『ハナミズキ-君と好きな人が百年続きますように-』公開記念 監督・プロデューサーが語る『ハナミズキ』ができるまで特別講座
- 過去に開催した公開講座

開催日時 |
2010年 |
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場所 |
デジタルハリウッド大学 |
『ハナミズキ-君と好きな人が百年続きますように-』公開記念 監督・プロデューサーが語る『ハナミズキ』ができるまで
'04年のリリースより、6年以上の月日が経っているにもかかわらず、未だカラオケランキングのベスト10に入り、多くの人々に愛され続けている名曲、一青窈の「ハナミズキ」。この曲をモチーフに、2010年夏、珠玉の純愛映画『ハナミズキ』が誕生しました。 今回、デジタルハリウッド大学では映画『ハナミズキ』の公開を記念して、公開講座を開催。ゲスト講師にプロデューサーの那須田淳氏と監督の土井裕泰氏をお迎えし、映画プロデューサーや監督の役割、映画製作のノウハウ、ヒット作品の作り方等を語っていただきました。
企画はいつ頃始まったのですか?
那須田淳プロデューサー: 過去に土井監督と製作の八木康夫さんと3人一緒に『涙そうそう』を製作しています。この時に、歌から作品を作ることに強い手ごたえを感じ、次に作るとしたらどんな歌からがいいかなと話していたときに、八木さんから、発売から2年たってもずっとカラオケベスト10にランクインし、若い女性に愛されている「ハナミズキ」がいいんじゃないかと。さっそく2006年冬に一青窈さんにお会いして「まだストーリーも何も決めていませんが、ハナミズキをモチーフに映画をつくりたい」とお話したら、お任せしますと言ってくださいまして。任せていただいたからには、良い作品にしようと思いましたね。それで、3年以上かかりました。
どのように企画を組み立てていったのですか?
那須田淳プロデューサー: 歌詞を解釈していくのではなく、イメージを沢山作っていく形で膨らませていきました。"君と好きな人が百年続きますように"という歌詞から、百年続く愛ってどんな愛だろうと思ったところからこれをテーマに描こうと考えました。とてもハードルの高いテーマだったので、どこから手をつけようか、悩みましたね。脚本家の吉田紀子さんは"薄紅色の可愛い君のね果てない夢がちゃんと終わりますように"という歌詞から、幼い娘の成長を見守れず若くして死んでいく父親の無念や幸せを願いどんな思いを残していけるかという気持ちをイメージされました。また、"僕の我慢がやがて実を結び果てない波がちゃんと止まりますように"という歌詞から、昔ご覧になった若い男女の恋愛ドキュメントを思い出されたそうです。北海道で暮らす若い男女が出会い、女の子の方が東京に出ていき、どんどん綺麗になっていくのに対し、待っている男の子の失恋という遠距離恋愛の話をイメージされました。「どちらの話にしますか?」と聞かれた際、幼い娘を残してという設定がぐっときたので、ぜひやりたい!と思ったのですが、遠距離恋愛もぜひ描きたいと思いました。映画なのでテーマに広がりと深みを持たせていきたいと思いまして。ですから、両方出来るように考えていきましょうと話が進んでいきました。プロットの段階で話が10年くらいに広がってしまい、これをどう2時間にするか悩み、まとめるのに3~4年費やしました。
脚本をまとめるのに3~4年とのことですが、監督にはいつ頃オファーが入ったのでしょうか? またオファーを受けたときに監督はどう思われましたか?
土井裕泰監督: 2009年の春に分厚いプロットもストーリーラインもあがっている段階で、その膨大な量の話をどうまとめていくかという作業から参加しました。前回『涙そうそう』で曲から映画にする面白さも知ったのですが、難しさも感じていました。聞く人によってイメージがばらばらですし、曲の背景などもあるので、あらゆる人の最大公約数に向かって作っていくべきなのか、バックボーンをどこまで大事にするのかなど難しい問題がありました。特に「ハナミズキ」は歌詞が抽象的ですし、散文詩のようだったので、難しい作業でしたね。
キャスティングの選定はどのようにされたのでしょうか?
