日本のアニメ史上絶大な人気を誇り、多くの影響を与えてきた『機動戦士ガンダム』シリーズ。現在最新シリーズ『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』が、MBS・TBS系にて放映中(毎週土曜日・18:00~)です。古くからのガンダムファンやアニメファンを魅了する最新シリーズは、TVアニメ『鋼の錬金術師』でタッグを組んだ、水島精二監督と竹田靑滋プロデューサーが手がけたもの。
デジタルハリウッド大学ではガンダム最新シリーズの裏側に迫るべくおふたりをお招きし、<TVアニメ『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』が生まれるまで ~数々のヒット作を手がけてきた監督、プロデューサーが語るメイキング『ガンダム00』~>と銘打った特別講義を開催いたしました。
「ガンダムを引き受けたこと自体、一番の挑戦だった」と語った水島監督。一般からも多数の参加者が詰めかけ、いつもとは雰囲気の違った濃密な1時間半の中で、その舞台裏をたっぷりとお話し頂きました。その一部をレポートします。
『ガンダム00』では、戦争をやめさせるために武力行使をするガンダムは正義か悪かという、現代社会にも通じる複雑なテーマを設けていらっしゃいますね。
水島監督:
まず始めにガンダムを作るということ、そして土曜の18時枠という若年層も見る時間帯ということを考えた時に、兵器としてガンダムがカッコいいだけではいけないという思いがありました。ましてガンダムでは戦争を描くというのは重要な要素です。それらを踏まえ、戦争を通じて人間愛を描いていくことを大前提にしました。ガンダムシリーズの多くは“二極間の戦い”がメインとなっていることから、他のシリーズとの差別化かつ、放送開始が07年であることを考慮し、世界情勢がある程度想像できる作品にしています。そうすることで、より視聴者に伝わるものが多いのではないかと思ったのです。
竹田プロデューサー:
ちょうどこの作品の構想を固めていた頃は、イラク戦争が勃発するのかどうかという状況でした。『ガンダム00』で描こうとしている内容は、世界情勢とオーバーラップしてくるなとは感じましたね。しかも時代設定も“西暦”です。かなりギリギリの内容ではあるけれど、だからこそダイレクトに視聴者に伝わると思いGOを出しました。戦争なんて重いテーマを扱う以上、相当の覚悟を持って取り組むのは当然のことでしょう? フィクションとは言え、水島監督にしても脚本の黒田さんにしても、自分が生きる時代の息づかいを感じながら作品を作っています。それが全く作品に反映されないなんてありえませんよ。
視聴者からの反響はいかがでしょうか?
水島監督:
それはもう、すごく大きいです。さすがガンダム、賛否両論飛び交っています。どの描写ひとつとっても、“是か非か”みたいなことをブログや日記に書いてくれている。『ガンダム00』を見て考えてもらうことも、僕たちからの大きな投げかけですから、こうなることは予想していました。ただ捉え方は千差万別なので、想定外の意見をくれている人も当然いて、参考になります。
竹田プロデューサー:
我々としても、結論を押し付けようとしているわけではありません。賛否両論があって当たり前ですが、これほど大きくなるのはガンダムというタイトルが持っている魔力でしょうね。
根強いファンをたくさん持つガンダムならではですね。それを今回水島さんに託されたポイントをお聞かせ下さい。
竹田プロデューサー:
『鋼の錬金術師』で一緒に仕事をして、パフォーマンスの実現率の高さを十分知っていたのでガンダムもお願いしたいなあと。制作会社サンライズの企画チームも同じ意見でした。
水島監督:
でも本当は竹田さんが選んでくれたわけじゃないんです。僕を起用したいと思ってくれていたサンライズの企画チームが「次のガンダムどうする?」と竹田さんに聞かれたときに、水島監督とやってみたいと言ってくれたようで。そこで竹田さんが、酔った勢いで僕に電話をかけてきました。サンライズからの正式依頼前にフライングしてね(笑)。
オファーを受けるかどうか、正直迷いました。僕はあまりガンダムに精通していませんから。でも周りのスタッフは、いつかオレもガンダムを! と思っている人たちばかり。彼らの意見を聞きながらやっていけば、大丈夫だろうと思いました。それと、身近な人やガンダム好きの仲間からの励ましも大きかったですね。「誰がやったって文句は出るよ。でも、水島君がやるならおもしろいんじゃない?」と言ってくれたことで、監督を引き受ける決心ができました。アニメ監督をやっていて、ガンダムに誘われるなんて、一生に一度あるかないかくらいでしょう?
