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【開催レポート】THINK FROM SCIENCE FICTION. 宮本 道人先生による特別講義「SFプロトタイピングで『40年後の企業』を考える。」

【開催レポート】THINK FROM SCIENCE FICTION. 宮本 道人先生による特別講義「SFプロトタイピングで『40年後の企業』を考える。」

開催日時

2022年1月27日(金)19:30~21:00

場所

Zoomオンラインワークショップ

サステナブルな企業のあり方、事業の構築を再考する特別講義「THINK THE SIZE.」。全5回の共通のテーマは、未来を見通すためのひとつの視点である「サイズ」です。2023年1月27日に実施された「THINK FROM SCIENCE FICTION. SFプロトタイピングで『40年後の企業』を考える。」では、応用文学者 / 科学文化作家 / SFコンサルタントである宮本 道人先生が登壇しました。

宮本先生は、東京大学や慶應義塾大学などで研究員をしながら、産学官のさまざまな領域でSFプロトタイピングのワークショップを実施されています。宮本先生が関わった組織では、SFプロトタイピングを社員研修として活用したり、ワークショップの中で考えられたことを実際の事業計画書に落とし込まれたりしているそうです。今回はDHUの学生に向けて、SFプロトタイピングをテーマにしたワークショップが開催されました。

本講義は、Zoomによるオンラインワークショップとして実施しました。

宮本道人Miyamoto Dohjin
応用文学者/科学文化作家/SFコンサルタント

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。博士(理学)。東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員、慶應義塾大学理工学部訪問研究員、変人類学研究所スーパーバイザー。日本SF作家クラブ会員。様々なSF思考メソッドを開発し、多数の企業、自治体、学術機関の新規事業開発、ビジョン研修、公開ワークショップに協力。編著『SFプロトタイピング』(早川書房)星雲賞ノミネート、同じく編著『SF思考』(ダイヤモンド社)は国内外から注目を浴びている。他編著『プレイヤーはどこへ行くのか』原作担当漫画「デジタルヘヴン」(『RE-END』所収)。ダイヤモンド・オンライン、VR学会誌で連載中。

SFプロトタイピングで、遠い未来を想像できる

ワークショップの前に、まず宮本先生はSFプロトタイピングに関する解説をしました。

SFプロトタイピングとは「フィクションの力を借りて、斜め上のビジョン試作品を作るクリエイティブな手法」のこと。宮本先生は、SF(サイエンス・フィクション)という虚構を想像し、現実と結びつけるというアプローチで、新事業の立ち上げや研究開発のサポートを行っています。

「先が見えない世の中では、企業が経済活動をするうえで長期的な視点が必要不可欠です。たとえば、とある企業が誰かの言葉を使ってビジョンを掲げると『ITとDXの力で、世界中の社会課題を解決し、ウェルビーイングで持続可能な社会を共創する』みたいに伝わりづらいものになってしまう。そうではなくオリジナルのストーリーを構想し、自分の言葉でビジョンを示すことが大事だと考えています」と、宮本先生はひとつの思考法として、SFプロトタイピングの重要性を主張。

エイプリルフールから生まれたゲームや、映画の登場人物をロールモデルとしているハリウッドスターなど、フィクションが現実に作用する事例も紹介しました。

ワークショップがスタート!まずは参加者に関係する単語を収集

SFプロトタイピングへの理解が進んだところで、ワークショップがスタート。

最初にアイスブレイクとして、参加者が個人的に気になっていることや、趣味、好きなものなどを共同のスライドに書き込みます。

英語で話すサメのVtuber、テーマパーク、アメコミ、SF映画。続々とパーソナルな言葉が集まります。

「40年後の面接」はどうなっているか?