那須田淳プロデューサー: 「ハナミズキ」のプロットに取り組んでいる間に、映画『恋空』とドラマ『パパとムスメの7日間』で一緒に仕事をして、新垣結衣さんは素晴らしい女優さんだなと思っていました。遠距離恋愛というテ-マもあったので、高校生くらいから始まる作品にしたかったのです。新垣さんなら高校生もまだ大丈夫だと思ったと同時に、大人になっていく彼女をぜひ見てみたいと思っていました。透明感や、繊細さ、清純さ、そして人間としての暖かさや弱さを独自の世界観で表現できる彼女にぜひお願いしたいと考えました。次に相手役です。男の格好悪さを演じてもらわなくてはいけませんが、格好悪い人が格好悪く演じているのをお客さんは求めません。当時テレビではまだ二番手三番手役、映画『人間失格』もまだ公開されていなかった時期でしたが、生田斗真くんの演技力を知っていて、いい俳優になるだろうと思っていたので、オファーし引き受けていただけました。向井理くんも公開する時期には大ブレイクするだろうと思っていたら、狙い通り、皆さんちょうどブレイクしたタイミングが合いましたね。人気監督と人気俳優のスケジュールを合わせることや、海外ロケを含み、作品で四季を描きたかったので撮影の時期などを調整するのがとても大変でしたが、無事に撮影できてよかったです。
キャストにオファーしたのはいつ頃ですか?
那須田淳プロデューサー: 主役の2人にはまだ脚本が出来ていない2008年頃からお願いしていました。膨大なものをまとめきれていなかったので、何でつまずいていて、まだここはアイディアが浮かんでいないということを正直にお話して待っていてもらいました。その期間に、新垣さんからは、感想や意見も聞かせていただき、脚本作りに反映することもできました。たいへん時間がかかりましたが、その分こちらの熱意も伝わったと思います。結果として、撮り終わったときに、脚本が完成したと言っても過言じゃないですね。
役者とのキャッチボールがうまく出来ていた訳ですね。ロケ地は北海道、東京、海外と広範囲でしたがいつ頃どのあたりで撮影をしたのですか?
土井裕泰監督: まず、2009年9月の下旬から5週間北海道の釧路にて撮影、その後11月の頭から約3週間東京でロケとセットの撮影をしました。この段階で8割くらいの分量を撮影しています。そして今年の3月に北海道の冬と、その後海外部分を撮影しました。最終的に撮り終わったのが4月の下旬です。順撮り(映画のストーリーに沿って撮影していくこと)では全くなく、時代も飛んでいたので、ひとつひとつの場面でそのシーンの前提を細かく確認しながら進めていかなくてはなりませんでした。物理的な問題では、家の前にハナミズキの木があるのですが、春の花咲く木、青葉、紅葉、冬の枯れ木と4本用意し、そのシーンに合わせて埋め変えるなどしていたので、場合によっては春のシーンはまとめて撮るということもしました。効率などを考えていくとそうせざるを得なかった形です。
監督が思い入れのあるシーンはどこですか?
土井裕泰監督: 北海道の家は実用性高く、防寒は出来るのですが、いわゆる可愛らしい夢のある家がなかなか見つけられなかったんですね。そんな中、ロケハンの途中で道に迷った時に偶然見つけた家がとてもよかったので、美術的な面で紗枝の家が出て来るシーンは気に入っています。かなり手を入れさせてもらって、外国を思わせるような、北海道でありながら、映画の中のちょっとしたファンタジーとして描きました。映画の中だけでリアリティがあればいいという思いで、カナダで見た景色のイメージを入れたり、BGMにアイリッシュの音楽を使ったりと世界観を繋げていきました。
撮影で大変だったエピソードはありますか?
