【開催レポート】VFXアーティスト渡辺潤のハリウッドでの働き方特別講座
- 開催レポート

開催日時 |
2015年5月20日(水) 19:45~21:15(19:30開場) |
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場所 |
デジタルハリウッド大学 |
デジタルハリウッド大学では、数々のハリウッド映画のVFXや、「ベイマックス」の制作にも携わったHoudiniエフェクト・アーティストの渡辺 潤氏が来校、ハリウッドのVFXスタジオやアニメーションスタジオの最新動向や、ハリウッドVFX制作現場の生の声等を講演して頂きました。
Theme1 ハリウッドVFX業界の最新動向
Theme2 ハイドラックスでの経験
ハイドラックスでは、メインツールにMayaを使用しています。レンダラーは社長のこだわりと、長年蓄積された自社開発ツール等の関係からMentalRayを採用しています。
エフェクトはHoudiniを使用しています。「SAN ANDREAS」は、アメリカのサンドレアス断層にて巨大地震が起きた事を仮定したストーリーです。ご存知のように「SAN ANDREAS」は「カリフォルニア・ダウン」という邦題で、5月末の全世界同時公開にあわせて日本でも公開される予定でしたが、昨今のネパール地震報道への配慮などの事情で、日本での公開は延期になりました。こういうディザスター映画は「映画の中だけで起こりうる出来事」だから楽しめるエンターテインメントであって、実際に身近で地震が起こったり、多くの方が地震の報道で心を痛めているような時に、大地震の映画を心から楽しむ事は難しいでしょう。このようなディザスター映画のVFXに携わっていると、我々のビジネスは「世の中が平和で、平穏だからこそ、成り立つエンターテイメント」なのだと強く感じました。
映画「カリフォルニア・ダウン」公式予告編
全米公開 初登場でボックス・オフィス第1位の大ヒット!
https://www.youtube.com/watch?v=GqdsLeKkYJU
Theme3 「ベイマックス」に参加してみて
丁度、昨年の今頃「ベイマックス」(Big Hero 6)に参加させて頂く機会がありました。
ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオでは1000人程のクルーが働いています。かなりの大所代で、キャラクター・アニメーターだけで100人いるそうです。全世界から優秀なアーティストが集められているので、社員食堂で食事をしていても、同じテーブルにアメリカ人が1人もおらず、全員が外国人なんていう事もよくありました。
ディズニー・アニメーションでは、メインツールにMayaを使用しています。また、インターネットのニュース等で既に紹介されている事ではありますが、「アナと雪の女王」までは、レンダーマンを使っていたのですが、「ベイマックス」からは、自社レンダラーの「ハイぺリオン」を使用しています。レンダーファームには50,000台のCPUがありますが、800人のアーティストが使用するので、優先順位が決められる程の混雑があります。社員食堂では、人気メニューのちらし寿司(Sushi Bowl)の日が毎週木曜日にあったり、夏季の毎週水曜日にはアイスクリームの配給があったりと、社員のケアも充実しています。ディズニーのキッチリとした経営体制が垣間見え、プロデューサーやコーディネーターの優秀さが分かります。ディズニーでは、段取りやマネージメントが非常に優秀で、分秒刻みでスケジュールが管理されており、ミーティングの開始が遅れたり、長引くような事は滅多にありませんでした。
Theme4 海外で働いてみたい学生へ
海外で働くには、応募する会社のスーパーバイザー達に自分のスキルを認められるために、完成度の高いデモリールを準備する事がとても重要です。
もし、応募した会社が「この人を雇いたい」と判断してくれれば、就労ビザの取得の手続きや、「実務経験があと3年無いと、就労ビザが下りませんよ」等と適格なアドバイスもしてくれます。多くの場合、応募しても返事が全く来ないのが通例ですが、そんな時は諦めずに根気よく、6ケ月ごとに応募し続ける事が大切です。そして、実際に面接を受ける際は、デモリールを見ながら面接を行います。どの部分を担当したか?どの位の期間を掛けて制作したか?など、様々な事を聞かれますが、落ち着いて正直に答える事が大切でしょう。私は、高校の頃に見たアニメーション映画「宇宙戦艦ヤマト 完結編」がキッカケとなり、映像業界を目指し始めました。高校の文化祭で特撮映画を監督し、その後、専門学校へ進み、当時出来始めたCG科の1期性として入学しました。2年生の時、卒業旅行として毎年夏にアメリカで開催されるシーグラフ(SIGGRAPH)に行きました。その時は、自分が将来海外で働けるなど夢にも思っていなかったのですが、漠然とした憧れがあったからこそ、今の自分があるのだと思っています。
Theme5 学生からの質疑応答にて
講演をすると、よく「学生のうちにやっておいた方が良い事」を聞かれます。それは学生の時間があるうちに、デッサンなどのアートの基礎の鍛錬を積んでおく事、良い作品を沢山見ておく事だと思います。今、CGで作っているジオメトリの造形は本当に正しいのか?物の壊れる速度は正しいか?アニメーションは不自然ではないか?などなど、プロとして仕事をしていく為には、「鍛えられた目」を持っている必要があります。そのため、観察力のある目を養っておく事が一番大切です。また、Pythonなどのプログラムを少しでも良いので勉強しておくと、将来凄く役に立つのでおススメです。
原稿:デジタルハリウッド大学 1年 大舘 拓実