【開催レポート】~衝撃のクリエイティブ! あのCMはこうして作られた~ 製作者が初公開!鳩に困ったら雨宮CMメイキングセミナー特別講座
- 開催レポート

開催日時 |
8月5日(水)19:45~21:15 |
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場所 |
デジタルハリウッド大学 駿河台キャンパス 駿河台ホール |
公開から1週間でYouTubeでの再生回数20万回超えとなり、独特な表現方法で注目を集めている映像「鳩に困ったら雨宮」のメイキングセミナーが行われました。広告代理店である新東通信 から長谷川裕晃氏、デザイン事務所テリーファンクプロダクツ代表である中井輝明氏、独特な世界観を持つ映像を制作するチーム、AC部から安達亨氏、板倉俊介氏。モデレーターとして、デジタルハリウッド大学准教授である高橋光輝氏が登壇しました。
鳩に困ったら雨宮のCM企画は、どのように進んだのか?
「鳩に困ったら雨宮」の企画は、もともと6年前の2009年に「株式会社 雨宮」というシロアリ駆除で有名な企業からの依頼に対して提案しました。 シロアリ駆除では有名なのですが、鳩駆除やリフォームについて世間に認知されていないという事で、鳩駆除を知ってもらうために制作された企画となりました。今回の講義は実際に当時の企画書をスクリーンに映しながらの講演となりました。
高橋:今から6年前くらい前の企画ですが、何故今になって「雨宮」はこの企画を採用することになったのですか?
長谷川:6年前に企画書を持っていった時には、クライアント側に納得してもらえず、お蔵入りとなっていました。それをこの時代にもう一度、クライアントに「うん」と言わせるために再チャレンジしました。
高橋:6年前当時の企画書から、web上のクチコミを狙っていたのが分かりますが、これは時代の先駆けとなっていたのでは?
長谷川:当時、海外などのウェブ上でクチコミを狙ったものがあったので、そこを日本でもやっていかなければならないと感じていました。
企画が本格的に再開した経緯について、長谷川氏は「SNSが有効活用できるこの時期だからこそ、もう一度提案したい」と感じ、再契約のために奔走した事を語りました。「自分達で作った企画には愛情がある」とコメントしています。世の中の動きに対する先見の目と、企画に対する情熱を感じました。
「拡散」のための広告戦略
本講義の中で多く使われたOOHとは、自宅以外の場所で接触する広告メディアの総称です。レストランのテーブルポップから配布チラシ、屋外広告等広い意味を持っていますが、他の媒体と比べて、制作に関する制約が少ないため、クリエイティブな特色を出しやすい媒体です。「鳩に困ったら雨宮」のプロジェクトでは、映像を制作する前に、鳩を頭に乗せたサラリーマンのオブジェを街頭に置くというOOHを使った広告戦略を考えていました。しかし、これだけでは拡散しないと感じ、AC部に「鳩に困ったら雨宮」というワードをとにかく強調した映像制作を依頼したとのことです。
AC部による映像表現について
講演では、参加者からのAC部の映像に関する「TVCMとして放送していいか心配した。」「広告では無く、AC部の作品かと思った。」など、多くの意見が寄せられました。ここにも広告代理店や制作側の狙いがある事が明かされました。
長谷川:真面目に作って真面目にやってしまうとそれで終わってしまうのですが、「え、本当?」、「大丈夫?」という心配をされる方がいいかなと思っています。
安達:ウケを狙うとかという事はしていなくて、一生懸命考えた結果変になっちゃったという事をいかに生み出すかという事をやっています。やはり、経験や技術はずっとやっていると身についてくるものなので、どうしても普通になってしまう。「常識」が身についてきてしまいます。そこをどう外していくかをいつも考えています。面白いか面白くないか分からないけど、とにかく一杯出すとか、一応、ここはおもしろいという所を散りばめておけばどっかしら受ければいいかなとか、狙いすましきらないつくりをしています。
「鳩に困ったら雨宮」の映像は、左上に「8:10」と表示されるなど、TVで放送されているような雰囲気を醸し出していますが、web上のみの公開となっています。板倉氏は、「将棋や釣りなど、いろんなものが出てきますが、地方CM感というところで統一するようにしています。」と語っています。また、「自分が何かを作りたいと思っている人はいると思いますが、AC部はそれを極端に捨てています。私達は、出したものが出した場所でウケるかどうかだけを考えています。僕自身、ギャグっぽいものはあまり好きではないのですが、反響だけを楽しんで制作しています。」とコメントしました。興味の無いものをあえて使う事で、微妙な勘違いをあえて構築し、映像に面白味を増しているとのことです。アニメーションの画風も、決まったものにこだわらず、その場所にあったものをその都度練習して習得しています。
今回の講義を受けて
参加者の方からは、「考えついたイメージをただ集めて制作したのではないかと思っていたが、様々な戦略が存在していた事を知り、勉強になった。」など、参考になる映像制作技術を学ぶことができた方が多いようでした。ひとつの企画に関わった方々が集まり、実際の企画書のスライドを見る事が出来たり、広告代理店、映像制作会社の「現場の声」を聞くことができたりと非常に貴重な体験となりました。
原稿:デジタルハリウッド大学 1年 大舘 拓実