宮本貞雄氏による『日米で活躍するアニメーターになるために』特別講座
- 過去に開催した公開講座
開催日時 |
2011年 |
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場所 |
デジタルハリウッド大学 |
宮本貞雄氏による『日米で活躍するアニメーターになるために』
『鉄腕アトム』原画、『リボンの騎士』作画監督、『科学忍者隊ガッチャマン』作画監督、1993年、ディズニー入社後は『ライオン・キング』、『ポカホンタス』などでアートを担当された伝説のアニメクリエイター宮本貞雄氏。普段はアメリカ在住の宮本氏ですが、昨年に引き続き、デジタルハリウッド大学での特別講義が実現しました。宮本氏の半生を振り返りながら、貴重な当時の原画を交え、日米両国で活躍するアニメーターになるためのヒントを教えていただきました。今回、学生の作品を見ていただいたり、実際に課題を与え実践したりと、参加型の講義に学生たちも大変勉強になったようです。
アニメの世界をスタートさせた大阪時代、そして東京へ
10歳の時に"画で飯を食おう"と毎日3時間から4時間、画を描き続けてきて、友人が絵を描ける人募集という新聞の広告を見つけてくれて、この世界に入りました。最初は大阪で7年間コマーシャルに携わり、キャリアを積んで、名指しで仕事もくるようになった頃、最初は嬉しかったのですが、学校に入って現場にいくというのがなかったため、基礎がないことや勉強不足などキャリアの問題がだんだん不安になってきました。そこでもう一度、一からアニメの勉強をしたいと東京オリンピックの年に東京に来て、縁があり、虫プロダクションへ入れていただきました。プロになってからは斬新なものを描きたいと思っていたため、既存のアニメをみなくなっていて、みんなが描けるアトムが描けない、と苦しい思いもしました。
宮本氏を動かした感動的な言葉
アメリカへ移住したのは1991年です。最初は他のプロダクションに入り、そこでディズニーでのアニメーター経験者で60歳くらいの方と一緒に仕事をしました。当時、虫プロでアニメーター30歳限界説という噂がありました。20代後半だった私は焦っていたのですが、そのアニメーターにその話をすると、30 歳で限界どころか、40歳になってはじめてアニメーターとしての仕事をさせてもらって、50、60歳は仕事に励み、70歳でいい仕事をして墓に入るんだ!とおっしゃったんです。それを聞いて、まだまだ自分にもチャンスがある!!と思えましたね。今でもその言葉を胸に、日本のアニメーターに長く仕事をしてもらうために、日本のシステムとアメリカのシステムのいいところを合わせていかなくては、と普及活動をしています。
ディズニーでの仕事
ディズニーには知り合いの紹介で面接を受けることが出来ました。商品化をするための企画やキャラクターを管理する仕事でよいか問われた際に、アニメーションの仕事を長いことしてきましたが、キャラクターにとても興味があっていろいろ勉強したいです、と答え、コンシューマ・プロダクツの仕事を担うことになりました。仕事内容は、それぞれの国に合った商品化を進める仕事です。それぞれの国が使いたいと提出してきた画にゼロからチェックを入れるのでは仕事量が膨大になるため、スタイルガイドと呼ばれるキャラクターやロゴなどの約束事をつめたガイドを制作しました。
絵が上達するコツ
絵を描くときはよく調べなくてはいけません。100調べて、1しか使わなくても99は自分の引き出しになります。ぜひ試してください。 また、自分のウィークポイントを知るのはとても大事です。たとえば、円を描いてみてください。私もそうなのですが、右利きの人は真円を描いても右上がりの円になってしまうことが多いんですね。もちろんコンパスで引くのが一番簡単にできますが、それをフリーハンドでできるように追及します。すると最終的に、コンパスと寸分違わない円が描けるようになります。こうやって自分の位置を知ることで、長所と短所を知ることができる。そうすると何を勉強すべきかが分かってくるのです。そして、真円が描けるようになれば、もっと味のある絵がかけるようになりますよ。
就職活動中のため、アドバイスを頂けたらと思います。希望の会社はどのように選びましたか?
ジョン・F・ケネディが選挙演説で感動的な演説をしました。「国があなた方に何をしてくれるかではなく、あなた方が国のために何ができるかを考えなさい」というものです。会社を選ぶときも同じではないでしょうか。自分がそこで何ができるかをきちんと伝えなければいけないと思います。私が仕事をするときに、求められたことをやるのは前提で、30%自分のメッセージを入れるようにしています。みなさん、他の人にないものをそれぞれ持っていると思います。そこをうまく伝え、気に入ってもらえたら、絆を築けるのではないかと思います。
自信はどうやったらつけられますか?
まず、"自信"の前に自分の"好き"を見つけるが大事です。好きなら徹夜していても、熱中してできますよね。そしたらそれを、"得意"にしていけばいいわけです。自信はあくまでも自分の気持ち次第ですが、得意であれば、まわりにアピールすることができますから。 なりたい仕事があったら、早めに決めてください。世界で活躍している人、みんな子供の時からやっています。とはいえ、今から遅いということはありません。この仕事をずっと続けていきたいという人ならいつであっても遅いことはないのです。希望を持って進んでください。
(取材・原稿 小島千絵)