クリエーティブディレクター・CMプランナー澤本嘉光氏が語るCM制作とは特別講座
- 過去に開催した公開講座
開催日時 |
2011年 |
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場所 |
デジタルハリウッド大学 |
クリエーティブディレクター・CMプランナー澤本嘉光氏が語るCM制作とは
映画や出版など様々なメディアを扱っている高橋光輝教員のエンタテインメント産業論。今回は株式会社 電通、エグゼクティブ・クリエーティブディレクター、CMプランナーの澤本嘉光さんにゲストにきていただき、CM制作についてお話をうかがいました。ソフトバンクモバイルの「ホワイト家族24」の白戸一家のCMはみなさんにもおなじみですよね。当日CMの映像を実際に流しながらの楽しい授業となりました。お話の一部をお伝えします。
クリエーティブディレクターの仕事とは
広告というのは、皆さん積極的に見たいと思っているものではありませんよね。それを何とか見せるためには、面白くしなければなりません。さらに、覚えておいてもらうにはより工夫をしなければなりません。クリエーティブディレクターの仕事はクライアントが売り出したいものを、どのような形で広告を打つか、Webにするか、TVCMにするか、はたまた駅にポスターを貼るか・・・。その広告に合ったやり方を考えます。そして、CMならこんなセリフを、Webならこんなセリフを、と媒体にあった形で広告を制作していきます。CMプランナーと呼ばれているこの仕事はずっとクイズを解き続けている感じですね。では、広告制作にはどんな課題があってそれをどのように解決していったかを解説して行きたいと思います。
様々なCMの形
まずは私が過去に多く作ってきたTVCMを中心に説明していきます。同じTVCMでも、様々な手法があります。例えばCMの中で出演者のセリフで商品を説明させるタイプのCM。この場合、ただひたすら説明が続いても面白くないため、説明する状況や相手などを工夫することによって面白くしていきます。他には、最後に一言添えることによって、何のCMかを明らかにするタイプのCM。このCMの利点は、前半いくら面白くしてもいいということです。また、同じ言葉で終わらせることによってシリーズが作りやすいのも特徴です。
制約の中で作り上げていく映像
CMを作る上で大切なことにクライアントの言いたいことを伝えるということがあります。クライアントから直接指示が出る場合もあります。与えられた条件の中で作ることは難しいようですが、条件があったほうが考えやすく、より面白いCMを作れることもあります。
タレントが決まっている場合
最初から出演タレントが決まっている場合、出演するタレントによって作れるものが違ってきます。タレントに合わせてセリフを変えることもあります。タレントを中心に作った際の利点として、評判が良くシリーズ化していくと、出演者が固定され、その出演者を見ただけで、何のCMかが伝わるようになります。そうすると社名を言わなくても済む分、社名をいう1秒が面白くする時間に使えるわけです。たった1秒と思うかもしれませんが、15秒の中の1秒は長いため貴重なのです。
予算が決まっている場合
条件や誓約で表現が変わってきますが、その大きな条件の一つに予算があります。しかし、最近では機材が発達したことで安く撮影、編集ができるようになったため、低予算でもCMが作れるようになりました。最近では一般家庭でも使うようなカメラを使ってCMを作ることもあります。それができると気づいたのは、水戸短編映像祭で審査員を担当したときです。 (2004年~2006年審査員として参加)以前自分が審査したものに比べて、昨今ではCMとして申し分なく流せる画質になっていると感じました。また、内容に関してもお金をかけないためにはどうしたらいいのかということを考えていくと、それはそれなりに面白いものができるものです。
ターゲットから絞り込む場合
中学生がターゲットのCMと大人がターゲットのCMでは表現の仕方が変わってきます。中学生がターゲットの場合、面白く派手にして引き付ける手法が使えますが、大人向けにその手法を使うと馬鹿にしているような印象を与えてしまうので、落ち着いた表現に変えたりします。また、中学生向けのCMを夜中の2時に流してもみてくれないので、もっと早い時間に流すなど、流す時間帯も考えています。
何をもってCMの成功とするか
もちろん宣伝するからには、そのモノを買って欲しいですが、100円程度のお菓子であればそのまま購買に繋がりますが、マンションなど高価な買い物となると、CMを見て直接購入ということはまずありません。そうなると、興味を持ってくれて、資料請求をしてくれること、そのための第一歩としてWebを見てもらいたい。という風に、目標から逆算してCM内容を決めていきます。
日々変わっていく広告事情に合わせての工夫
CMは秒数が決まっていますが、30秒あったとしても言いたいことは言い切れません。そこで「詳しくはWebで」と言っているCMがたくさんありますが、この「詳しくはWebで」という誘導文句で昔は見てくれていましたが、最近は見てくれなくなってきました。同じ手法が広まっていくと、内容が面白くないと見てくれなくなってしまうのです。 また、Webへの手法の仕方も最初のころはCMの最後にただURLを掲載していただけでした。ですが、検索窓をつけるという手法を使い始めて、今ではそれが定着しましたよね。検索窓をつけることで、面白くする時間を増やすことに成功しました。
検索窓を初めてつけたCMでは、2万のアクセスで成功と言われていたところ、50万ものアクセスがありました。CMだけ考えると成功と言えそうですが、結果、WEBがパンクしてしまったため、一概に大成功!とは言えない状況でした。そんな状況が生まれた背景には、過去はCMとWebが完全に別で分かれていたという制作状況があったからです。今でももちろん分かれていますが、密接に話し合いながら作っています。今では検索窓も当たり前になってしまったので、セリフにするなど工夫をしてWebへ誘導しています。
広告業界を目指している学生へのメッセージ
このように自由に作っているようでそうではないということが分かっていただけたと思います。一方で様々な表現を入れて作っていけること、そして自分らしさも入れることができる面白さもあることが伝わったでしょうか。興味を持ってくださった方が、広告業界へ来てくださると嬉しいです。
(取材・原稿 小島千絵)