『鉄腕アトム』や『巨人の星』、『サザエさん』など、時代を超えて愛されるテレビアニメを黎明期から支えた脚本家、辻真先氏。2007年度にはその功績が讃えられ、文化庁メディア芸術祭で功励賞を受賞された辻氏は、デジタルハリウッド大学にて教鞭をとるほか、学内に設立された国際アニメ研究所の所長を務め、次世代を担う若者の育成にご尽力されています。
そんな辻氏が今年、岩波ジュニア新書から新たな書籍を出版されました。ご自身が関わった日本アニメを元に、その歴史を分かりやすく紐といた『ぼくたちのアニメ史』です。それを記念して、去る3月24日、六本木にある教育文化施設「アカデミーヒルズ」のビジネススクール「Roppongi Biz」において、出版記念セミナーが開催されました。
会場には老若男女問わず、幅広い客層が駆けつけるなどなかなかの盛況ぶり。辻氏は「今日だけではとてもじゃないけれど語り尽くせません」と笑いながらも、幼少時代に感銘を受けたアニメの原型でもある無音声の“漫画映画”のこと、戦後焼け野原となった自身の出身地・名古屋の映画館でむさぼるように映画を観たこと、手塚治虫のアニメプロダクション「虫プロ」ほかご自身が携われた作品の制作舞台裏などを小気味よく語ります。
時に冗談やアニメファン垂涎の裏話などが飛び出すと、場内は笑いに満ち、観客がすっかり魅せられていく様子が伝わってきました。セミナーの翌日、76歳のお誕生日を迎えられると言う辻氏ですが、最近はケータイ小説を執筆中だとか! 本著もさることながら、こちらも気になりますね。
後半は文化庁の芸術調査官、佐伯知紀氏が<文化庁「日本映画・映像」振興プラン>について解説されました。これは、国を挙げて「日本映画・映像」をバックアップする体制のこと。人材育成や海外へのフィルム発信、製作や普及など、あらゆる方面からの支援が整えられています。今や世界各国から注目を浴びる日本アニメの作り手やファンにとって、国も文化を守ろうとしていることはとても心強いことです。
セミナー終了後は、辻氏のサイン会が行われました。多くの観客が列を作り、手に入れたばかりの『ぼくたちのアニメ史』にサインをもらうわずかな時間の中で、自分の思い出のアニメを辻氏と語り合いました。すでに第一線で活躍されているであろう立派なビジネスパーソンも、子どもの頃のように目がキラキラ輝かせている姿が印象的でした。
毎年膨大な数が生み出され、幅広いジャンルの作品がそろう日本アニメは、私たち日本人とは切っても切り離せない文化である、そう実感するセミナーでした。この日惜しくも参加できなかった皆さんにも、是非とも手にとってもらいたい一冊の誕生です。
(取材・構成:谷口 千佳)