監督とプロデューサーが語る、『鉄拳 ブラッド・ベンジェンス』ができるまで特別講座
- 過去に開催した公開講座

開催日時 |
2011年 |
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場所 |
デジタルハリウッド大学 |
監督とプロデューサーが語る、『鉄拳 ブラッド・ベンジェンス』ができるまで
新作がリリースされるたびに最先端技術を導入して創られた「鉄拳」。CGで制作された映像の数々は、まるで対戦画面に入り込んだかと錯覚するほどリアルな動きを表現し、世界的にも高い評価を得ております。遂に、その全てが"デジタル3D"となって劇場スクリーンにて炸裂します。バンダイナムコゲームスの水島能成氏がプロデュースのもと、監督は「鉄拳5」「鉄拳6」のCGディレクター毛利陽一氏が務め、映像は『APPLESEED』(04)、『バイオハザード ディジェネレーション』(08)などを手がけたデジタル・フロンティアが製作。脚本は「カウボーイビバップ」(98)「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」(02)などで知られ、本学の教員でもある(担当科目:アニメシナリオ演習)佐藤大氏が手がけています。全世界が待ち受けた本作が完成するまでのメイキング&製作秘話を、今回、監督とプロデューサーに公開講座で語っていただきました。

なぜ"今"映画化なのかを聞かせてください。
水島プロデューサー: もっと早くお届けしたいという気持ちはずっとありました。「鉄拳」というゲームは、1994年に第一作が発売された時から、高いクオリティのキャラクタームービーを作っていました。ナムコ創業者の中村雅哉がもともと映像業界に関心が高かったこともあり、早くフルCGムービーを作ってくれとずっと言われていたんです。しかし、なかなか90分の長編映画のクオリティにするのが技術的に難しく、企画は実現しませんでした。転機となったのが、2008年の「鉄拳6_BLOODLINE REBELLION」、そのCGムービークオリティがとても高く、ようやく長編映画が作れるのではと思ったんです。

