IT×英語×クリエイティブ 思いのままの人生をデザインするデジタルハリウッド大学

日本人現役クリエイターと元プロデューサーが来校!
海外のCGプロダクションが近づくディープな2時間

<第二部 鍋潤太郎氏は見た!VFXプロダクション in Hollywood>

鍋氏

鍋潤太郎 氏 (映像ジャーナリスト)
自らもハリウッドの大手エフェクト・ハウスでデジタル・アーティストとして勤務し、大作映画のVFXを手掛け多忙な日々を送っている。最近では「パイレーツ3」「スピードレーサー」の製作にも携わる。また雑誌「CG WORLD」にて海外で活躍する日本人アーティストを紹介する好評連載「Boarding Pass」を執筆する他、「映像新聞」でもハリウッドのビジネス・ニュースをいち早くレポートしている。ロスアンゼルス在住

デジタル・ドメインのエフェクトアニメーターです

私は、ハリウッドにあるVFXプロダクション、デジタル・ドメインのエフェクトアニメーターとして勤務しています。デジタル・ドメインとは、ハリウッドのビッグスリーと言われるプロダクションの中の一つであり、『タイタニック』や『ターミネーター2』のジェームス・キャメロン監督と、アニマトロニクスと言って、映画に実際出てくるロボットの専門家、スタン・ウィンストン、そして同じくVFXプロダクションのILMから来たビジネスマン、スコット・ロスの3人が1993年に設立しました。

アカデミー賞を受賞した日本人クリエイターも在籍

デジタル・ドメインには現在11人の日本人が在籍しています。その中のひとりに、テクニカルディレクターの坂口亮さんがいらっしゃいます。この方は今年2月、アカデミー科学技術賞を受賞致しました。これは、映画製作におけるテクノロジーに貢献した企業もしくは個人に送られる賞です。坂口さんはプログラマーとテクニカルディレクターの3人と共に、『デイ・アフター・トゥモロー』の津波や『パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド』の滝などのエフェクトに使っている”流体シュミレーションツール”を開発し、その功績が認められたのです。

ハリウッドに至るまでの道のり

皆さんはどうやってハリウッドに渡るかが気になると思うので、私の場合をお話しましょう。卒業旅行を兼ねて、アメリカで開催されているSIGGRAPH(シーグラフ※1)に行ったときのこと。優れた映像作品やコンピュータの展示などを見て、アメリカはすごいな、将来はアメリカで働いてみたいなと漠然と考えるようになりました。その後日本のプロダクションで働きながらSIGGRAPHに作品を送ったところ、エレクトリックシアター(※2)に入選し、それをきっかけに渡米。ポストプロダクションや日系のCGプロダクションなどで仕事をするようになりました。

その後、サンタモニカのとある短大でフーディニ(※3)を勉強し、制作したデモリールをデジタル・ドメインに送ったところ採用され、今に至ります。

※1) SIGGRAPH…毎年アメリカで開催される、世界最高峰のCGカンファレンスと祭典。
※2)エレクトリックシアター…シーグラフの中で、クリエイターたちが一番の目標としているもの。ここで上映される作品は、本場のプロダクションのものなど。デジタルハリウッドの卒業生も、過去に上映されたことがある。
※3)フーディニ…Side Effects社から発売されている3DCGソフトウェアのこと。CG物体を作成するモデリングや、動きの設定を行うアニメーション、作成したCG物体を撮影するレンダリングといった作業に使用。とくに、煙や水しぶきといった表現(特殊効果)が得意。

ハリウッド映画製作ウラ話

最近はCGで街やら山やら何でも作ってしまいますが、それでもミニチュアはよく使われています。例えば『キング・コング』の植物や山など、コンピュータで処理をすると遅いようなものはミニチュアで作り、実写と合成しています。

日本未公開の作品で『ズーム』という子ども向けのエスパー映画では、かなり気合が入った作りになっており、爆破シーンなど、本格的です。これがハリウッドのすごいところ。日本の作品ではVFXを安っぽく作ることが多々ありますが、ハリウッドは例え子ども向けでも、お金をかけて丁寧に作っているのです。それはつまり、完成度が高くなって説得力が増すということなのです。

最新劇場公開待機作は『スピード・レーサー』

最近関わった作品で、もうすぐ皆さんにごらんいただける作品が『スピード・レーサー』です。これは、竜の子プロのアニメーション『マッハGoGoGo』を映画化した作品で、『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟が監督しました。60年代にのアニメーションにも関わらず、アメリカでは未だ再放送されるほどの人気作で、今回の映画化に至りました。3月末に完成した本作には、デジタル・ドメインから150人のスタッフが製作に関わりました。エフェクトチームだけでも30人くらいはおります。ハリウッド映画でのCG製作の規模は、大体いつもこれくらいですね。

ハリウッドのクリエイターはこんな人だ!

映画の製作が終わると大抵集合写真を撮りますが、これだけの人数になると、一度に撮ることはできません。そこで活躍するのがコンポジッターです。何枚にも分けて撮影した写真を、彼らがコンポジット(※4)するわけです。『スピード・レーサー』の際も、『マッハGoGoGo』のキャラクターが入っていたり、変な小道具をもたされたりと、随所にイタズラが散りばめられています。羽目を外すときは羽目を外す、それがハリウッド流ですね。

その一例が、季節ごとのイベントです。デジタル・ドメインに限らず、アメリカの会社は四季おりおりにイベントを行います。デジタル・ドメインで一番大きなイベントは、ハロウィンの仮装パーティー。中には2ヶ月くらい前から職場で衣装を作ってる人もいて、当日はすさまじい光景が繰り広げられます。日本人にしてみれば、まじめに仕事をすべきでは?と思うかもしれないのですが、これこそが発想の違いなのです。イベントのみならず、もちろん仕事のシーンでも、アメリカ人のスタッフが製作するものには遊び心があるものが多いのは、普段から発想が豊かだから。技術を磨くことももちろん大切ですが、発想力を磨くこと、これを忘れずにいてください。

※4) コンポジット…CG用語のひとつで”合成”のこと

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冊子版ハリウッドCG業界

(取材・原稿:谷口千佳 / 写真:デジタルハリウッド大学 写真部)


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