デジタルハリウッド大学 特別講義
―手塚治虫 生誕80周年記念― 映画『MW-ムウ-』
監督・プロデューサーが語る製作誕生秘話!
今夏、7月4日から全国ロードショーされる映画『MW-ムウ-』(以下『MW』)。原作は「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「どろろ」「ブラック・ジャック」・・・ 世界中から愛され続ける漫画界の巨人・手塚治虫。その中で発売当時、内容の過激さやテーマの衝撃性から“禁断の問題作”、“映像化は不可能”と言われてきた作品『MW』。今回映画化にともない、デジタルハリウッド大学では監督の岩本仁志氏、プロデューサーの松橋真三氏をお招きし、映画『MW』の誕生過程、製作プロセス、作品の見所、監督、プロデューサーの役割などを語っていただきました。
MWをなぜ映画にしようと考えたのですか?
松橋プロデューサー
中学生の時に『MW』を読み、こんな漫画があるんだ!と衝撃を受けました。しかし、その頃はまだ、自分がドラマや映画を作る仕事に就くとは想像していませんでした。この仕事に就き、4年前に玉木宏さんと『ただ、君を愛してる』を撮っている最中、次回作は何をやろうかという話になりました。玉木さんは「ふり幅のある役者になりたいですね」ということだったので、悪役に興味はある?と聞いてみたところ「あります」と返ってきました。そこから、悪役が主人公の話って面白いよねという話題になり、ユウキミチオの顔が玉木くんにかぶりまして。『MW』を日本人でやれる人がいるとは思っていなかったのですが、180センチでスタイルもよく顔もよく、男からみても玉木くんは美しいなぁと思ったんですよ。そこで、社長を含めて、事務所に原作本を送り、ぜひやりませんかと持ちかけたところ、面白いと反応をいただきました。過激な作品ですし、お金を集めるのも時間がかかると思うので、時間をください、と動いていきました。
映画を制作する上で、原作使用の許可が必要だと思うのですがその点はいかがでしたか?
松橋プロデューサー
手塚プロダクションに問い合わせると、『MW』に関しての問い合わせは方々から来るとのことでしたが、役者含めた企画プラニングが具体的なところはあまりなかったようで実現に向かうといいですねと言ってくださり話が進んでいきました。私は企画の初期段階では、なるべくシンプルにどういう作品にしたいのか、をわかりやすく簡単にまとめてみます。公開するときに作るチラシの裏面を作るつもりで書くのです。長い時間をかけて映画製作していると、企画の骨子に迷いが出たりします。そんな時に、この最初の企画書をよくみつめ返します。自分が目指していたものとぶれていないか、うまくいっていれば公開したときのチラシと当初の企画書はあまり離れていないものになります。今回は、今見てみるとそうなっていましたね。
岩本監督が監督を務めた経緯を教えてください。
岩本監督
松橋さんがWOWOWにいた頃に出会いました。私が撮った『明日があるさ THE MOVIE』を観て、面白いと言ってくれて、一緒にドラマを作りませんか?と声をかけてくださったんです。私は日本テレビに所属しており、他局での制作は出来なかったため、松橋さんが独立した後に、あらためて映画を撮りませんかという話になりました。そのときの企画は結局実現していないのですが、企画を通して、面白い人だなぁと思っていました。モノを作る上で一番大事なのはパートナーを見つけることです。『MW』はある程度話が固まってから依頼がきたのですが、今までも仕事抜きでいろいろ話していて、比較的に話が合っていたのでタッグを組みやすかったです。映画のようにエネルギーを要するものは信用できる人とでないと、作れません。自分と合いそうな人と仲良くしておくと、ある時、ふと映画が作れるかもしれませんね。
『MW』の原作は刺激的だったのではないですか?
岩本監督
今まで100本を越える連続ドラマを撮ってきているので、色々な作品を作っているのですが、僕は個人的にやったことがないことはなんでもやりたいという思いがありました。映画ではできても、テレビではなかなかできない作品にバイオレンスとエロティックなものがあります。私はそこに惹かれるものがありました。もちろんそういった作品をテレビで製作することもできますが、そのときはテレビのふるいにかけなければいけません。
松橋プロデューサー
『MW』のホモセクシュアルな部分を過激に強調すると、公開に制限がつくことになり、結果的にスポンサーがつかないという危険性もあるので、表立って激しくは描いていないかもしれませんが、賀来が結城を介抱するシーンなどはセクシーに描いています。もし自分だったらと、置き換えてみてもらうと分かると思うのですが、暗喩するように描いています。
オープニングにこだわりのある松橋プロデューサーですが、今回オープニングにはどのような想いを込めて作りましたか?
岩本監督
アメリカドラマ『24』のようにアクションも入れ、緊張感がきれずに見続けられるものを作りたいと思っていました。アメリカのドラマは音楽が少ないのですが、『24』は音楽で盛り上げています。『MW』も129分のうち100分音楽がかかっています。音楽で意味づけをし、オープニングではどんな音楽で『MW』の世界に入ってもらおうかと考えていましたね。
松橋プロデューサー
オープニングはカーチェイスと銃撃戦と決めていました。ハリウッドには製作予算で大幅に負けますので、予算のやりくりでオープニングには予算をかけました。これがどういう映画なのか、を見せるのがオープニングです。ハリウッド並みのチェイスをやって、お客さんの気持ちをつかむ、というのが目的です。ふんだんではない予算の中、ハリウッドの超大作に勝つというのがテーマです。そのため、オープニンングとエンディングにはお金をかけましたが、あとは自主映画のような心持ちで作りました。
オープニングシーンはタイですが、現地のクルーと組んでやった際の日本との違いはなんですか?
