映画 『花より男子F (ファイナル)』 ができるまで
~ 監督とプロデューサーが語るヒットの法則 ~
神尾葉子原作による日本一の売り上げを誇る伝説の少女コミック 『花より男子』。 2005年、2007年と放送されたTVドラマでは井上真央、松本潤、小栗旬ほか豪華キャストで大きな話題となり大ヒットを飾った 『花より男子』。そして今年の夏、満を持して映画 『花より男子F(ファイナル)』 が公開されました。
デジタルハリウッド大学では、この公開を記念して石井康晴監督と瀬戸口克陽プロデューサーをお招きし、製作秘話、映画業界で活躍する秘訣などを語っていただく特別講義を開催しました。当日はデジタルハリウッド大学の学生を中心に一般の方も多数参加者が集まりました。製作の裏話では笑いのこぼれる場面もあり、楽しい講義となったその一部をお伝えします。
人気ドラマ 『花より男子』 の誕生秘話。キーワードは、「ピンチはチャンス」
瀬戸口克陽プロデューサー(左)/石井康晴監督(右)
瀬戸口さん:書店で 『花より男子』 の完全版を目撃し、久しぶりに読んで非常に面白いと思ったんです。
でも、セレブの設定で非常にお金がかかるので企画が通しづらい。そのため2005年春時点で、翌年にやれたらいいなぁぐらいに思っていました。
そうしたら、その年の夏に別のプロデューサーが進めていた企画が急遽倒れまして。忘れもしません8月18日に 「いつか 『花より男子』 をやりたいって言っていたよね、秋のドラマでやらないか」 といきなり決まったんです。
石井さん:実は僕も倒れた企画をやることになっていて(笑)、夏休み気分になっていたら会社から電話がかかってきたんですよね。
瀬戸口さん:通常のドラマでは遅くても3ヶ月前には主要キャストおよび脚本家は決まっているので、異例中の異例でしたね。しかし、視聴者の皆さんにぎりぎりに立ち上げたので甘いところもありますがご了承ください、と言うわけにもいきません。3年がかりで作ろうが、1ヶ月で立ち上げようが、見るお客さんにとってはひとつの作品なので、時間がないのを言い訳にするのはやめようと誓い合いました。ピンチはチャンス。テレビ局関係者の人たちは面白半分に見ていたので、その人たちに一泡ふかせてやろうという感じで闘志がつきましたね。
急遽動き出したドラマの企画、気になるキャスティングの裏話
瀬戸口さん:牧野つくし役の井上真央ちゃんとは以前に仕事をしたことがあり、つくしをやるために生まれてきたような子だなと思い、もう迷うことなく決めました。道明寺司役はコミカルな芝居と俺様キャラの芝居が要求されます。グループのリーダーなのでリーダー感も欲しい。松本潤くんは非常に目力も強いし、芝居の力もあるので、このアクの強い役は彼ぐらいの個性が強い人にやってもらいたいと彼にしました。余談ですが、彼に話を持っていったところ、「僕は今まで王子様キャラをやってきたんで花沢類じゃないでしょうか」って首をかしげていたんですけど、3話まで撮影した辺りで、やっぱり道明寺でしたね、と納得してくれましたね。西門総二郎役の松田翔太くんはドラマで見かけたときに、非常に存在感があると感じたんです。松田優作さんの次男だと聞き、茶道の家元という説得力や正統派なところが彼のバックボーンと重なるなぁと思って松田翔太くんを選びました。
普段からアンテナを張って様々な俳優を見ていることが伺えます。そして、そのアンテナが立ったとき、情熱をそそいだ交渉が行われて企画が進んでいきます。その情熱が伝わってくるエピソードもお聞きしました。
瀬戸口さん:花沢類役は難しい役ですよね。何を考えているか分からない、しかし優しさもたたえていて、つくしが憧れる初恋の相手となる説得力も必要。小栗旬くんの舞台を見て彼の演技力なら道明寺と二枚看板になれると思いました。しかし1週間で5回も断られたんです。聞けば舞台出演のため他局のドラマを全部断った後だったとか。それでもしつこく、あなたじゃなきゃだめなんです、と頼みました。今は大ブレイク中の彼ですが、当時はまだその直前だったため、「小栗じゃなきゃできない」 と言われたことがなくドッキリかと思ったと後から語ってくれました。
