-『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の3Dバージョンは、映画史的にどのような意味を持つとお考えですか。
(櫻井孝昌/デジタルハリウッド大学・大学院教授)
ティム監督:
「新しい技術を使って『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』を3D化したい」というお話をILM(*1)からいただいたとき、私はまず、「とても良い発想だ。よりよい映画になるのでは」と思いました。なぜなら、3Dは『ストップモーション・アニメーション(*2)』に非常に合う手法だと考えたからです。3Dという手法を加えることによって、本来我々が意図していたパペットの質感やセットの奥行きといったより細かい表現を実現できるのではないかと考えたわけです。
-確かに、新しくなった『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』は非常に奥行き感があり、まるで観客である私たちもすっぽり映画の中に入っているような気がしました。
(櫻井孝昌/デジタルハリウッド大学・大学院教授)
ティム監督:
私はこれまで、この作品を何度も何度も見てきましたが、3D化された本作をはじめて観たときは、非常に感動しました。私自身が忘れてかけていたような細かい部分までが、3D化により浮かび上がってきていましたし、キャラクターたちの感情もより豊かに表現されていると感じました。
-CG全盛のなかで、『ストップモーション・アニメーション』に監督がこだわる理由は?
(櫻井孝昌/デジタルハリウッド大学・大学院教授)
ティム監督:
アニメーションには様々な手法があります。CGもとても素晴らしい手法・媒体であると思いますし、手描きアニメーションもたいへん美しいものです。そして、『ストップモーション・アニメーション』もとても特別な表現方法だと思っています。
ようは、どれが1番ということではなく、作品のストーリーに合う手法・媒体を選ぶことが大切だと私は考えています。
最近のハリウッドでは、手描きをやめてしまおうとか、『ストップモーション・アニメーション』を理解しないような風潮もありますが、私としては、素晴らしい表現のひとつだと考える『ストップモーション・アニメーション』を今後も続けていきたいと思っているんですよ。
-いつも独特のステキな世界観のある映画を作られますが、そのアイデアのヒントはどういったところから生まれるのでしょうか。
(デジハリ生)
ティム監督:
常にポジティブな感覚や気持ちでもの作りをしています。そして、とてもポジティブなメッセージを発信しているつもりです。
私の作品について、“ダークで、暗い影がある”という評判を耳にすることがありますが、正直自分ではよくわからないんです。なぜなら、私が表現している世界には、感情があり、ハートがあり、美しさがあると自分では思っているからです。
-ティム・バートン監督の素晴らしい色彩感覚はどういったところから生まれるのでしょうか。
(デジタルハリウッド大学生)
ティム監督:
色というのは、表現においてとても大きな要素のひとつだと考えています。そのため、色を扱うときは、登場人物のひとつとして扱うようにしています。
モノクロで表現した方がいいもの、カラフルで表現した方がいいもの、また少なめの色合いがしっくりくるものなど様々ありますが、それは作品によって異なるでしょう。とにかく、まるで色をキャラクターのように扱うということをしているのです。
-「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」の数々の魅力あふれるキャラクターのなかで、とくに思い入れのあるキャラクターは?
(「やぐちひとり」 矢口真里さん)
ティム監督:
まず、主人公のジャック。ジャックが持つ、積極的な好奇心や大きな情熱にとても惹かれます。そういったジャックの魅力が自分にもあればいいな、いやきっとあるというふうに思っています(笑)。
また、サリーについては、昔こういうガールフレンドが居ればいいなと思っていた女性を表現しています。
キャラクターたちはすべて、情熱や愛など、必ずなにかを象徴するような形で表現をしていますね。
-ティム・バートン監督のアニメ作品に登場するキャラクターはどれもとても魅力的で、まるで生きているように見えますね。
(デジハリ生)
ティム監督:
面白いことに、昔、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のキャラクターを最初に見せたとき、まず言われたのが、「主役に目玉がないというのは有り得ない!目玉がない主役がどうやって感情表現できるのか」でした(笑)。確かに、これは自分自身大きなチャレンジでしたね。
-アイデアを実際に形にしていく際に大切なことはなんでしょうか。
(デジハリ生)
ティム監督:
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の場合、最初に始めたのはキャラクターのスケッチでした。まず、ジャックからスタートし、自分の頭に湧き上がったイメージを書き続けました。そうすることによって、次第に形になっていきました。
どちらかというと、潜在意識から自然に出てきたものをそのまま扱った方が、いいものが作れるというふうに言えると思います。知識的なレベルで考えて作り上げたものより、自然に、無意識的に出てきたもののほうがよりホンモノ、より力強いものになるということです。
-監督はいつもアイデアをメモされるものを持ち歩いているとお聞きしましたが。
(櫻井孝昌/デジタルハリウッド大学・大学院教授)
ティム監督:
そうです、これです(ポケットから出して見せてくれる)。このメモ帳はいつも持ち歩き、簡単なスケッチなどを描いたりしています。僕にとって日記のような存在です。
-デジタルハリウッドで“未来の貴方”を目指して学ぶ学生たちに、クリエイターとして活きていくためのアドバイスとメッセージをお願いします。
(櫻井孝昌/デジタルハリウッド大学・大学院教授)
ティム監督:
皆さんは私から仕事を奪いたいと思っているわけですね(笑)。それは冗談ですが、とにかく皆さんは今、非常にいい時代に学ばれていらっしゃる。私がアニメの世界に足を踏み入れた当時を振り返ると、残念ながらあまり良い作品が作られていませんでした。しかし、今はとてもエキサイティングな時代です。
そんな中で、何より大切なのは、自分のやりたいことに情熱を注ぐこと。絵を描くこと、音楽、映画、何でもいいので、それぞれ今打ち込んでいる活動ややりたいことを続けていただきたいと思います。
そして、自分にとって意味があると思えることに取り組みましょう。思い入れのあるものを作ることで、特別なものが生まれるはずです。
みなさんの幸運を祈ります。どうぞみなさん頑張ってください。
(*1)ILM・・・ジョージ・ルーカスが1975年に創設した映画用視覚効果プロダクション「インダストリアル・ライト・アンド・マジック社(Industrial Light & Magic)」のこと。80年代以降は、ハリウッドのSFX大作の多くを手掛けている。現在はルーカス・デジタル社の一部門。
(*2)ストップモーション・アニメーション・・・静止している物体を1コマ毎に少しずつ動かして撮影し、あたかもそれ自身が動いているかのように見せる映画の撮影技術。代表的なものに『人形アニメ(パペット・アニメーション)』などがある。