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『時をかける少女』の細田守監督が、「新日本様式論」の授業にゲスト出演
「私は、いまの10代を、全肯定したいんです」

何度もそして今後もリメイクされていく作品は滅多にない

「時をかける少女のように、何度もそして今後もリメイクされていく作品は滅多にないと思います。」
2007年7月12日、デジタルハリウッド大学 「新日本様式論」の授業にゲストとして登場した、アニメ監督の細田守氏は、高い評価を受けた自作 『時をかける少女』 の原作について、こんなふうに語り始めた。
「現代を描きたかったんです。古典を描くと、現代が浮かび上がってくるから。そのためには、原作と同じ内容にしたら意味がありません。時代が変われば、内容も変わります。でも、そのなかに変わらないものもある。それを私は描きたかった。」 「ずっと実写で作られてきた作品を、なぜいまアニメで作るのか。それは、裏を返せば、原作が登場した40年前よりアニメの力が強くなった証でもあると思います。時代ごとに “技術”の持つ意味は違っていますし、時代時代の方法で作品は作られるべきだと思うのです。」

作品というのは正直で、作り手の意図が自然ににじみ出てきてしまうのです

アニメ映画 『時をかける少女』 は、近年の日本映画を代表する傑作だと、私は思っている。
現在41歳の私は、まさに 『時をかける少女』 といっしょに年齢を重ねてきた世代でもあるのだが、この映画を初めて観たとき、自分でもビックリしたことに、ラストシーンで涙が浮かんできた。しばらくして、もう一度観てみた。ストーリーを追わなくて済むぶん、最初に観たときよりもっと深く、監督のさまざまな思いを感じながら観ていたのだが、やはりラストシーンでは泣けた。いわゆる “泣かせ” の演出をまったく使っていないにも関わらずである。
授業の最後、監督に質問をさせていただく機会をいただいた。 私はこの映画に “人類への希望” を感じました。監督の実際の意図がどうなのかはともかく、作品に深いメッセージを入れ込むときに注意するポイントがあれば、学生たちにお話しいただけますでしょうか。そんな質問をぶつけてみた。
「はい、“希望” を込めています。私は、この 『時をかける少女』 という映画を10代に向けて作りました。私はいまの10代に対してとても肯定的なイメージ を持っています。というより、全肯定したいし、応援したいんです。でも、映画はそうした意図的な展開にしていませんし、“泣かせ” 演出も使っていません。 作品というのは正直で、作り手の意図が自然ににじみ出てきてしまうのです。私は、メッセージは自分から発するものではないと思っています。
私はこれまで子供向けの映画を作ってきました。子供向けの映画を作ってよかったと思うことは、世界に向けて肯定的になれたということです。人を信じていなければ、『人信じましょう』という映画は作れません。映画を観る側が作り手を変えていくこともあるのです。」

制約を逆手にとってこそ、新しいアイデアが出てくる

監督という仕事の八割ぐらいはスタッフのコミュニケーションであるという細田監督。
発想の原点はどんなところにありますか?という学生からの質問には、こう答えてくださった。 「発想の根本は 『制約』です。それは、お金だったり、人だったり、時間だったり、マーチャンダイジングだったりします。何も制約がないところに、いい作品は生まれません。制約を逆手にとってこそ、新しいアイデアが出てくるのです」
世界的に高く評価される日本アニメ。とはいえ、そこには産業としての 「光」 と 「影」 があるのもまた事実である。そんな状況を日々感じながら、コンテンツ業界に自分の人生をかけようとしている大学生たちと日々接している私にとっても、細田監督のこの日の授業は、まさに「希望」そのものであった。この日、授業に出席したたくさんの学生も同じ思いを共有できたと思います。

細田監督、お忙しいなか、ほんとうに貴重な時間をありがとうございました。

(取材・ 原稿/櫻井孝昌[デジタルハリウッド大学教授])

細田守監督 プロフィール

1967年富山県出身。金沢美術工芸大学卒業後、東映動画(現・東映アニメーションへ)入社。アニメーターとして活躍したのち、演出に転向。TVシリーズやアトラクション用3DCG映像などを演出後、劇場版『デジモンアドベンチャー』(1999年)、『デジモンアドベンチャーぼくらのウォーゲーム!』(2000年)『ONE PIECE ―オマツリ男爵と秘密の島―』(2005年)などを監督。2005年にフリーとなり初監督した劇場長編『時をかける少女』は国内で異例のロングラン興行を記録すると共に、内外の主要フェスティバルで多数の賞を受賞した。CGを随所に生かしながらも、アニメーション本来の絵作りを尊重した高密度な画面作りと計算されたストーリー展開が評価されている。

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