【開催レポート】ScanlineVFX 村上勝和氏による海外でCG/VFXアーティストになるためのセミナー特別講座
- 開催レポート

開催日時 |
9月25日(金)19:45~21:15 |
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場所 |
デジタルハリウッド大学 駿河台キャンパス 駿河台ホール |
9月25日(金)、デジタルハリウッド大学駿河台ホールにて「ScanlineVFX 村上勝和氏による海外でCG/VFXアーティストになるためのセミナー」が行われました。「ScanlineVFX」は、「アイアンマン」や「パイレーツオブカリビアン」などの有名作品に携わる大手VFX制作会社です。炎や水、ダストなどの流体シミュレーション技術の高さで世界的に知られています。村上氏は、これらの流体シミュレーションの中で、シーンスケールや運動状態によって、様々に変化するため最も難しいとされる水を専門分野としています。
海外で就職するための2通りの例
村上氏は海外でCG/VFXアーティストとして働くためには大きく分けて「海外の大学に留学しそのまま就職する方法」と「日本でCG制作会社に就職した後、シニアアーティストとして海外の会社に就職する方法」の2通りがあると解説されました。「就職先で英会話に困らない方法が、CG留学しそのまま就職する方法です。しかし、卒業時の能力によってはテレビ関連の零細企業から映画制作会社へと段階的に転職しなければならないし、最悪、就職先が見つからなくて帰国しないといけないケースもあります。日本で卒業そして就職したなら、会社が育ててくれるのでCG技術の問題は少なくなりますが、実務における英会話能力が著しく問題となります。」と、一長一短があると語りました。また一般的に30歳以下であれば、ワーキングホリデービザを利用した語学留学がお薦めとのことです。国によっては、留学したい人が多いために抽選になる事もありますが、アプライすれば比較的簡単にビザを所得し、語学と仕事の経験を積めるのがメリットです。
英語の勉強法
「社内のスーパーバイザーと英語で会話をし、自分がどのような仕事をいつまでに、どのくらいの絵を作らなければいけないのかを理解しなければいけません。」とコメント。英語の勉強方法にはショートカットが無く、ひたすら日常生活の中で使う事が唯一の勉強方法だと解説。講義の中では、村上氏が実際に使用した単語帳「DUO」や、英語のみで書かれたCG雑誌を参加者が実際に手に取って閲覧できました。そして、日本で英語を喋る機会が無いのであれば、その機会を自らつくる事が大切だと語りました。「日本にはメイド喫茶と言うユニークなものがありますが、最近ではランゲージ(語学)喫茶というものがあります。海外からやってきたネイティブの人と、その場で集まった日本人といっしょにフリートークをするため会話の練習になります。」と世間的にまだ知名度の低いランゲージ喫茶を紹介しました。「語学留学に行くなら日本人の少ない地方に行く事をお薦めします。もし、都会に行くのであれば、始めの6カ月は日本語を喋らないという決意を持って留学したほうが良い学習結果が得られるでしょう。」と語りました。
就労のためのデモリール作成
デモリールの作成にあたり、村上氏が最も重要視している部分がショットの構成です。ここで、自分の見せ場を印象付けられる事が大切だと解説しました。「自分が何を見せたいのかはっきりしないデモリールがあります。こういった人は、関わったショートムービーをそのまま送って来る事がありますが、それでは採用されません。アニメーションを見せたいならアニメーション。EffectsならEffectsといった、何を見せたいのか、具体的に絞ったデモリールを作成する事がポイントです。」とコメント。このデモリール作成の例を、モデラー用やリガー用といった様々なパターンにて、実際にスクリーンで流しながら解説がされました。村上氏は、「学生の中でネットワークがあると思うので、自分の得意分野に時間をかけ、後は友達に任せる事で作業時間を省略しましょう。各分野で協力し合えばハイクオリティなデモリールが作成できます。」と語ります。何でもできるジェネラリストよりも、最低限の基礎技術を抑えて1分野に特化しているスペシャリストが業界で求められていると解説。デモリールの構成については、基礎ができる事を示し、得意分野のベストショットで全体を編集すれば良いとのことです。ブレイクダウンショットが掲載できれば、かなりプラスです。
参加者へのメッセージ
みなさんはまだ若いので、現在の状況で何ができるかを考えるより、自分が何を本当にやりたいかを考えるべきだと思います。そして、自分が変わるという決意を持って、目標に向かって行動すれば、自分の周りの環境もまた良い方向へと変わっていきます。」とコメント。CGの勉強にありがちな悩みについても、「要領よくソフトの使い方を覚えていく人が周りにいたとしても、あまり気にせず、自分なりに勉強すればよい。大切なことは、昨日の自分より、1ステップでも成長すること。」とのことです。学校を卒業し就労すると、これから先、ずっとCGの仕事を続けていくわけです。よって何十年経っても飽きずにこつこつ努力し、成長、学ぶことできる人が生き残ると解説。これを「才能とは、継続できる情熱。」という言葉にまとめ、本講義を締めました。
原稿:デジタルハリウッド大学 1年 大舘 拓実