【開催レポート】映画「クーキー」公開前記念講座 パペット映画の新たな挑戦、 チェコ映画『クーキー』のメイキングを徹底解説!特別講座
- 開催レポート

開催日時 |
7月29日(水)19:45~21:15 |
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場所 |
デジタルハリウッド大学 |
デジタルハリウッド大学では、チェコのアカデミー賞といわれるチェコ・ライオン賞で4部門を受賞し、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で審査審特別賞を受賞するなど、高い評価を得ているチェコ映画「クーキー」の日本公開前記念イベントを開催いたしました。
当日は、日本を代表する人形アニメーターである真賀里文子氏と人形アニメ作家で、デジタルハリウッド大学卒業生でもある澤田裕太郎氏に登壇いただき、「クーキー」のメイキング映像を見ながら、プロの視点で解説いただきました。
チェコ映画「クーキー」は、コマ撮りでも無く、CGでも無い、チェコの伝統的なマリオネット(糸操り人形劇)を活かした作品です。CGが主に使われている部分は、人形から出ている糸を消す部分だけとのことです。スタジオ撮影を極力抑え、本物の森の中や、川の中で人形を糸で動かしながら撮影された作品なので、PixarやDisneyに代表されるCGアニメーションとは違った、独特の暖かさを持った作品です。澤田氏と真賀里氏は、「本物の森なら、偽りの無いありのままの映像が撮れる。」とコメントしています。
CGを使わず、本物の森で撮影を行った理由とは?
公開講座の中で流されたインタビュー映像の中で、ヤン・スヴェラーク監督は、CGをほとんど使わなかった理由についてこう語りました。「PixarやDisneyのCG映画について、とても素晴らしいと感じています。しかし、本物の森にある共生や生き物の匂いというものは、CGで表現するには難しいのではないでしょうか。」真賀里さんの解説によると、「チェコでは国の面積全体の1/3以上で美しい森が残っています。スヴェラーク監督も、その森で生まれ育ちました。チェコの森の素晴らしさや美しさについて、子供達に知ってほしかったのではないか」とのことです。
独特な画面の生まれ方
この映画の撮影では、本物の森の中での撮影ならではの苦労がありました。当初の計画では、制作期間は35日でしたが、最終的には2年に渡って100日を費やしました。これは、撮影が天候や季節に影響されるためとのことです。自然環境の中での撮影では、撮影環境を整える事自体がやはり難しいのです。また、「クーキー」は35mmフィルムで撮られているのですが、その理由は、デジタルカメラで同じ映像を撮るよりも、黒の中にも様々な色味が出るなど、柔らかな印象の画面を撮る事ができるからです。
公開講座を受けて
「人形は動かなさければ、ただのでくのぼうです。」と、メイキング映像の中で役者の一人が語りました。人形を動かす役者がいる事で初めて、人形に生命が宿るという事です。筆者が講義中の撮影風景の映像を見て感じた事は、たくさんの糸を操り、人形に動きをつけている役者の顔が、この上無いほどの笑顔に満ちている事でした。役者が動きをつけることにより、人形は生命を宿し人々の心を動かす事ができるのだと、ひしひしと感じさせてくれました。この映画は、実際に「トイストーリー3」を上回るヒットをチェコで記録しています。流行、CGといった要素をふんだんに取り入れるのではなく、伝統技術を活かした作品を制作したという事に、大きな意味があると思います。日本にも、素晴らしい伝統技術が多く残っていますが、これらを使った様々なアプローチが、もっと広がって欲しいと感じました。
作品紹介
原稿:デジタルハリウッド大学 1年 大舘 拓実