『デジタルコンテンツ白書2009』発刊セミナー
財団法人デジタルコンテンツ協会『デジタルコンテンツ白書2009』の発刊を記念し、9月4日デジタルハリウッド大学メインキャンパスにて、特別セミナーを開催いたしました。セミナーのテーマは、【コンテンツ人材育成策の経過と、現状の課題】。コンテンツ産業の市場規模に関する講義の後、人材育成策に焦点をあてたプレゼンテーションや、聴講者参加型のディスカッションを行いました。

ここでは、本学学長補佐高橋の「我が国における人材育成施策の現状と課題」を抜粋してお伝えします。
我が国における人材育成施策の現状と課題/高橋光輝
人材育成というテーマは、特にクリエイティブ分野では評価基準が極めてあいまいであり、明確に判断できるものではありません。私は大学教育の原点は自己形成にあると考えており、大学教育の成果を即卒業後に求めることはあまり好ましいことだと思いません。才能というものは何年たって開花するかわかるものではないのです。
しかしながら自らが専門大学で指導しているという観点から見れば社会方の要請という意味での評価は当然ながら受け入れなければならないものです。その意味では、人材育成を行っている教員自らが「人材育成」という領域を研究し、意見するというのは非常に難しく、大学教員誰もがあまり踏み込みたくないテーマだとも言えると思います。その意味でコンテンツ分野において、「人材育成」を研究領域にしている私は非常に稀な人間だと思います。
さて、国の政策について触れてみたいのですが、あらゆる国の産業政策には、どのような分野においても、必ずといっていいほど何か重要かというくだりの報告書や提言に、必ずと「人材育成」が挙げられます。コンテンツ分野で言えば、ほぼ毎年、金科玉条として言われ続けている【優秀なクリエイターとプロデューサーの育成】です。では果たしてこの政策は計画的に実行され、これまで成果を成し遂げてきたでしょうか?
結果を申しますと、先ほどお話したように図る事が出来ない、評価ができないとまとめられると思います。しかし、あらゆる試みを政府や民間、教育機関がやってきたということはコンテンツ分野に従事している方に特に知っていてほしいのです。2000年11月のIT戦略会議がコンテンツ分野における人材育成のスタートといえます。政府が国家戦略として本格的にコンテンツ分野の人材育成の重要性に言及したものです。
しかし、ここでいうITというのは情報通信技術であり、今で言うICTのC(コミュニケーション)が入っていないものでした。あくまでもインフラを基準とした目的のための人材育成です。"コンテンツ"という言葉が出てきたのもこのIT戦略会議がきっかけです。それまで"コンテンツ"という言葉や概念は、日本ではあまり使われてきませんでした。
元来コンテンツ分野であった人材育成施策としましては、現在は文部科学省の管轄化にある文化庁が映画分野における人材育成を行ってきたのが最も歴史のある人材育成です。短編映画作品支援や、インターンシップによる映画スタッフの育成事業、芸術団体人材育成支援事業などが挙げられます。これはIT戦略会議よりもっと前、40年前くらいから行われています。現在名を馳せている方も、文化庁の「芸術家在外研修」事業によって海外でトレーニングや教育を受けてきました。しかし私の知っている半分以上の方は、そのまま海外で活躍しています。当初の目的とは違い、日本に戻り日本のコンテンツ産業を活性化させる人材になるどころか、実際は海外に刺激を受け、海外で評価され、そのまま海外で働いているという実態です。 つまり、国際競争力を持った日本製コンテンツを制作し、海外に展開するといったことに対しては寄与していません。
おわりに
このように、様々なコンテンツ産業の現状と課題を挙げた後、人材育成策に焦点をあてたディスカッションを行いました。パネリストが前で喋るだけでなく、会場からも多くの意見が出ることで、改めて現状を見つめなおすとともに、今後のコンテンツ分野の展望について意識を高めるセミナーとなりました。
書籍紹介
「デジタルコンテンツ白書2009」
監修:経済産業省商務情報政策局
編集・発行:財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)
(取材・原稿 小島千絵)