続いて、ワークショップの本題である「未来の企業」について考えてみます。考えるテーマは「未来の企業の面接」。面接は40年後にはどんな進化を遂げているのでしょうか。まずは学生が、面接から連想するイメージを場に出していきました。

学生Aさん:僕のイメージだと、ドラマとかアニメで見る面接って堅苦しいものが多い。でも現実では、志望理由を聞かれたときに『すごくここに入りたい』と必死で話すよりは、もうすこし余裕を持って答えられる人の方が魅力的じゃないかなって感じています。

学生Bさん:学校の入試でもマンツーマンで質問されるだけでなく、グループディスカッションをあえて取り入れているところが多い印象があります。グループディスカッションの攻略法って誰からも教わらないことが多いから、いきなりやってくださいって言われても難しいと思うんです。

学生の面接に対する印象を受け、「ではどうすれば面接官と求職者の双方にとって良くなりそうか」、宮本先生からクエスチョンが出されました。

学生Cさんもっとリラックスして話せるようになりたい。すぐ緊張しちゃうから、緊張がほぐれる未知のガジェットがあったら面白そう。

学生Dさん:やっぱり素で話したい。たぶん面接官は、求職者の人となりを見たいはずですが、緊張した状態じゃその人のことが見えてこないと思うんです。たとえばミシュランが飲食店の星を付けるとき、こっそり偵察しに行くって聞いたことがあります。そんな感じで、その人の私生活を見られるようなドッキリや試験が面白そう。もう少しエンタメ要素を入れるのも良いかもしれません。

学生Eさん:そもそも面接で話をする必要がなく、40年後だったら脳電波で交流してそうです。面接に来た人の考えていることがすぐ伝わるし、企業側のことも瞬時に分かる。採用にかける時間が少なくなるかも。

このように、面接に未来のテクノロジーを取り入れる、エンタメ性を取り入れるなど、参加者からさまざまな意見が集まりました。

出てきた言葉を組み合わせて、未来の言葉を作る

ここまで、ワークショップの最初にはアイスブレイクとしてパーソナルな単語を集め、続いて未来の面接に関係しそうな言葉も集めました。ここからは、一見関係なさそうな両方の言葉を組み合わせて、存在しなかった言葉を生み出す時間です。

たとえば、「漫才グループディスカッション」「サメと脳波交流」「緊張ホラー面接」など、新しい言葉がスライドに並びます。

単語を考えたり組み合わせたりするときに大切なのは、広い意味の言葉よりも狭い意味の言葉を用いることだと宮本先生は話します。

「サメと脳波交流というのはとても良いと思います。“動物”と限定せず、より具体的な単語を選ぶと絵が浮かんでくるので、狭く絞ったほうが良いんです。たとえば未来を考えるときに、感情×通貨で組み合わせて、“感情通貨”が未来では流行っていると仮定します。このように広く捉えるのではなく、感情から驚きに絞ってみたり、通貨ではなくジンバブエドルとしてみたり。“感情通貨”より“驚きジンバブエドル”の方が、話が広がりそうですよね」

未来の言葉が集まったら、その言葉の意味を考えます。今回は「漫才グループディスカッション」から話を広げていきました。

学生Aさん:たぶん面接に参加する人で団体芸をするんだと思います。それで面接官を笑わせないと合格できない。

学生Bさん:正直、一緒に漫才する人で運命が決まっちゃいそう。明るい人と一緒なら場を盛り上げられるかもしれないけど、暗い人同士で集まったらどうなっちゃうんですかね。

「漫才グループディスカッション」に対して賛否両論が集まります。宮本先生は「批判する意見をぶつけるのも大切なんです。ポジショントークをすることで、議論が活性化します」とアイデア出しのためには、多様な意見が大切であると伝えました。

ほかには、「グループの内ひとりだけが採用される側で、あとの人は会社が用意した人。たとえば、赤ちゃんとか動物、総理大臣とか関わるのが難しそうな人だと、求職者の対応次第でその人の個性が見えそう」という意見も。

