監督とプロデューサーが語る 『劇場版 戦国BASARA -The Last Party- 』ができるまで特別講座
- 過去に開催した公開講座

開催日時 |
2011年 |
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場所 |
デジタルハリウッド大学 |
監督とプロデューサーが語る 『劇場版 戦国BASARA -The Last Party- 』ができるまで
全ての始まりは、アクションゲームの雄・CAPCOMが手掛けたPS2用ゲーム『戦国BASARA』。スタイリッシュなアクションと爽快感溢れるバトルシステム、史実を元に大胆なアレンジを加えられた戦国武将たちの魅力が相まって、05年7月に発売された1作目から10年7月に発売された最新作『戦国 BASARA3』までを含めると、シリーズ累計240万本を突破する人気シリーズへと発展。さらにコミカライズや舞台化など様々なメディアミックスが展開され多くのファンを獲得する。そして、09年4月にはファン待望のTVアニメ化、続く10年7月には続編『戦国BASARA弐』が放映され――2011年『劇場版 戦国BASARA -The Last Party- 』遂に映画化へ...!「関ヶ原」を舞台に、兵(つわもの)達が戦国最大の合戦を繰り広げる!今回は映画公開を記念し、映画製作の舞台裏から映画の見所まで丸山博雄プロデューサーと野村和也監督に語っていただきました。
なぜ"今"映画化なのかを聞かせてください。
丸山プロデューサー: 今回の劇場版は、一つの区切りという思いでThe Last Partyと銘打ちました。今まで、現場の方々が必死に作ってきていたので、プロデュースサイドからあれこれ言うのではなく、夏祭りを開こうぜ!というような想いや勢いで作り始めました。
監督は今回の映画化の話がきてどうでしたか?
野村監督: 「弐」の制作中に話にはきいていたのですが、目の当たりにしたのがテレビ最終話の予告だったんです。"戦国BASARA 劇場版!"と見た瞬間、「え!!!」という衝撃を受け、本当にやるんだなと思いました(笑)「弐」の制作が終わると同時に、劇場の内容を決めるために1期から脚本を担当されているむとうやすゆきさんと話し合いを始めました。最初、劇場版は'パーティー'というキーワードがあり、天下一武道会のように色々な人が出てきて天下一決めようぜ!という流れにしたいと考えていました。ですが誰かと誰かが戦って勝負をつけるという単純な話ではなく、きちんと話を作らなくてはいけないと思い、話の内容を考えなおしました。原作のゲームでは秀吉を倒すのは徳川家康なのですが、TVアニメ「弐」で秀吉を倒すのは伊達政宗となっており、この時点でゲームと合わせるのは難しかったため、違う形にすることにしました。今回の劇場版はアニメ「戦国BASARA」シリーズの集大成として、関ヶ原を描いたほうが面白くなると考えたからです。
丸山プロデューサー: ゲームの場合ストーリーがたくさん分岐していくので、「これだけがBASARAのストーリー」というのがないんですね。それがアニメサイドとしてはやりやすかったです。自由度が高い分、作り甲斐がありました。
制作工程で楽しかった点はどういった点ですか?
野村監督: 劇場スクリーンで自分の作品が流れるということは滅多にない機会ですし、興味がありました。劇場制作ならではの作業もありました。フィルムが2種類あるうち、自分たちのイメージに合う方を選ぶフィルムテストなど、自分が経験したことのない工程があったのが楽しかったですね。またテレビではお客さんがどんな顔で作品を見ているか、さすがにわからないのですが、劇場作品では舞台挨拶や今回のようなイベントなどに登壇させていただくと観て頂いたお客さんの表情や雰囲気をダイレクトに感じることができたので新鮮でした。正直公開初日までは怖くもありましたが、今目の前にいる皆さんの反応を見る限り大丈夫なのかな?と思います(笑)
プロデューサーとしては、作品の良さはもちろんのこと、ビジネス上の成功も考えなくてはいけませんが、その点はいかがでしたか?