岩本監督
タイでは、結構ハリウッド映画が作られていて、ハリウッドのスタッフが使っている機材を持っています。クレーン、照明にしても日本より豊富にあり、オペレーターもいますし、人件費が安いです。人柄的にも微笑みの国で紳士的であり、また英語ができる方が多いです。お金があるわけでもなかったため、通訳をつれていけませんし、通訳を通すと時間ばかりがかかるので、僕らのチーフはバイリンガルです。公用語は英語でした。
タイは去年の6月に1ヶ月ほど撮影したのですが、クーデターで空港が占拠されたため、もう少し長引いていたら帰れなかったかもしれないというトラブルもありました。しかし、カーチェイスのシーンなど、今回の予算では日本で撮れないものを、撮ることができました。また、日本は本物の拳銃がないので、空砲ですが実弾が撃てたことで迫力が変わりました。
デジタルハリウッド大学のすぐ近く、秋葉原のシーンが出てきますが、あのシーンは実際に秋葉原で撮影したのですか?
岩本監督
はい。CGではなく、安全に役者さんを吊るして撮影しています。クレーンを上げて高い位置から撮影していたので、秋葉原にいた人は見上げて何だろう?と思っていたと思います。ナイトシーンが多いので夜中に撮影をしていたのですが、ナイトシーンは暗くて雰囲気がある分、時間がかかるので大変でした。
島や海のシーンはどこで撮影したのですか?
岩本監督
島は千葉県です。木更津の先ですね。千葉だけではなく、タイと千葉を合わせて撮っています。しかもCGを使っていません。ですが映像の色をうまく合わせることによって、気にならないと思います。クルーザーのシーンは東京湾で撮影しています。海も千葉なのですが、実は水の中は東宝スタジオにある水深3メートル弱のプールです。レンズのマジックで深く見えているんですね。プールの底を黒で反射しなくすると深さがわからなくなるのです。
軍隊に潜入していくシーンはどこで撮影しましたか?
岩本監督
タイの軍隊基地の中で撮らせてもらいました。毒ガスマスクをつけているのでわからないですがタイの軍人です。暑い中、ガスマスクをつけて、エキストラをやってもらいました。本当の軍人なのでライフルの構え方も本物です。またC130という飛行機を使いたかったのですが、ちょうどその時期にミャンマーに台風がおきて、災害の救助に飛行機を使用しなくてはならず、使えなくなってしまいました。ですので、映画では、動かない飛行機のみを使って撮影出来る話に、急遽現地で脚本を書き直しました。
テレビドラマ『MW—ムウ— 第0章 ~悪魔のゲーム~』はいつのタイミングで考えついたのですか?
松橋プロデューサー
映画を撮影しているときには全く考えていなかったのですが、映画版の仕上げをしていたときに、公開の盛り上げ企画としてやるべきでは、と話しが出ました。内容はオリジナルで、2時間ドラマスペシャル「太陽を盗もうとした少年たち」という企画で、今の時代鬱屈している人たちを主人公たちに設定し、元気のでる作品をやりませんか?と提案しました。
岩本監督
ドラマは佐藤健くんが主演です。映画の撮影期間はすべて含めて80日だったのですが、ドラマも大変ハードスケジュールで12日間で撮影しました。最短です。期間だけでなく、スタッフも照明さんが1人だけなど、まるで学生映画のような規模で撮りました。ですが、優秀なスタッフ、キャストがたくさんいたおかげでなんとかなりました。
松橋プロデューサー
原作は映画で全部使ってしまったのでオリジナルにすること、映画に繋がる話にすること、テレビでの視聴率獲得を目指し家族で見れる愛の話にすること、と制約が多く大変でした。短い期間で面白い脚本を仕上げるのは本当に大変でした。昼間はいつもの仕事をして、夜に脚本を書く生活をしていましたね。
岩本監督
プロデューサーが脚本を書けるのはいいですよ。細かいとこまで撮影に関してもこれ撮れるとか明確にいえるのでいいですね。何があってもくじけずに頑張ろうと取り組みました。
最後に映画業界を目指す学生へメッセージをお願いします。
岩本監督
僕と松橋君とでアクションエンターテインメントをやりたいといっていたのが映画『MW』です。これからもこういった作品を作りたいですね。日本人スタッフは優秀です。将来、トヨタのように映画産業も、日本人のスタッフで撮れば、低予算でハリウッドと同じクオリティのものが作れるのではないかと思っています。世界に発信し、製作費も回収出来、ハリウッドを超える作品を撮りたいです。文化的な映画の向上としての日本の可能性を信じています。そして『MW』がそのための一里塚だと思っています。みなさんも、気の合う仲間、友達を作って、少しずつ頑張っていけばいい時代がくるのではないかと思っています。ともに頑張りましょう!
松橋プロデューサー
何かをやろうと一歩を踏み出した人にしか何かは作れません。何かを表現して発表するというのは勇気がいると思います。よいことばかりではなく、時として罵声をあびたりすることもあると思いますが、そんな中で、諦めずにやりつづけることでしか次には進めないと思います。みなさんもやりたいと思ったことをやってみるということで、いろんなことが少しずつ見えてきたり、気づけることもたくさんあると思います。がんばってください!
(取材・原稿/小島千絵)
















