「アニメ・ビジネス・フォーラム+2009」 ~生き残りをかけた各社の戦略を斬る~
テレビ作品の減少、DVD販売の低迷と、アニメバブルの崩壊が始まったと言われています。今後のアニメビジネスはいったいどうなるのか、業界の要人をゲストに迎え、アニメビジネスについてあらゆる角度からお話いただくデジタルハリウッド大学国際アニメ研究所主催「アニメ・ビジネス・フォーラム+2009」が開催されました。
はじめに
今回のフォーラムの企画者であり、国際アニメ研究所副所長の高橋先生より冒頭で挨拶と趣旨が述べられました。「デジタルハリウッド大学はCGやITのイメージが強いですが、2005年より世界的に評価の高い日本アニメに着眼し、国際アニメ研究所を立ち上げ、学際的な研究に努めてきました。今回はその中でも最新の産業動向を広く概観するという意味合いで実施されたものです。低迷するアニメ業界を以下に乗り切るか?産業構造から放送局、広告代理店、制作会社の役割やポジションをまさに変革するときがきています」と解説がありました。
今回のフォーラムではアニメ業界の方を中心に100人もの参加者が集まり、会場は熱気に包まれました。
「シュリンクするアニメビジネスの現状と今後」 エー・ティー・エックス 取締役 岩田圭介氏
アニメは2006年に世界市場がピークに達し、飽和状態にあり、岩田氏は「アニメビジネスはシュリンクする」 つまり 「縮小する」 との予測をしています。そんな中、テレビメディアのビジネスモデルの崩壊をもたらした原因のひとつである元違法動画サイトと提携し、合法ビジネスへと転換している例をお話くださいました。課金モデルと広告モデルを併用する形で2009年1月から開始し、違法動画のアップを抑制する効果も期待されています。テレビ局もメディアミックスをうまく活用し、新しいビジネスモデルを築いていく時代となったのです。
「製作委員会幹事会社からみたアニメビジネス」
アスミック・エース エンタテインメント 代表取締役社長 豊島雅郎氏
豊島氏は深夜枠アニメ『ノイタミナ』の挑戦についてお話くださいました。『ノイタミナ』はさまざまな業種の出資者で構成され、作品の利用や宣伝に有効な役割を発揮し、出資のリスクも分散することのできる「製作委員会」方式で制作されています。始まりは2005年4月にスタートした『ハチミツとクローバー』。夜24時25分から放映される30分のアニメ枠です。子供やコアなファン向け作品が中心になりがちのアニメ作品を、大人にターゲットをしぼり、仕事から帰ったOLがくつろぐ時間帯に放映しています。視聴率も好調で、本学で監督とプロデューサーによるトークイベントを開催した『のだめカンタービレ巴里編』は最高視聴率6.6%をたたき出しました。2009年4月からは、『攻殻機動隊S.A.C』シリーズの神山健治監督が指揮を取り、『ハチミツとクローバー』の著者である羽海野チカがキャラクター原案を、『スカイクロラ』のプロダクションI.Gが制作を担当する『東のエデン』の放映が決まっています。このように、新しいアニメ番組への挑戦は続いていくのです。
「ネット配信におけるアニメビジネスの現状と今後の行方」 バンダイチャンネル 代表取締役社長 松本悟氏
バンダイチャンネルは、これからのアニメ配信ビジネスを『配信はTVに代わるメディアになるか』をキーワードに考えているそうです。
高解像度映像投稿サイトの台頭により、ネット配信ビジネスも変革の時を迎えています。海外展開は、時差なしで展開せざるを得ない状況になってきた今、全世界70カ国へ映像配信が可能な設備を構築しています。また、海外向け自社配信では、マルチ言語字幕を活用するなどの工夫などが行われています。松本氏は、バンダイチャンネルの使命に「TVに代わるメディアの構築」を掲げ、配信によって、TV局編成の影響を受けない CMDビジネスを可能にし、各社の番組提供費の低減を図っています。そして、国内外におけるバンダイチャンネルによる、正規サイトの構築をすることによって、違法配信サイト、及び海賊版の抑制にも努めています。一方では、過去7年間の国内の配信事業ノウハウと実績によって有力コンテンツホルダー集約をするなど、多方面で改革が起こっている今、2009年は新たなバンダイチャンネルのスタート元年だという松本氏。今後の配信ビジネスの展開が楽しみです。
「広告代理店からみたアニメビジネスの行方」 アサツー ディ・ケイ メディアコンテンツ本部長 篠田芳彦氏
1963年の「エイトマン」を皮切りに、アニメーション・実写特撮作TV番組で今日まで、約250作品の番組を買切りしてきたというアサツーデイ・ケイ(以下ADK)。ADKのコンテンツビジネスは「TVアニメ番組枠のセールス」「アニメキャラクターを使った広告・販促」「アニメキャラクターを使った商品化」「海外への番組販売」「映画への出資とスポンサータイアップ」と多岐に渡ります。さらに、「TVアニメ番組枠のセールス」は、私たちが日ごろTV番組を見ている間に流れるTVCMのことですが、アニメ番組だからと子供向け商品だけではありません。母親が子供と一緒に番組を見ている場合が多いため、ファミリー向け商品への母親のCM内容理解度は、クイズ、バラエティ番組でCMをオンエアする場合よりも高くなるそうです。
現在、子供市場・ファミリー市場の縮小、録画視聴の増加、メディア間の垣根の崩壊、コンテンツの楽しみ方がより能動的になるなど、従来型のTVアニメビジネスの限界を迎えています。そんな中、ADKのアニメビジネスへの取り組みは、特定メディアがコンテンツを囲いこむことなく、マルチコンテンツ展開、そしてマルチメディア展開をしていく方向で進んでいくという意気込みで話は締められました。
リレートーク&パネルディスカッション「~地方放送局のアニメ戦略~」
毎日放送 東京支社 テレビ編成部 チーフプロデューサー 竹田靑滋氏
讀賣テレビ放送編成局・東京制作センター エグゼクティブプロデューサー 諏訪道彦氏
現在、録画で見る人の増加やネット配信の影響で視聴率は落ちている中、再放送増加によって接触回数を増やすなどの工夫を行っているそうです。また、アニメの底力を見せたいという諏訪氏から『ルパン三世VS名探偵コナン』という人気キャラクターの夢のコラボレーションが実現したという発表がありました。後日放送された『ルパン三世VS名探偵コナン』は、高視聴率19.5%をマークし、まさに底力を見せ付けられた気がします。この作品は作り手も感動し、そしてその感動が視聴者に伝わったといえるでしょう。これからも感動できる“リアリティ”を期待しています。
おわりに
メディアの垣根が崩壊した今、アニメビジネスは変革の時を迎えています。これは試練と同時にチャンスでもあります。メディアミックスを活かした新たなビジネスモデルを築き、コンテンツの充実を図っていかなくてはなりません。本学の学生も、あらゆるデジタルクリエイティブをトータルに学ぶ意義を見出せたのではないでしょうか。また、本学では2008年4月にアニメコースを開講しています。アニメの完全デジタル制作に対応した「実制作力」と「ビジネスとしてのアニメ」を総合的に学び、一歩先行く次世代アニメ業界の担い手を育成します。アニメコース受講者をはじめ、本学の卒業生が未来のアニメ業界を担い、強力なコンテンツを世に送り出していかなくてはならないという使命を改めて認識することが出来るフォーラムとなりました。
(取材・原稿 小島千絵)
