舞台の稽古が13時から21時。そのため午前中11時までを週に2日、夜を週に1回だけ時間をください、その3日間で花沢類は撮影します、とお願いしてどうにかOKをもらいました。台本を渡したときに彼が、これ3日じゃとりきれない量ですよね。でも面白いし、花沢類って大事なんで僕が寝ないで頑張りますと言ってくれた時には心からありがとうと言いました。
また、美作あきら役の阿部力くんは当時まだ日本では活動していなかったんですね。会いたいと言ったところ、台湾で撮影中で無理と話は終わっていたんです。しかしスケジュールが1日空き、日帰りで台湾に行けば阿部君に会えると考え、マネージャーさんに電話したら、自分たちはいけないが阿部に昼休みを使って会うことはできます。台湾のマネージャーさんは日本語がしゃべれないので阿部の携帯教えます、と僕は阿部君の携帯だけをたよりに台湾にいき、40分だけお昼を食べ、彼がごちそうしてくれて。心意気のいい青年で美作のキャラクターにぴったりだなぁと思いました。しかも会えないはずの彼と運命的に会えたのも何かの縁だろうと決めました。
このキャスティングだからこそ成功する!そう思えたパート1 思い出のシーン
石井さん:これだけきつい中立ち上がっても絶対あたると思っていて、それが確信になったシーンがあるんです。つくしちゃんが道明寺にパンチするシーンですね。その瞬間に恋に落ちるんです。横暴なF4からいじめられないよう耐え忍んでいたのが、我慢できずに彼に初めて反抗するシーンです。かわいそうなつくしちゃんにふつふつと怒りが沸いてくる、そのときの顔!その顔をみた時にこの子すごいなと思いました。この井上真央ちゃんがあって、F4がいて、まわりのキャストがあって、それぞれがキャッチボールになってみんなが良くなっていく。毎週見たくなる子達だなって思ったんです。
そして、視聴者も一緒に作り上げたパート2 思い出のシーン
瀬戸口さん:パート1では日本一の女子高生を決めるコンテストを1500人入る会場で撮ったから、それを越えるラストシーンを作りたいよね、東京ドームで撮りたいなぁとこの時間のない中で監督が言い出しまして。
石井さん:瀬戸口の偉いのは一応調べるところ。「東京ドームはオープン戦があり、ムリですが、日本武道館なら空いていますよ」って。そしてキャストがそろう日と武道館が空いていた一日が同じだったんですよ。神様がやれと言っているなと思い決めました。テレビドラマは視聴者の皆さんと接点がないのでお礼もこめて公開ロケをやりました。今でも覚えているんですけれど、お客さんが入る前に朝の6時から撮影していて、本当にこの広い武道館が埋まるのかと思って外を見たらものすごい人が武道館に集まっていて。
瀬戸口さん:エキストラ1万人のところ15万通応募がきて、厳正なる抽選の結果1万2000人呼びましたね。アイドルがコンサートをやっている気分だねって。どういう場所で出来るかはすごく大事ですね。役者さんのテンションも違うし、それが見る人に伝わる。ハードルは高いけど、乗り越えた先に感動がある。出来ませんということは簡単にできるが「No」というのは悔しい。これなら出来るということを提示し続けようと思いました。
そしてドラマから映画へ、ライバルは自分たち自身
お持ちいただいた脚本。1話ごとに表紙が違うというこだわり。
瀬戸口さん:会社やファンからの続編をのぞむ声がある中、一番慎重だったのは僕らでした。原作の世界を2シリーズかけて描ききりましたし、ファンの期待値も上がっており、納得できるものを提示できないならやらないほうがいいと思っていました。模索する中、これなら胸を張れるという形をみつけだしたのが今回の映画です。キャストも、原作がないのに何をやるんですか?というのが正直なところでしたが、僕らの構想を話したらみんな乗ってきてくれて。チャレンジ精神を大切に、新しいことにトライしようとしたのに賛同してくれました。しかし常に不安はありましたね。パート1は、期待されていないところで結果を出すという一番気持ちいいパターンで、だんだん結果を出して当たり前になり、種類が違うプレッシャーがありました。プレッシャーを感じられることすら幸せなことなので、ライバルは自分たち自身、過去のシリーズをどう越えられるかと考えていましたね。
