『YouTubeでプロクリエイターとしての可能性を広げるコツ』 MEGWIN氏とコマドリストの竹内泰人氏によるパネルディスカッション特別講座
- 過去に開催した公開講座

開催日時 |
2012年 |
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場所 |
デジタルハリウッド大学 |
『YouTubeでプロクリエイターとしての可能性を広げるコツ』 MEGWIN氏とコマドリストの竹内泰人氏によるパネルディスカッション
YouTubeをきっかけに、プロクリエイターへの道を拓いたMEGWIN氏、竹内泰人氏のお二人から、YouTubeでの作品公開から現在の活躍に至るサクセスストーリー、苦労話や成功の秘訣も交え、YouTubeを100%活用して「クリエイティブで食べていく」コツを伝授していただきました。
MEGWIN氏は、YouTubeへの動画投稿を中心に活動するコメディアンです。「オレがオレにオンデマンド」(オレの好きなようにやる)精神に基づき、2005年にインターネット放送『MEGWIN TV』を開局しました。以来、面白動画から料理動画まで多種多様なオリジナル作品を、毎日アップロード。一億五千万回以上の動画再生回数を誇る人気を獲得しています。2011年6月には株式会社タニタによる出資を経て、株式会社MEGWIN TVを設立。さらに、活動の幅を広げています。
コマドリストの竹内泰人氏は、コマ撮り映像を制作するフリーランスの映像作家です。 YouTubeにアップロードしたコマ撮りアニメ『オオカミはブタを食べようと思った。』(以下『オオカミとブタ』)が10日間で100万再生を突破し、飛躍のきっかけを掴みました。現在では、OLYMPAS EuropeとキャンペーンCM『PEN Giant』の共同ディレクション・制作を手掛け、書籍『つくろう!コマ撮りアニメ』(ビー・エヌ・エヌ新社刊)を発行するなど、コマ撮りアニメーションのトップクリエイターとして活躍しています。
YouTubeはどのような使い方をしていますか?
MEGWIN氏:YouTubeには毎日動画をアップし、そこから得る広告収入が私の主な収入源となっています。収入の50%はYouTubeから稼いでいます。しかも私ひとりというわけではなく、従業員5人の会社としての収入です。
竹内泰人氏:僕の場合は収入源とはしていません。食べていける収入は入ってこないので、お小遣い稼ぎになるくらいです。ですが、僕が仕事でCMなどの依頼が来るときは、YouTubeにアップしている動画を見て声をかけてくださる方が多いです。先日も、クライアントの奥様がYouTubeで動画を見ることが趣味で、僕の作品を見てくださって、そこから仕事に繋がったということがありました。ですので、YouTubeは宣伝として使っています。以前、一般の方と仕事のクライアントに喜ばれるのとどちらがいいですか?という質問を受けたことがありますが、僕にとってはどちらも同じです。誰かを楽しませるという点は同じだと思っています。
『オオカミとブタ』を制作する上でヒントになった作り方はありますか?
竹内泰人氏: この作品は写真をさらに写真で撮るという特殊なコマ撮りをしています。もともとは、1つの風景を何枚も写真にとり、繋げていくジョイナー写真というものを作っていました。少しずつずらして撮影していくことで、パノラマ写真を作っていける手法です。そのときに、同じ人が3箇所に写っていた写真があったんですね。あぁ、歩いているんだなというのがわかりました。それを見た瞬間に、写真の中に時間軸がある、これを動画に戻せないかなと思ったんです。そのときにはコマ撮りをすでに作っていたので、コマ撮りに落とし込んだのが『オオカミとブタ』です。
『オオカミとブタ』の制作課程を教えてください。
竹内泰人氏: 写真は1300枚くらい使っています。失敗した写真だけでも100枚くらいはありますね。撮影期間は意外と短く、外での撮影は13箇所で撮影し、1箇所に1日かけたので計13日です。作った時期が大学4年の時で、卒業論文とは別で趣味で作っていたので、いっぺんに撮ったのではなく、半年の間に友達とのんびり進めました。最後の映像になる部分は3日間で撮影しました。これは、自分の部屋を使って撮影しているため、写真を部屋に貼ってしまうと日常生活を送る上で困るという理由で早急に進めました。
今は大変有名になったMEGWIN TVですが、最初の頃は知名度が低かったと思います。 それでも毎日制作していたのですか?