グループ内全員が求職者ではなく、企業側の人材がディスカッションに混じり、化学反応を見られるのは確かに面白そうです。

プロトタイプを使って、即興で演じてみる

「漫才グループディスカッション」の構想が固まってきたら、当事者になりきって演じてみます。

求職者A:サメじゃなくてカメならやりやすかった。

求職者B:なんでサメなんですか。

面接官:理解できない他者とも笑いあえる社会を築きたいので、その練習にサメを使っています。

実際にビジネスの現場でワークショップを導入する際は、開発者・満足しているユーザー・満足していないユーザーなどに分かれるそう。そこを入り口にして、サービスを誰に届けるのかを設定するのです。

今回は、お題が未来の面接ということで、登場人物だったらどんな気持ちになるかを全員で考えました。

今回のワークショップ以外に、未来を考えるアプローチは?

ここで、未来の面接をSFプロトタイピングで考えるワークショップは終了。続いて質問コーナーに移ります。

「今回の漫才グループディスカッションというアイデアの中で、赤ちゃんを連れてくることは2023年でも実現できそうだけど、サメや総理大臣を連れてくるのは難しそうだと思います。ワークショップの着地点としては、現実的なところに落ち着くこともあれば、ぶっ飛んだ場所にたどり着くこともあるのでしょうか」

この質問に対して宮本先生は「今回のように現実的な部分と、現段階では実現不可能な部分が入り混じっている両面を持つ着地点は、良いソリューションだと思います。虚構と現実の振れ幅があることで、道筋が見えやすいんです。今回は90分と短かったので駆け足でしたが、普段はぶっ飛んだ妄想から考えて、現在に戻ってくるような流れでやることもあります」と回答。

また「今日やったワークショップのほかに、SFプロトタイピングを活用した別のアプローチはありますか?」という質問も届きました。

「たとえば、未来の犯罪を題材にすると、これから起こりうる社会問題が見えてきます。ほかには架空の損益計算書を作ってみて、どんなものが資産・負債になりうるのかを考えてみる手法などさまざまです」と回答しました。

加えて宮本先生は、さまざまな意見が交錯することが良いアイデアを生み出すうえで重要であると、再度主張しました。

「自分と似た人が集まって話し合っても、共感ばかりしてしまい、偏ったアイデアしか出てきません。何か企画を考える際、ジェンダーや国籍、年齢など、何もかも自分とは違う人たちと一緒に話し合うと、イノベーションが起こりやすいんです」

遊ぶように企画会議をすると、良いアイデアが浮かぶかも?

そして最後に、宮本先生から学生に向けてメッセージが送られました。

「ワークショップで思考実験をする中で、SF思考のコツがつかめたのではないでしょうか。こんな感じで企画会議を楽しくやると、面白いアイデアが出やすいんです。SFプロトタイピングについて、もう少し踏み込んだことを知りたい場合は『古びた未来をどう壊す』に詳しく書いています。皆さんもこれからいろんなお仕事をする際に、アイデア出しの方法としてぜひSFプロトタイピングを活用してみてください」

また特別講義「THINK THE SIZE.」をコーディネートした、株式会社〆の泉水 政輝さんからもメッセージが送られ、全5回の特別講義が終了しました。

「今回のようなイベントの設計を含め、僕たちはクリエイティブコンサルティングをしています。不安なことはいっぱいありますし、悩みながら楽しく仕事してる感じなんです。未来やサイズをテーマに全5回の講義を開催しましたが、何かしら皆さんのヒントになったら嬉しいと思っています。会社のことも検索して、ぜひ遊びに来てください」

   

平野紫耀さんが登場!デジタルハリウッド大学新CM『みんなを生きるな。自分を生きよう。2024』

本気で夢を追うって
簡単じゃないんだってマジで

これから先、諦めたくなる瞬間が
かならず来る
もちろんおれにもくる

でも、その夢を実現できたら、
きっと「最高だ!」って思えるんだよ

だから、とにかく一歩踏み出す
その選択が正しいかなんて、
今の時点じゃ誰にも分かんないし

最終的に、自分の道は、
自分で選ぶしかないでしょ!

みんなを生きるな。
自分を生きよう。

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