『花より男子』 のシリーズを通して変わらないテーマと、映画ならではのテーマ
瀬戸口さん:ドラマも含め物語全体として、格差というものをきちんと描けるんじゃないかと考えていました。何でも持っているけれども、一番大切な家族の愛を持っていない道明寺と一番大切な愛を知っているつくしちゃんのシンデレララブストーリーを柱にしていました。
石井さん:そして映画では世界を恐れないというのが自分の中の大きなテーマであって、つくしとF4が世界に飛び出していくことで日本の若い人たちに世界を恐れず、どんどん世界に出ていってほしいという強い思いがありました。また暗い事件が多い時代なので愛情の大切さを一本とおしてやろうと思っていました。結婚をするとはどういうことかを旅を通じて二人が学んでいく感じですね。
最後に、将来テレビや映画業界で働きたい学生のみなさんにアドバイスをいただきました
石井さん:大事なのは、寝ないことですかね(笑)台本にないことを突然いれたりするとどんどん時間がなくなり、キャストは眠れない、スタッフも眠れない、でも撮影しないと終わらない、という感じになりましたね。でも、映画のキャンペーンで5大都市を回っているときに各地で熱烈な歓迎を受けまして、3年間寝ないで頑張ってきてよかったなと思いました。やっぱり理想が大事だと思うんです。日常に追われると忘れてしまいそうになりますが、理想を忘れずに、今思っていることを10年、20年思っていることが大事ですね。
瀬戸口さん:中学生のときに見た 『男女7人夏物語』 で、ラストに恋が実るかと思ったところ、結局ヒロインの大竹しのぶさんは、自分の夢の為に彼氏である明石家さんまさんを残して海外に旅立つ、というラストシーンを見た時、ハッピーエンドじゃないんだ!こんな終わり方があるんだ!と衝撃を受けまして。そのときにドラマを作りたいと思い、そんな中学生のときの夢が実現できているのは幸せですね。夢や情熱を持っていることがやはり大切です。NoをYesに変えるのはその情熱。想いがつまった情熱だけは忘れずにいてほしいです。はじめから100%いいですね、なんていうプロジェクトはひとつもありませんから。ハードルがあってハードルが高いほど非常に成果が出ます。
『花より男子』 の撮影もハードでしたけどありがたいことにこうじゃないと花男じゃないよねっていうスタッフやキャストの体質もあって救われている部分がありました。ドラマの作り手として三大原則は 「寝ない、逃げない、あきらめない。」 この3つが大事。僕はトラブルがなく進むとヒットするのか?と思ってしまうマゾ体質になっちゃったんですけどね(笑)
情熱を持って理想を追求することが大事、と語ってくださったお二人。こだわるからこそハードになってしまう撮影も、熱意とチームワークで乗り越えてきたことが伝わってきました。どこまでもあきらめずに進むその姿勢は 『花より男子』 主人公、つくしちゃんにも投影されていると感じます。ぜひ作品を観て、皆さんもその勢いを感じ取ってください。
(取材・原稿/小島千絵)
映画 『花より男子ファイナル』 あらすじ
大ヒットドラマ、『花男』シリーズ。超自己中心的なセレブ男、道明寺司の一途で強烈な愛は、スクリーンでクライマックスを迎える。婚約の記念に贈られた幻の名宝、“ビーナスの微笑”を取り戻すため、道明寺とつくしはアメリカに。F4のメンバーも合流し、自家用ジェット機で世界中を探し回るが、結婚を前につくしの心は揺れていた。果たして、“ビーナスの微笑”は取り戻せるのか?そして、二人は無事結婚出来るのか?
■公式サイト http://www.hanadan-final.jp/
