MEGWIN氏: 僕にしか出来ないことって何だろう、と考えたときに、365日コメディしている人っていないよね、それなら毎日違うネタをやろう!と思いついたのが始まりだったため、とにかく毎日続けるということに意味がありました。27歳から撮り続けて、90歳になったときに、振り返ったら面白いだろうなぁと考えています。俺は面白い!という信念を持って日々取り組んでいます。
竹内泰人氏:その信念は大事ですよね。人にウケるかウケないかという軸とは別に、自分は面白いと思っているもの、自分が作りたいものを作るという気持ちはあります。人が面白いと思うものを作ろうとすると苦しくなってしまうこともあります。ですが、それで作品を作らなくなってしまったら意味がありません。週刊漫画も、面白く描けないので描きませんではファンも怒りますよね。毎週刊行されることに意味があります。続けることのほうが偉大だと思います。
MEGWIN氏:もちろん面白くないものをアップするとファンに怒られますが、怒ってくれるのはありがたいことです。クリエイターとしては何も言われないのが一番悲しいですから、反応が返ってくるのは嬉しいことですね。
工夫している点はありますか?
MEGWIN氏: 飽きられないようにしようとは常に思っています。一貫して"バカ"ですが、背景を変えるとか、表現方法を変えるとか。コマ撮りを使ったこともありますよ。
竹内泰人氏:人間、引き出しはそんなにないと思っています。ですから、本を読んだり、様々なものに触れたりして引き出しを増やすのはもちろん大切です。あとは他の作家と一緒にやるのも有効だと思います。よくデザイナーやアートディレクターが新しい世界が見えるからと他の人と仕事をしていますが、僕も同感です。一人だと限界がすぐきてしまいますが、誰かと組むことで新しいものが出来上がるかもしれません。
"YouTubeのススメ"をぜひお話ください。
MEGWIN氏: 自分の好きなことをやれる、かつ有名になれば、名刺代わりになりますし、お金も稼げますし、就職にも困らないと思っています。YouTubeを使って有名になり、次に行くというステップもあると思いますし、まずはあまり考えないでやってみることをおすすめします。
竹内泰人氏: ポートフォリオという言い方がありますが、僕の場合はWebサイトとYouTubeがこれに当たります。作品が有名になって仕事に繋がりフリーランスとして活動できるようになりましたが、仕事が来るきっかけになったのはYouTubeです。同じように作家としてやっていこうという人は、自分のサイトを作っておいたほうがいいです。自分ではない誰かがいつでも自分にアクセスできる何かを作っておくのです。他の人が、こんな素敵な人がいますよ!と話に出してくださったときに、その人の作品を見られる場所を教えてくださいとなっても、サイトを持って無いとなると紹介さえ出来ません。0円でつくれるならつくっておくべきです。その中でもYouTubeは世界で一番多く見られている動画サイトですので、ぜひ使ってみてはいかがでしょうか。
制作費はどれくらいかけていますか?
竹内泰人氏: お金がなくても面白くすることはできます。ですが、それにはセンスが必要です。また、お金かかっていないことがウケるということもあります。でも、作品に対して時間もお金もかける、作品に"賭ける"くらいの覚悟がなければ面白いものは作れないと思っています。僕も一眼レフのデジカメ、パソコンなどあらゆる投資をしています。そういった「覚悟」が必要です。僕が一人で作業をしているのはその覚悟を人に強要できないという点がありますね。
ちなみに『オオカミとブタ』は材料費などが4万円、『魚に似た唄』は50万ほど使っています。
MEGWIN氏:僕も会社を作るにあたって、500万円借金しています。投資は当たり前です。自分の好きなことをやるのに、お金は幾らでも出します。やりたいからやる!ですね。
最後に、お二人のように映像を制作していきたい学生に、メッセージをお願いします。
MEGWIN氏: Don't think!Feel!
竹内泰人氏:まじめに頑張れ!ですね。目指すものがクラスでウケたい、であればクラスでウケるぐらいの努力が必要。学校で一番になりたかったらもっとがんばらなくてはいけない。もちろんがんばらなくても人生は幸せだと思います。がんばりたかったらがんばろう!ですね。
(写真:デジタルハリウッド大学 4年 板屋ゼミ 藤井翔/取材・原稿:小島千絵)