それでは映画化にあたって、監督はどう決めたのですか?
水島プロデューサー: 映画化できると確信させてくれたのが毛利監督しかいなかった、といっていいと思います。格闘ゲームで、キャラクターが多く世界観も複雑。しかもキャラクターの個性が強い。そこを理解した上で、CGを作れる人で、今まで一番鉄拳の映像を作っている人。そして何より、鉄拳のキャラクターを愛してくれている人ということで、毛利監督にお願いしました。
監督が決まって、どのように映画製作を進めていったのですか?
毛利監督: まず、骨格となるストーリーを作っていきます。脚本作りは一番早く取り掛からなくてはいけない作業ですが、とても重要な根幹ですので、力は抜けません。次に佐藤大さんの脚本から、イメージを膨らませて形を作っていくことが必要です。皆さんも、脚本から内容や風景を汲み取る訓練をしておくといいかもしれません。その脚本からビジュアルで分かるようにシーンごとの設定画を描いていきます。簡単に言うと、どういった場所で誰がどんなことをしているのかを説明するようなものです。僕が軽く描いたものをもとにして、美術設定の方が背景を含めたシーンに必要なものを描いてくださったり、デザインが必要なものに関してはそこからデザイン作業がスタートします。そこから第一線で活躍されている監督の方達にお願いして絵コンテを作成していただきました。このように、それぞれ得意としている分野があるので、分業でお願いしています。
カット数はどれくらいになるのですか?また、アクションシーンのカット割についてはどうしていますか?
毛利監督: カットは全部で1400カットくらいです。そのうちの約400カットがアクションシーンです。アクションシーンに関しては、役者さんの演技を撮影した実写ビデオコンテを作成しています。この段階でおおよそのカット割り、尺、レイアウトなどを決めている感じですね。それを元にモーションキャプチャーで人の動きを取り込み、3DCGキャラクターに動きを割り当てていきます。モーションキャプチャーの際は、家具の位置や障害物などを把握する為にすべて木枠で作ったセットを用意しておきます。これはCG上でキャラクターと背景の干渉を防ぐためです。木枠である理由はセットがカメラをさえぎってしまうとモーションデータを撮影できないからです。モーションキャプチャーの撮影と平行で、背景、小物、キャラクターなどCGで作れるところは作っていきます。
多くの工程がありますが、好きな作業はなんですか?
水島プロデューサー: 宣伝は最初から日本国内だけでは考えていませんでした。制作発表自体も日本でやらず、5月12日にドバイでレベルアップというバンダイナムコゲームスのプライベートイベントで発表し、全世界に発信しました。わりとゲームの発表はリークされがちなのですが、今回の作品が映画だと思っていた人はおらず、効果的に発表できました。YouTubeに鉄拳チャンネルを作り、ティザームービーを公開したのですが、3日間で50万ページビューくらいまでいきました。よいスタートを切れたなと思いましたね。その後、7月にフランスのジャパン・エキスポ2011、アメリカのコミコン・インターナショナル2011に参加し、パッケージはブルーレイディスクの中に映画とゲームが両方入っているハイブリッドという形で発売することを発表、ロサンゼルスではコスプレ舞台挨拶付きのプレミア上映会を行いました。日本では8月22日に新宿バルト9で完成披露試写会を行い、9月3日から日本にて、全国ロードショーとなります。
プロモーションについて教えてください。
水島プロデューサー: 宣伝は最初から日本国内だけでは考えていませんでした。制作発表自体も日本でやらず、5月12日にドバイでレベルアップというバンダイナムコゲームスのプライベートイベントで発表し、全世界に発信しました。わりとゲームの発表はリークされがちなのですが、今回の作品が映画だと思っていた人はおらず、効果的に発表できました。YouTubeに鉄拳チャンネルを作り、ティザームービーを公開したのですが、3日間で50万ページビューくらいまでいきました。よいスタートを切れたなと思いましたね。その後、7月にフランスのジャパン・エキスポ2011、アメリカのコミコン・インターナショナル2011に参加し、パッケージはブルーレイディスクの中に映画とゲームが両方入っているハイブリッドという形で発売することを発表、ロサンゼルスではコスプレ舞台挨拶付きのプレミア上映会を行いました。日本では8月22日に新宿バルト9で完成披露試写会を行い、9月3日から日本にて、全国ロードショーとなります。
この映画を作るにあたって、ターゲットはゲームをやった人か、またはやったことない人か、どこに据えましたか?
水島プロデューサー: そもそも映画化しようと思ったのが、ユーザーの方から要望がすごく多かったため、それに応えたいというのがまずありました。ですので、まずはユーザーの方に、その上で知らない人も楽しめるアクションムービーにしようと考えました。
毛利監督:「鉄拳」は血縁関係や生い立ちなどの設定も細かく独特の世界観がある作品です。でも、それを説明するものになっては良くないと思っています。逆に映画を観て、もっと知りたいとか、ゲームをやってみたいとか広がってくれるといいなと思っているので、あまり知らない人でも楽しんでもらえる作品になっていると思います。逆に知っている人であれば、今作に登場するキャラクターに魅力を感じてマイキャラクターに加えてもらえると嬉しいです。
最後に学生にアドバイスをお願いします。
毛利監督: CG含めて全般的に言えることですが、好きじゃないとやっていけませんよね。こんな作品が作りたい、そういう思いを強く思って実現するための努力を惜しまないことだと思います。そういった意思が大事な仕事になってきます。技術的な面も心的な面も強くなっていかないといけません。好きであることを大事にしてください。
水島プロデューサー:日本は車や家電など優秀なものを作って世界で売ってきたという実績があります。そして、これからの日本はコンテンツを世界で売っていく時代だと思うんですね。まさにみなさんが活躍する時代だと思います。プロデューサーに期待したいのは、どうしたら日本の優れたクリエイターが作ったものを世界の人に届けていけるかを考えていってほしい。その舞台を作れるのが唯一プロデューサーだと思います。既成概念にとらわれず、新しい発想で考えていってほしいと思います。
(取材・原稿 小島千絵)