土井裕泰監督: 天気との戦いが大変でした。台風も2回ありましたね。海のシーンでは、晴れていても波が高いと船が出られませんし、船が出たら撮るからと漁師役の俳優陣を一週間くらい待たせていましたね。灯台のシーンもいい空を狙いたかったのですが、ずっと曇っていました。ですが風が強く吹き、一瞬だけ光が差した瞬間があったんです。こういう瞬間のために俺たちは撮り続けているんだな、と思いました。
監督はテレビドラマを作ってきた経歴が長いと思いますが、映画とテレビドラマの違いはなんでしょうか?
土井裕泰監督: 最初はあまり違いを考えず撮影しようとしていましが、作っていくうちに違いを感じてきました。現場でやる作業はあまり変わらないのですが、ジャンルが違うものだなというのは明確に分かってきましたね。テレビはどんどん分かりやすくなっています。見ている人にあまり考えさせず、こちらから刺激と情報を絶えず与える形です。それが一概にいいことだとは必ずしも思っていないですが、短い中に情報を詰め込んでいく作り方をします。しかし、映画というのは自分の想像力を刺激されるのが面白いのかなと考えています。すべてセリフで説明してしまうのではなく、考えたり、想像したりする余白の部分があることで、作品自体が豊かになっていくのではないでしょうか。
この映画に込められたメッセージは何ですか?
土井裕泰監督: 主役の2人も向井くんも美しい人たちですし、美しいラブストーリーだけだと現実離れの作品になりがちです。でもこの作品ではリアリティを大事にしたかったので、10年を描いていく中で単なる"ラブストーリー"ではなく"ライフストーリー"になるようにと考えました。"百年続きますように"という言葉から、世代を超えていくイメージを広げ、親の代から次の世代に伝えていくストーリーを描きました。その根底には一青窈さんがインスパイアされたという9・11アメリカ同時多発テロがあります。平和をベースに愛情を伝えていくストーリーを描きながらも、辛い部分や痛い部分も描きたかったのです。きっと10代の方と30代の方では観た印象が違ったと思います。ただし、結末についてはある意味ファンタジーでもいいのかな、と。これからの彼らの人生に希望をもたせたかった。彼らが、自分の人生を自分の足で生きたからこそのご褒美だと思っています。
この映画に込められたメッセージは何ですか?
土井裕泰監督:主役の2人も向井くんも美しい人たちですし、美しいラブストーリーだけだと現実離れの作品になりがちです。でもこの作品ではリアリティを大事にしたかったので、10年を描いていく中で単なる"ラブストーリー"ではなく"ライフストーリー"になるようにと考えました。"百年続きますように"という言葉から、世代を超えていくイメージを広げ、親の代から次の世代に伝えていくストーリーを描きました。その根底には一青窈さんがインスパイアされたという9・11アメリカ同時多発テロがあります。平和をベースに愛情を伝えていくストーリーを描きながらも、辛い部分や痛い部分も描きたかったのです。きっと10代の方と30代の方では観た印象が違ったと思います。ただし、結末についてはある意味ファンタジーでもいいのかな、と。これからの彼らの人生に希望をもたせたかった。彼らが、自分の人生を自分の足で生きたからこそのご褒美だと思っています。
この映画に込められたメッセージは何ですか?
土井裕泰監督: 主役の2人も向井くんも美しい人たちですし、美しいラブストーリーだけだと現実離れの作品になりがちです。でもこの作品ではリアリティを大事にしたかったので、10年を描いていく中で単なる"ラブストーリー"ではなく"ライフストーリー"になるようにと考えました。"百年続きますように"という言葉から、世代を超えていくイメージを広げ、親の代から次の世代に伝えていくストーリーを描きました。その根底には一青窈さんがインスパイアされたという9・11アメリカ同時多発テロがあります。平和をベースに愛情を伝えていくストーリーを描きながらも、辛い部分や痛い部分も描きたかったのです。きっと10代の方と30代の方では観た印象が違ったと思います。ただし、結末についてはある意味ファンタジーでもいいのかな、と。これからの彼らの人生に希望をもたせたかった。彼らが、自分の人生を自分の足で生きたからこそのご褒美だと思っています。
(取材・原稿 小島千絵)