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教育上の理念と目的

 近代社会において、世界各国で、それぞれの国の発展に大きく寄与してきたのが、高等教育機関としての大学だったといえる。大学教員が中心となるア カデミズムの中で、多岐に渡る研究開発が、科学技術のみならず芸術や文化にも大きく寄与してきたことは間違いない。それと共に、大学卒業後に社会の中核を なす若者たちが持つべき教養や、職業人として必要な専門知識を培う教育現場として、大学が機能してきたことも事実である。

 我が国の大学教育においても、長い間、一般教養科目が重視されてきたことは、社会人として生活する上での、ある一定以上の知を教養として持つこと を目指したものであったと捉えることができる。そして、そこに学部学科ごとに専門科目が組まれることにより、学生は、さらに専攻する専門分野の知識を身に つけることができる仕組みを持ってきたのである。大学を卒業し、社会に出れば、身に付けた教養と専門知識を利用しながら、社会人として、指導的な立場で、 仕事をして行くことができるという流れが出来あがり、現代国家を牽引していく人材育成をする大学と国家社会の関係は、20世紀においては、十分にその役割 を果してきたといえるだろう。

 産業革命以後、大量生産型の産業を経済の中心とした20世紀では、仕事を能率良く遂行していくためには、繰り返し行われる仕事に熟練し、専門知識 の記憶を速やかに使うことにより、ほとんどの仕事が、問題なく行える側面があった。しかし、科学技術が発展していく中で、例え工程が複雑であっても、繰り 返し行われる仕事は、急速に機械とその機械を制御するコンピュータによって行われるように変化してきた。さらに各国において、高等教育が盛んになったこと から、人類の知が、ますます集積され、急速に発展し、それまでの常識を覆すような新しい知が、常に産まれてくるような時代ともなったのである。

 通常の人間の能力では、どんなに勉強しようとも、詳細に至るまで、非常に多くの知を、正確に記憶することは、困難であり、記憶をスムーズに思い出 すということにも限界もあるという点に最初に着目し、そのアシストを行う機械として、構想されたのが、バーネバー・ブッシュによるMemex(1946 年)だった。このMemexの構想が、後のコンピュータの発展に大きく影響を与えることになった。その後、情報処理を人間より格段に正確に能率良く行うコ ンピュータは、その発展の中で、ネットワーク化され、いつしか世界を覆う規模のインターネットになった。そして、数年後には、世界中の人々が、知り得た知 恵をデジタル化して、広く人々に向けて公開するようになった。これまでの世界では、国家秘密として扱われるべき知すら、インターネットの中で、簡単に手に 入れられるという状況まで起きるようになってしまった。

 現代社会において人間は、コンピュータとインターネットを利用することにより、仕事の中での、繰り返し作業をやる必要が極めて低くなると共に、次 々と出現する、または、ひとつひとつが、それぞれ掘り下げれば大変深遠な知を、そのまま頭に記憶する必要性が相対的に低くなってきている。知は、オリジナ ルがひとつネット上に存在すれば、それが誰からもアクセス可能なことから、単なる知識の複製には価値がないとうことが、広く社会に認識されるようになって きた。インターネットが全世界に普及しつつある現代社会では、少しでも他と違うという差異にこそ知恵の価値があるという状況に移行しつつあるいともいえ る。つまりこれからの社会においては、個こそ価値なのであり、オリジナリティを持つことは、ますます重要になってくると予想される。20世紀の最後に急激 に発展したコンピュータとインターネットにより、これまで近代社会の教育が重視してきた、多くの知識を頭に覚えて行くという部分の教育の見直しが必要に なっているのである。まさに教育を大きく変化させなければならない、パラダイムシフトが起きたといえるのではないだろうか。

 それでは、コンピュータとインターネットが、人類の生活に無くてはならない社会基盤となると確実に予想できる21世紀、これから必要とされる高等 教育とは何だろうか。その問いのひとつの解として、とくにパーソナルコンピュータを用いて表現を行うことや、それに関連する知識、技能に優れた人材育成を 行う大学として、設立を目指すのが、デジタルハリウッド大学である。

