【開催レポート】映画“四月は君の嘘”メイキングと 監督・新城毅彦の演出論特別講座
- 開催レポート
開催日時 |
2016年9月14日(水)16:45~18:15 |
---|---|
場所 |
デジタルハリウッド大学 駿河台キャンパス 駿河台ホール |
デジタルハリウッド大学では、特別講義「映画“四月は君の嘘”メイキングと 監督・新城毅彦の演出論」を開催しました。講師を務めたのは、本学の授業「実写演出演習」の担当教員でもある新城毅彦先生。数々の映画でヒット作を生み出し続けるラブストーリー映画の旗手、新城先生独自の演出論が語られました。
映画だからこそ、悩むところ
映画「四月は君の嘘」は、マンガが原作の実写映画ですが、映画化にあたって問題となるのが、2時間という時間の制約です。「四月は君の嘘」の原作は、全巻で11巻あります。作中、エピソードや伏線が数多くありますが、その中でも、広瀬すずさんが演じるヒロインの宮園かをりとの恋愛軸、山崎賢人さんが演じる有馬公生がピアノを弾けなくなってからの再生軸、ライバルとの闘いなど、多くの展開があります。その全てを2時間に詰め込むのは非常に難しいと新城先生は言います。「今作は恋愛軸を中心としていますが、原作ファンの中には、主人公と母との関係軸に対しても不満がある方がいるかもしれません。本当は連続ドラマに加えて映画公開という構成でしっかりやりたかったのですが、断腸の思いでエピソードを切っています」と、時間の制約がある中での構成の難しさを語りました。しかし、原作者やファンの事を常に考え、「原作の魂を伝えられるモノにしたかった。限られた中では、うまくまとまったと思います」とコメントされました。
画面とロケ地へのこだわり
映画化にあたり、原作者からは、「キラキラ」撮って欲しいという要望があったそうです。そのために新城先生が最も意識したのは、逆光を使うことだったそうです。映画の予告映像でも、ヒロインの宮園かをりがとてもキラキラと描かれていたのが印象的でした。
また、実写映画では、アニメと異なり実際にあるものを撮影するため、ロケ地が重要なポイントになります。新城先生は、ロケ地を決める時、見た瞬間にその場所が良いと思えるかを常に考えているそうです。「四月は君の嘘」の舞台は練馬区ですが、東京でのロケはコンプライアンス的な問題が多く発生し、ロケ地も散在しているために、かなり撮影がやりにくいという問題があるそうです。また、ロケ地は1つではなく、複数の場所を合体して制作する事が一般的だそうで、今回は鎌倉を中心に、桜並木のシーンは静岡、川に飛び込むシーンは岐阜県の郡上八幡で撮影したそうです。「晴れたら外に出たいなど、状況が及ぼす感情への影響を意識しロケ地を選ぶ」と、各ロケ地に対するこだわりを語りました。
圧巻の演奏シーンの裏側
「四月は君の嘘」と言えば、圧巻の演奏シーン。「この演奏シーンが今作の撮影で最も大変な部分だった」と語るのは、カメラマンの小宮山充氏。新城作品に関わるのは今作で4作目だそうです。
通常の撮影では、どのようにカットを割るのかといった撮影の指示を台本に手描きで描き込んでいきますが、今回の演奏シーンでは書き込みが多くなり過ぎ、細かくて読めなくなる程だったそうです。2時間の中で演奏シーンは4回。この全てに、絵コンテを作成したそうです。
また、主役の2人は、ピアノやバイオリンといった楽器演奏を体得されているわけではないため、音に合わせて実際に弾いているように見せる必要があり、独自の練習を行ってもらったそうです。主役2人の頑張りに加え、撮影時は、実際に演奏しているかのように見えるカメラアングルや、音と役者の動きにズレが生じないよう多くの工夫があった事を小宮山氏は解説しました。
ちなみに、山崎賢人さんはショパンのバラードを弾けるぐらいまでにピアノが上達されたそうです。
今回の講義を受けて
最後に、新城先生は、「映像に携わる中で大切にしていることは、『画』である」と語りました。映像だからこそできる感情を観客に想起させる新城先生独自の演出方法を学ぶことのできる講義となりました。
原稿:デジタルハリウッド大学 2年 大舘 拓実