デジタルハリウッド卒業生 三好紀彦氏が語る 映画「コクリコ坂から」CGメイキングセミナー特別講座
- 開催レポート
開催日時 |
2011年 |
---|---|
場所 |
デジタルハリウッド大学 |
デジタルハリウッド卒業生 三好紀彦氏が語る 映画「コクリコ坂から」CGメイキングセミナー
大ヒット公開中のスタジオジブリの最新作「コクリコ坂から」でCG制作に参加をしたデジタルハリウッドの卒業生・三好紀彦氏を招き、CGメイキングセミナーを行いました。2004年にスタジオジブリに入社し、映画『ハウルの動く城』よりアニメーションCGの制作に従事している三好氏。今回のセミナーでは「コクリコ坂から」のCGがどのようにつくられたのか、またスタジオジブリにおけるCGの役割など、実際に手がけられたシーンを用いながらじっくり解説いただきました。
アニメーション制作の流れ
アニメーションのCGは2D的作業も3D的作業もあり、他のパートとのやりとりも多いです。まず絵コンテが完成したところから現場は動きはじめます。今回の絵コンテは監督の宮崎五郎さんが描かれました。その絵コンテをもとにレイアウトが作られ、レイアウトをもとに原画を作ります。それと同時にCGはシミュレーションを始めます。カメラの動きを考え、どう見えるかをシミュレーションするのです。美術が制作した背景画とあわせ、そこに音が入りフィルムになり完成という流れです。
デジタル化しているアニメーション制作
以前はセルにトレースで線をつけてそれに筆で絵の具を裏から塗っていたのが、今は描かれたものをスキャンして、デジタルペイントで色づけしています。ジブリではToonzというソフトを使っています。撮影に関してはToonzというソフトで処理をしています。 撮影という言葉に馴染みが無いかもしれませんが、以前はカメラでフィルムに撮影していたことからコンポジットの工程をこう呼んでいます。
ジブリでのCG制作の姿勢「使用目的を明確にする」
効率主義な使用を避けるためです。CGは使いまわそうとすればいくらでも使いまわせます。ですが、それをやってしまうと場面が同じものの繰り返しになってしまうので、なるべく、一度作ったものは他の場面に流用はしないようにしています。時間があるから出来ることですので、使いまわすことがダメだとは言いませんが、うちでは避けるようにしていますね。
ジブリでのCG制作の姿勢「手書きではできない表現を目指す」
今回の『コクリコ坂から』では冒頭のシーンでCGを使っています。坂を上るシーンなのですが、ただ坂がせまってくるだけになってしまわないようにCGで表現しました。資料を参考にカメラワークとスピードを推測し、動きをより自然にしていきました。
ジブリでのCG制作の姿勢「作品の世界観をまもる」
背景画が1枚あったとします。その絵のなかにある要素、たとえば家、壁、木、道路・・・・などすべてばらして、CGで作っていきます。そしてそのような物体だけでなく光の情報なども入れて、なるべくあった状態に戻します。一見遠回りにみえるやり方ですが、アニメーションの世界観をまもり、統一感を出すことができます。手描きかCGかわからない、気づかれないことが成功だと思っています。「え?どこにCGを使っているのかわからない」というのが最大の褒め言葉ですね。
スタジオジブリでのCGの役割が特殊だと思うのですが、ジブリの中で、必要なスキルはなんですか?
CGは二次元的にものを捉えるところから始めることが出来るか出来ないかは大きいと思います。実際にCGで作るときに、なるべく二次元的に表現できるかを考えます。それが他のCG会社ではやらないことだと思いますね。
スタジオジブリで仕事をするためにはどのような道がありますか?
遠回りになるかもしれませんが、どこかスタジオに所属するなどしてアニメーションのCGをやったほうがいいと思います。アニメ業界は狭くて横の繋がりが強いので、縁があるかもしれません。
(取材・原稿 小島千絵/写真・デジタルハリウッド広報室 川村めぐみ)