 デジタルハリウッド大学では、2つの大きな教育目標を掲げる。インターネットや極端に発達したマスメディアから溢れ出る知を有効に使うには、それ らの知に対して、常になんらかの判断を、素早く行っていく能力が無くてはならないはずである。つまり知に対する「判断力」を養うことが、1つ目のテーマで ある。知に対して、基本的に判断すべきことは、3つの軸であると捉えている。それは、真偽、善悪、美醜である。人間が社会を健全に維持するために必要な最 低限の真偽、善悪については、初等教育においても、重要なテーマとなっていると考えるが、現在のようにますます多様化し複雑化する人類社会の状況にあって は、高度な人材は、さらなる多角的な判断力を要求されるのである。また、これまで教育の中で、大きなテーマとは成り得なかった美醜についても、文化レベル がますます高くなる世界においては、真偽、善悪に勝るとも劣らないものとして扱われる必要があると考える。

 2つ目のテーマは、「コミュニケーション」である。得られた知について、自らが判断し、それらを編集した結果を、他者に理解できるように知らせる ことができなければ、個人が行ったその判断は、どのような影響をも他者に与えることはできない。そこで、判断した知を編集し、なんらかの方法で、プレゼン テーションする能力が必要となる。また、より知を伝えやすくする表現という意味からも、美醜という軸からも、基礎表現教育にも力を入れなければならない。

 また、20世紀後半、知の七割は、英語で記述されていると言われるようになっていたが、さらにインターネットが普及した現在では、利用できるウェ ブサイトで記述されている言語の大半が英語である。また、実態として、世界共通語として英語がデファクトスタンダードになっているという事実から、「自ら の知を英語で表現し、他者とコミュニケーションできる能力」は、これから人材に欠かすことはできないということは、自明のことといえる。

 以上のことを鑑みて、デジタルハリウッド大学では、判断力とコミュニケーション力が、融合する教育カリキュラムを持つこととする。まず、コミュニ ケーションの元となる知を、自らの意図どおりに、編集して表現する課程において、様々な判断力が養われるという観点から、それに関連する多くの科目を用意 することとした。これまでの代表的なメディア特性を理解すること、コンピュータを利用して、様々な表現を行う技術を身に付けること、どのような観点を持っ て表現を行うかという企画力をつけることなどを中心に、関連する様々な科目が設定され、本学の教育体系が持つゴールイメージとして、広い意味で、デジタル コンテンツ制作手法の理解とコンテンツ制作のディレクション能力を持つこととした。

 さらにコミュニケーションのみならず、多くの知について判断を下すための基礎力ともなる実践的な英語力については、とくに多くの科目を設け、英会 話のみならず、英文の読解力と英作文にも力を注ぐこととした。また、在学中における海外(英語圏)への留学も、生きた英語力を手に入れるためのカリキュラ ムのひとつとして、希望者を対象に、本学の教育の一部として組み入れることとした。

 本学を卒業した者に期待することは、世界の知を様々に利用しながら、自らの知を創り、その知をいろいろなメディアや英語の中で、表現できることに より、社会に貢献することであり、延いては自己実現に繋がるということである。また、本学の学生を日本人に限るものではないが、ますます文化的影響度が、 国や民族が持つ大きな価値として、国際的に認められる中で、真偽、善悪、美醜について、素晴らしい伝統を持つ日本文化を、いかなる産業界のいかなるメディ アにおいても、表現しうる基礎力を持つ人材育成を理想とするものである。

 本学の目指すところについて、さらに高度な教育を欲する者については、平成16年4月開校となったデジタルハリウッド大学院大学が、直接的に対応 できることから、高度な専門家としての教育体系が、設立当初より存在していることも、デジタルハリウッド大学の大きな特長となっている。

 以上のことから、デジタルハリウッド大学では、21世紀に必要な人材育成の一翼を担うべく、当面、デジタルコンテンツ学科のみを持つ単科大学として設立し運営することを願うものである。

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