骨太のストーリーに登場するキャラクターを、洗練された画風が特徴的な漫画家、高河ゆんさんにデザインしてもらったのは監督の発案ですか?
水島監督:
そうですね。最初からヘビーなお話にしようと思っていましたので、そこからどんなキャラクターがいいか考えたんです。男くさいキャラクターなら、もっとハードなガンダムになったでしょう。ただ夕方6時の放送を、見る側の立場で考えたときに、あまりにも重たいと見ていて嫌な気持ちになりますよね? それに僕はどうしても人間の葛藤を描きたかった、苦悩した姿も綺麗に見せたいと思いました。そこをバランス良く見せられる人、それが高河さんでした。
そんな彼女に描いてもらったキャラクターの中で、僕のお気に入りはセルゲイ・スミルノフ。彼は僕の憧れる理想の大人像と言えます。
竹田プロデューサー:
最初は線が弱いかなと思いましたが、回を追うごとに、ちょうど良かったなと思っています。視聴者も同じじゃないでしょうか。これからは女子中高生にも人気が出そうなキャラクターも、目白押しで出てきますからお楽しみに。僕は正統派で憧れの存在的なロックオン・ストラトスや、切れたら怖そうなティエリア・アーデとかが好きですね。
『ガンダム00』は51話を連続で放映するのではなく、二回に分けて放映するシーズン制なんですね。
水島監督:
ファーストシーズンでひと区切りをつけつつ、セカンドシーズンへのレールを敷いておくことは大変でした。ただ一年モノを作るのは体力的に非常に厳しいので、セカンドシーズンまでに半年間もあるとポジティブにとらえています。海外ドラマはシーズン制が多いので、僕たちがうまく機能させて、このスタイルを日本のアニメーションシーンに定着させれば、いろんな可能性を広げていけると思います。
竹田プロデューサー:
『ガンダムSEED』や『ガンダムSEED DESTINY』のときは1年半~2年くらいぶっ通しで作業していたので、スタジオ自体がかなり疲弊しているなということは感じていました。今回はスケジュールに余裕を持たせてみたので、やりやすいかもしれないです。終わってから比べてみないとわからないけれど。
では、これからの“見どころ”をお願いします。
水島監督:
まずはメカ。新しいことにチャレンジしたくて、デザイナーはオーディションで決めました。描写の棲み分けを狙い、ガンダムチームはスーパーメカに、それ以外の陣営のモビルスーツはリアル路線にしています。最近ではあまり見られなくなった“メカもの”としての醍醐味を味わってください。余談ですが、僕自身も、久しぶりにユニオン陣のモビルスーツ・フラッグや、AEUのティエレンといったガンプラを買ったほど(笑)。
ストーリーも、ようやく個人にスポットが当たる流れに到達しました。個々が織り成すドラマが、これからの大きな見どころになるのではないでしょうか。本人の行動や口からストーリーが見えやすくなっていき、今まで以上に加速していきます。そして武力介入が結果をどう招くのかが大きなテーマとなっています。最初にも言いましたが、答えを出すのが僕たちの仕事ではありません。見る人が何かしら考えるきっかけとなる作品になれば嬉しいですね。
水島監督と竹田プロデューサーには、アニメーション業界の今、そして未来についてもお話しいただきました。