【開催レポート】 キングコング西野亮廣(芸人)×田中研之輔(社会学者)特別対談 創作の漫談−炎上芸人は、なぜ、描き続けるのか特別講座
- 開催レポート

開催日時 |
2016年2月3日(水)19:45~21:15 |
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場所 |
デジタルハリウッド大学 駿河台キャンパス 駿河台ホール |
2016年2月3日、デジタルハリウッド大学では、キングコング 西野 亮廣(にしの あきひろ)氏をお招きし、公開講座を開催しました。「炎上芸人」として世間から騒がれながらも、お笑い以外に絵本制作や絵画制作等、数々の才能を活かしビジネスの幅を広げている西野氏。今回は「創作活動の喜びや極意」について、本学客員教授であり、社会学者の田中 研之輔(たなか けんのすけ)氏にファシリテーターを務めていただき、熱く語っていただきました。
【第一部 創作のリアル】
西野氏が絵を描き始めたきっかけとは?
ネタや絵、エッセイを創るにあたって、どのようにしてモチベーションを保っているのかを田中氏に尋ねられると、西野氏は19歳で芸能界へ入ったことから話し始めました。
当時、東京のローカル番組だったフジテレビ系列のバラエティ番組「はねるのトびらYou knock on a jumping door!」がゴールデンタイムに昇格することで、スターになれると信じ、回しや振りと言われる損な役回りを引き受けていました。その甲斐もあり、番組はゴールデンタイムへ昇格し、視聴率20%を超える人気番組となり、さらに、キングコングは朝の子ども向け番組や、夕方のグルメ番組など、多くのレギュラー番組や冠番組を持つほどになりました。しかし、当時25歳の西野氏は、自分の中で瞬間最大風速が吹くような大人気にも関わらず、芸能界のトップになれたわけでもなければ、スターにもなれていないことに気が付いたと言います。その状況に西野氏は、人生で一番の挫折を感じたそうです。そして西野氏は、そんな状況から脱却を図るべく、ゲストで出演するひな壇番組やグルメ番組、クイズ番組に出演することを一切辞め、「何かをしよう」と考えたそうです。そんな時、西野氏はタモリ氏に呼ばれ、「お前、絵を描け」と言われました。
西野氏が考える、「本を創る」「本を売る」こととは?
お客さんの手に届けるまでが作品を創るという事であり、作るだけ作って、売ることを人に任せるのは育児放棄と同じようなことだと西野氏は言いました。また、本を買うことを渋る人が、どうして演劇のパンフレットを渋ることなく買うのかについて考えた結果、本という作品を買うことは渋るが、思い出にはお金を出すということに気付いたそうです。そこで、絵本を作品として売り出すのではなく、絵本に思い出という付加価値を付け、「お土産化」することを思いつきました。西野氏は、自身の作品である絵本の原画を無料で貸し出し、一般の人が絵本の原画展を開く場で、お客さんが本をお土産やグッズとして買うようになったと話しました。
【第二部 界を飼いならす】
田中氏「年を重ねていくと、決まった組織や現場でのネットワークを大事にしていくようにしか生きていけなくなる。それぞれが持つ専門の界から抜け出せなくなる。ビジネスであったら、○○の領域、芸能界であったら、芸能の界を持っている、西野さんはその界を行き来しているように感じる。その希有さ(器用さ?)が面白いのですが、ご自身で意識されていることはありますか?」
その質問に対し西野氏は、「『なぜ、芸人のくせに絵を描くのか』『なぜ、シェフのくせにCDを出すのか』など、人生で一度や二度、『○○のくせに』という言葉を使ったことがあると思う。これからの時代、コンピューターに仕事を持っていかれるため、好きなことでしか仕事をしていけなくなる。『○○の仕事』という風に決めつけてしまったら、業界ごとコンピューターに持っていかれてしまう可能性がある。コンピューターに持っていかれない仕事とは何かを考えたとき、趣味しか残らない。」とコメント。そのため、趣味をマネタイズする仕組みをつくらなくてはいけないと思ったそうです。
「今までの『死ぬ思いをしろ』『好きなことだけをして生きていけると思うな』時代はとっくに終わっていて、『好きなことでしか生きていけない』時代が来ている。職業で動きを決めるのではなく、もう少しざっくりと『面白いことをする人』として、職業を越境していく体作りをする方が様々なことに対応できる」と語りました。
西野氏の大先輩、岡田 斗司夫(おかだ としお)氏の登場
(※以下岡田氏)カリスマ論 (ベスト新書) [出版社:ベストセラーズ]で一躍有名となった岡田氏は、普段は講演者としても活躍されていますが、今回は講義を聴く側として、講義に参加していましたが、西野氏の声掛けで、飛び入り登壇をしていただきました。
田中氏から「エンターテイメントのパイオニア的存在である岡田氏の見る、西野亮廣とは?」と聞かれた岡田氏は、「西野くんの面白いところは、界を界として捉えていないところある。絵本業界の人に絵本を買ってもらうのではなく、西野くんファンの心の中に、絵本ファンの成分が含まれている。お笑い濃度が強いだけであって、アートや絵本好き要素も入っており、臨海地を突破すると、どれだけお金を出してもらえるか。その踏み込みを、彼はコントロールしようとしている。」と答えました。この後西野氏は、「岡田さんが説明した方が、分かりやすいんですよね。」と、岡田氏を絶賛しました。
【第三部 終わりの始まり】西野氏が伝えたいこととは?
西野氏は、吉本興業の後輩が、自分たちのDVDを発売できないと嘆いていることを知り、会社から説明を受けた利益の出る金額と、工場へ発注した際にかかる金額とでは、大きな差があることに気が付いたそうです。そして、わざわざ流通にのせなくても、自分たちの手で売ることが出来れば、工場に発注した際にかかる金額を払うことは可能だと説明しました。また、西野氏は、自身の独演会でDVDを流通にのせることなく、自らの手で販売し、黒字にさせたことを語りました。
最後に西野氏は、「今ある環境をちゃんと疑い、一個一個潰していった方が良いと思う。要は、週5で働かなければならないのか、みたいなところから。そうすれば、もっと面白くなると思う。」とコメントし、閉演となりました。
一部では、西野さんの絵を描くことや、作品を販売することに対する、強いこだわりを感じ、二部、三部を通して、業界で働く人に対する多くの人の考えを覆す、まさに西野流の生き方を学ぶことができました。今ある環境を疑い、考え方次第で、働くことないし生きることが今以上に面白くなるのだと今回の講義を通じて感じました。
原稿:2年 船山 真実