニメーションを制作する上では、モデルを立たせて何時間も模写をする技法を学ぶより、想像を紙に表現する方法を学ぶほうが有効です。」と力強く語ります。
アニメーションをはじめる前に、実際のリアルな絵を描く勉強をするほうがいい
「私は『Alias SketchBook Pro(エイリアス スケッチブックプロ)』というソフトを使っています。非常に簡単なプログラムですよ。」といつも使っているノートパソコンを開き、すらすらとペンをすべらせていくグレン氏。
想像によるデッサンの実例です。「ほとんどの美術学校ではデッサンは外から描いていくよう教えていますが、私の場合は体内から描いていきます。」グレン氏の描き方は彫刻を作る工程に似ています。まず彫刻の中にワイヤーを組むように線を描き、続いてまわりに粘土をつけるように厚みを加えていくのです。モデルがいないのに、あっという間に踊っているような複雑な動きの女性の絵が完成しました。その時間約2分。その速さと自然な動きのデッサン技術に驚かずにはいられません。
「キャラクターの動きを自然で本物のように見せるために、物理的な動きを十分理解する必要があります。」絵を描く以外でも、映像を途中で一時停止して人の動きを見る、常に周りにいる人の感情の表し方を観察する、自ら演技の勉強をするなどあらゆることが勉強になるそうです。「アニメーションをはじめる前に、実際のリアルな絵を描く勉強をするほうがいいですね。」と、今度はモデルを前に動きをとらえるお手本を見せてくださいました。
周りを見渡すと、学生もみなスケッチブックを取り出し、一緒になって絵を描いていました。
デッサンを学ぶためにグレン氏が必要と考える時間
約1000時間。これは、デッサンを学ぶためにグレン氏が必要と考える時間です。1000時間学んではじめて進歩が見えてくるそうです。週に5時間勉強したとすると4年。グレン氏自身は父親が絵画好きだったということもあり、5・6歳のときから絵本をまねて絵を描いていたとか。
「72歳から逆算すると67 年、絵を描いていますね。」
頭の中で想像したことを視覚化することでデッサンを表現する方法は?
和やかな雰囲気の中、学生から質問があがりました。すらすらと英語で質問をしていく学生たち。
海外でも通用するクリエイターになりたい、と日ごろから英語を鍛えている学生にとって、世界で活躍しているグレン氏に自分の言葉で質問できた嬉しい瞬間です。
質問内容は「頭の中で想像したことを視覚化することでデッサンを表現するということですが、どのようにイマジネーションを作っていくのですか?」というもの。
「5人の子供たちに自分で創ったストーリーをよく話しましたね。他にはデッサンを楽しむためによく外に出ます。雲や木を見て、思った通りに表現をしていくことは楽しいですよ。」答えるグレン氏もとても嬉しそうでした。
これからもみなさんの想像をカタチにするデッサン技術を伝えていきたい
最後にグレン氏からアニメーション業界を目指すみなさんにメッセージをいただきました。
「アニメーション産業で働くことはとにかく楽しい。ビジネスですので大変なこともあります。しかし、アニメーション制作で生計を立て、これこそ自分の仕事、と思ってくださるなら素晴らしい人生になるでしょう。私自身も長い間この産業に携わることができ、とても幸せです。そして、これからもみなさんの想像をカタチにするデッサン技術を伝えていきたいと思います。」
(取材/谷口千佳 ・ 原稿/瀬谷久美子)
グレン ・ ビルップ氏 Glenn V.Vilppu
本学客員教授/Artist /Professor,UCLA School of Film and Video,Animation Work Shop, OwnerViluppu Studio,Instructor American Animation Institute of the Animation Guild,Los Angeles
国際的に著名なドローイング講師、講演者であり、ロサンゼルスで長年に渡りアーティスト育成に力を注いできた。過去16回個展を開き、世界中に存するディズニーのスタジオや、ワーナー映画プログラム、ドリームワークスなどのアーティストを指導。また、数多くの米国中の大学やアートスクールでも講義を行ってきた。現在は、UCLAフィルム&ビデオスクール、アニメーションションワークショップなどで教鞭をとる。
