丸山プロデューサー: 上映館数は少なかったのですが、18万人の動員と興行収入2.5億(※講演当時)と、ありがたいことに22館という館数では破格の数字をたたきだしました。1館あたりどれだけの人が来てくださっているかを調べると、なんと1位。おかげさまで、長い期間公開していける状況が続いています。先日『絶叫ナイト』というイベントをやったのですが、これは新しい映画の見方だと思いました。映画館ってマナーがありますよね。そのマナーを打ち破る企画なのです。喋っていい、叫んでいい、歌っていい、隣に迷惑がかからなければ踊ってもいい、サイリウムを持ってきてもいい。みなさん、映画を観るのが1回目ではなく、セリフを覚えてくださっていて、キャラクターと一緒にセリフを言うなど、とても楽しいイベントでした。
野村監督: まるでライブでしたね。キャラクターの武器に似せたサイリウムを作ってきた方もいてすごかったです。また、自分が予想していないところで反応があるのが面白いですね。とてもアツい、そしてあたたかいイベントでした。ありがたかったです。
音楽はT.M.Revolutionの楽曲でしたね。T.M.Revolutionを起用した経緯も教えてください。
丸山プロデューサー: アニメ化するときに、楽曲を変えるという話はよくありますが、プロデューサーも他スタッフも含めて、他のアーティストではなくぜひ西川さん(T.M.Revolution)にお願いしたいと考えました。ゲームからプレイされているみなさんは、T.M.Revolutionの楽曲が作品にとてもハマっていたのをご存知だと思います。劇場に関しては、オープニング曲とエンディング曲が分かれることが多いのですが、BASARAに関しては、劇場が始まるのがT.M.Revolution以外考えられず、The Last Partyと銘打っているからにはやはりエンディングもT.M.Revolution以外ないよね、と結局両曲とも西川さんにお願いすることになりました。西川さんや楽曲制作に関わられている方々は、とても作品とのマッチングに真摯な姿勢で、シナリオを読み込み、話や世界観に合った曲を力を尽くして作ってくださいます。出来上がってきたものに関して、これは全く違うなと思ったことはないですね。
内容に関してはどのような思いで作っていましたか?
野村監督: 可能な限り、前向きに、希望のある話にしたいと考えていました。ゲームでは石田三成の結末が報われず、切ない話が多かったのですが、そういった悲しい話が苦手でして。出来れば、空想上の世界ではありますが、見えないところでお話が続いていくような、それぞれの道を歩んでいくようなお話を作ろうと思っていました。
丸山プロデューサー: 劇場版のBASARAは頭で考えるよりも、体感していただければと思っています。日本でも色々なことが起きて、制作陣も大変な思いをし、実際に制作も一度止まりました。そんな時だからこそ、月並みですが、少しでも元気になってもらえたらと思っています。
普段からこんなものを映画化したらおもしろいなど、考えているのですか?
丸山プロデューサー: 自分が映像化したいという気持ちが一番大事です。そして、青臭くなりますが、一番大事なのは熱量だと思っています。今回、プロダクション I.Gの方々の熱量が高かったので、制作はここしかないと思ったんですね。アニメーションは1人では出来ません。ですので同じものを作りたいと思う仲間がどれだけ集まる作品なのかというのを大事に考えています。
最後にアニメ業界を目指す学生へメッセージをお願いします。
野村監督:
僕はもともとアニメーターだったので、具体的なアドバイスを。皆さんは学校に入って、一通りの作業を勉強されていると思うのですが、ひとつひとつの工程をないがしろにしないでほしいですね。例えば、アニメが今ブームになっており、アニメーター個人の映像がまとめられているのを見かけることもあります。アニメを作りたいという人でも、原画マンになりたいという人が多い。ですが、途中段階の動画を軽視しないでほしいと思っています。業界に入った人間は分かりますが、原画マンがいくらいい絵を描いても、動画の工程次第でよくなるかが決まってしまうんです。出来ることが多いにこしたことはありません。原画しか出来ません、ではなく、動画も描けますというほうが、仕事の幅も広がります。
丸山プロデューサー:
どの仕事も同じかもしれませんが、作ろうと思ってから成立に至るまで、作り手サイドもビジネスサイドもこれはもうだめだ、断念せざるを得ないのではということが何回か訪れるんですよ。そんなときに、先ほども言った「創りたいという熱量」が、困難を突破していく力になります。諦めたらそこで試合終了ですので、作品愛をもって、良いものを創るためにとにかく粘ることが、最も大事だと思います。
(取材・原稿 小島千絵)