ゲームアナリスト平林久和氏が語るゲーム産業界
映画や出版など様々なメディア分野を扱っている高橋光輝教員のデジタルコンテンツ産業概論。デジタルコンテンツ白書2009』の編集委員各位を講師にお招きしています。今回は分野別動向-ゲーム-の章を担当している平林久和氏。株式会社インターラクト代表取締役、ゲームアナリストです。日本のゲーム産業がどのように成長してきたか、世界で認められるようになったのかをお話しいただきました。まず、意識の高い学生からの質問に答えてから授業を始めたい、という先生の意向から、始めに質疑応答が行われました。
学生:ゲーム機、ゲームソフトの開発費高騰について質問です。今日では開発費が以前の倍近くになっていると聞きました。それを解決するためにどのような取り組みが行われているのでしょうか?
2000年代になってから、どれくらいゲーム1本にかかったかといいますと、安くて3~4億円でした。高くても10億円というのが業界の通説でした。ファイナルファンタジーシリーズのような大作ソフトは40億円かかったとも言われています。PlayStation 3においては、最低でも15億円くらいかかるといわれていましたが、最近は改善される方向にあります。解決方法としては、初期の段階に多額の投資をして省力化をするということです。例えば人間を3DCGで作るときに、筋肉の動きを自動計算することができるようになれば、人の手を使わずにすすめていくことができます。
CGをポリゴン(※1)で作っていくかぎり、開発費はあがるばかりです。プログラムで作れば、開発費は下がります。しかし、例えプログラム開発ができても、作り手もユーザーも理想とするレベルが高いので、より高いクオリティが追求されることになるでしょう。ですから、今後、開発費が一気に下がることはないでしょう。
※1)ポリゴンとは、3DCGで立体を表現する際に用いられる、多角形の平面データのこと。
広がるゲーム市場と海外
私は現在、各国の大使館の方たちとも仕事をしています。任天堂という有名な会社がありますが、売り上げの何パーセントが海外かと言いますと、なんと80%を超えるほどです。ゲーム会社が日本国内の会社でも、アメリカの会社に開発を委託し、それでもスタッフが足りない場合はインドに仕事を委託します。世界のいろいろな国と関わりながら作っていくのです。ゲーム市場というのは、それほど海外市場とつながっているのですね。
CGと西洋美術
レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」が名画だといわれている理由は、女の人をなんとなく見て描いたのではなく、何人もの人を解剖した経験の上に描かれているからです。頭蓋骨や人体を解剖学的に探求することによって「モナ・リザ」が生まれています。ビルが爆発する映像を作るとき、ビルがどういう構造になっているか、火薬の熱量を計算する人がいて、どのように粉々になるのかを物理計算をして作っていく、つまり、「モナ・リザ」のように、構造を分かった上で作っていかなくてはならないのです。
ゲームで遊ぶ人から作る人へ
さてここで問題です。「スーパーマリオブラザーズの操作キャラクターは左から右に進みます。なぜでしょうか?」ゲームで遊ぶ側でなく、制作する側として仕事をしたいと思うのならば、「なぜ」なのかを考えなくてはいけません。答えは人間の目の動きが、左から右に進むからです。生まれて初めて触った幼稚園児でも70歳を超えたおばあちゃまでも、そうなるはずです。このように画面設計がされています。また、マリオがオーバーオールを着ているのにも理由があります。オーバーオールにすることで腕の振りが分かりやすくなっているのですね。手を振り、その動きがよく分かることで、歩いている感じを出しています。
学ぶ観点の作り方
続いて質問です。「テトリスに登場するブロックはいくつでしょうか?」答えは7種類です。人間は7を単位に覚えたいという欲求があります。心理学者ミラーによると「どんな人でも、瞬時に記憶できる対象は7個±2個までである(マジカルセブン)」というミラーの法則があります。他にも7が基準になっている例をいくつか挙げてみましょう。1週間は7日間、音階のドレミファソラシも7です。この法則を知っていたテトリスの作者であるロシアの心理学の知識もある科学者は、7つのブロックを生み出しました。このように、今後単に映画を観たりゲームをしたりするのではなく、数を数えるクセがつくだけで、学ぶ観点になります。
今後のゲームの展開
ブロック崩しゲームのように人間の破壊欲求を満たしたり、インベーダーのように途中に敵が攻めたりすることによって、ただの作業ではなく緊張関係が生まれ、ゲームになります。しかし、難しいのは、本来楽しいものに、義務を作ってしまうことです。「撃たなくてはいけない」「逃げなくてはいけない」「謎を解かなくてはいけない」こうなると始めは楽しくとも、だんだん義務感が生まれて嫌になってしまいます。このゲームの義務感は現在のゲームの問題点です。そもそも人間はなぜ遊ぶかというと、刺激が多いところは少ないものを求め、刺激が少ない人は刺激を求めるという循環があるからです。この循環をうまく使い、義務感にならないようゲームを作っていかねばなりません。また、今後はテレビもデジタル化され、ゲームと呼ばれているものと放送と呼ばれているものの垣根が相当低くなります。インタラクティブな放送と銘打って、視聴者が結末を決めていく放送が容易にできる時代になります。このようにゲーム化した放送にも対応していかなくてはなりません。
面白いゲームを作るために
面白いゲームもあれば、面白くないゲームもありますよね。作りたくてつまらないゲームを作っているわけではなく、面白さが出ない作り方をしているのです。作り方を学んでいないのです。ヒトとヒトとがどのようにコミュニケーションを取っていくか、「ヒトとの距離」がゲームにも表れてしまいます。私は、ゲーム制作会社に対して、スタッフとの距離のとり方や、広告宣伝のやり方などを人事組織に対して教えています。コンテンツ制作に関係ある空間の距離は、心の距離ということを念頭に置いてください。心が遠いと良いコンテンツもできません。みなさんがどの業界にいったとしても、チームでヒトと仕事をすることが生じます。心の距離を遠ざけないということをみなさんも心がけてください。
(取材・原稿/小島千絵)
















