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失敗を歓迎する起業の遊び場:ソニーグループと歩む企業ゼミの6年間

デジタルハリウッド大学(DHU)のキャリア教育の一環として開講されている「企業ゼミ」。通称「学内インターンシップ」と呼ばれるこの企業ゼミは、連携企業による講座を1年次からオムニバス形式(全8回)で受講することで単位取得ができる、DHU独自の就業体験プログラムです。

数ある企業ゼミの中でも、ソニーグループと連携して開講するのが、2025年度で6年目を迎えた「Ignite Your Ambition(以下、IGNT)」です。

東京大学、東京藝術大学、そしてDHUの学生が大学の枠を超えて混ざり合い、スタートアップの発掘と育成支援を行うIGNT。今回は、講師の杉上雄紀氏とプログラムに参加した在学生4名をお招きし、本学キャリアセンターの座間味涼子氏を交えて、IGNTでの活動内容と魅力について語っていただきました。

プロフィール

杉上 雄紀

ソニーピープルソリューションズ株式会社 産学越境推進室 室長。東京大学非常勤講師。2014年からソニーグループ株式会社で社内ベンチャーを立ち上げ、2019年から東京大学で社会連携講座を開始。2020年よりDHUで企業ゼミ「Ignite Your Ambition」を開始。

座間味 涼子

デジタルハリウッド大学 キャリアセンター長

深谷 美波 さん(DHU2年)

松尾 侑恭 さん(DHU1年)

山口 慧 さん(DHU2年)

清水 杏友加 さん(DHU2年)

きっかけはネームバリューとピザ

——企業ゼミ「Ignite Your Ambition(IGNT)」は、コロナ禍の真っ只中にスタートし、2025年度で6年目を迎えました。「東大×藝大×DHU」という異色とも言える座組みですが、立ち上げの経緯を改めて教えていただけますか?

杉上もともとは2019年にソニーグループ株式会社(以下、ソニー)と東京大学の社会連携講座の一環として東大の大学院限定で始まったプログラムでした。私は2014年からソニーで社内ベンチャーを立ち上げ、その後「次は何をしようか」と考えた時に、出身校である東大で大学生発スタートアップの発掘と共創を目的とした社会連携講座を持つことになったんです。

当初は東大の機械系エンジニアの学生が多く参加していて、彼らの技術力にクリエイティブな要素や多様性が加わればもっと面白くなると感じていました。そこでまず、私の後輩の繋がりで東京藝術大学へお声がけをしました。また、私自身の社内ベンチャーがファッションテック(アパレル業界におけるデジタル技術の活用)の繋がりでDHUのOlga先生と縁があり、お話を持ち込んだのがきっかけです。

座間味杉上さんからいただいたお話を学内で検討した結果、学生生活の早い段階で社会との接点を持つ貴重な機会となると考え、1年次から履修可能な「企業ゼミ」の座組で進めることになりました。

右:杉上氏 左:座間味氏

——「テクノロジー×デザイン×ビジネスのスタートアップ手法を社会実装を通じて身に着ける」がテーマとのことですが、IGNTとはそもそもどのようなプログラムなのでしょうか?

杉上 DHUでは全6〜8回ほどの講義(トレーニング)があり、その後は有志によるプロジェクト(サークル活動)へと移行していく形式をとっています。

前半はGoogleベンチャーズが開発したデザインスプリントの手法をベースに、「リサーチ→プロトタイプ→ユーザーテスト」を高速で回すトレーニングを行います。後半はチームを組み、12月のDemo Day(成果発表会)に向けて実際にモノを作り、社会実装を目指します。このサイクルを通じて、単にアイデアを出すだけでなく「作って、使ってもらって、作り直して磨いていく」経験を積んでもらうことが目的です。

https://ignite-your-ambition.com/ より

——学生のみなさんがこの企業ゼミに参加しようと思ったきっかけは?

松尾もともとDHUには実写合成(VFX)の勉強をしたくて入学したので、起業について考えたことはありませんでした。ぶっちゃけた話、「ソニーグループ・東大・藝大」というネームバリューの強さに惹かれたのが理由です。長崎から上京してきたので、東京でしかできない面白いことをやりたい、参加すれば実績として使えそうだなという思いがありました。

深谷 私も地方(福島)出身で、起業家育成というワードに惹かれました。地域おこしに興味はあったんですけど、起業がどういうものか何も分からない状態だったからこそ、逆にワクワクしましたね。

清水大学では3DCGを中心に学んでいますが、在学生向けのメールで企業ゼミの案内が来た時、「東大×藝大×DHU」という並びを見て「なんじゃこりゃ?」と。その疑問を解決したいというのがきっかけでした。

山口私は入学前からエンジニアとして活動していました。IGNTを知ったのは「東大で無料でピザが食べられる」と聞いたのがきっかけで(笑)。でも実際参加してみたら、東大・藝大・DHUのメンバーでスプリントをぐるぐると回すのが楽しかったです。

杉上狙い通りですね(笑)。学生が何か新しいことを始めようと思う時期に、フランクなきっかけを提供したかったんです。それで実際に来てみたら「面白いじゃん」となって続けてくれるのが一番ですから。

実践レポート①:ゲレンデ×プロジェクションマッピング「妙高プロジェクト」

——具体的な活動内容について伺います。松尾さんと深谷さんが参加した「妙高プロジェクト」とはどのようなものですか?

深谷妙高高原のスキー場のゲレンデに、プロジェクションマッピングを使った体験を作るプロジェクトです。私は主にビジュアル面のアイデア出しを行いました。スキー場にテトリスのようなゲームを映し出したり、ゴッホのひまわりなどの名画を動かしたりと、子供たちが楽しくスキーを始められるような体験を考えました。

松尾僕は企業との窓口や機材周りを担当しました。実際にプロジェクションマッピングを扱っている企業の方と交渉して、数百万円クラスのプロジェクターをお借りしました。マイナス気温の雪山で電源をどう確保するか、結露対策はどうするかなど、実行する上で避けられない課題をクリアしていくことが大きなミッションでした。

——1年生で数百万円の機材手配を任されるのは、なかなかない経験ですね。

松尾 チームリーダーの方に「予算内で良いやつ探して」と丸投げされまして(笑)。プロジェクターを扱っているいろいろな会社にアタックして比較検討しました。PoC(Proof of Concept: 実証実験)当日は、体験してくれたお子さんや親御さんから「これ本当にいいね」「導入してほしい」というポジティブな反応をいただけて、達成感がありました。

深谷苦労もたくさんありました。準備が遅れてみんなで朝方まで作業したり、雪山で電波が通じなくて駅まで降りてパソコン作業したり……。でも、今となってはそれもいい思い出です。

杉上このプロジェクトで特徴的だったのは、東大院生のメンバーに加えて、チームリーダーがソニーグループの社員だったことです。彼は2020年の企業ゼミ初年度に東大生として参加していた元学生で、現在はソニーグループに入社して3年目。 私自身がソニーグループ社内の人材育成を担当していることもあって、その観点から「社員と学生を混ぜてみよう」という実験的な試みを行っているのですが、その第1号となるプロジェクトでした。

プロジェクトの進め方も実践的で、最初はリゾート開発のクライアントに向けてメンバー全員が1人1案ずつ、合計6個くらいのアイデアを出し合ったんです。その中でクライアントから選ばれたのが「スキーゲレンデでのプロジェクションマッピング」でした。ナイター営業時に、子供たちがゲーム感覚で楽しくスキーを始められる体験を作ろう、という企画です。

メインのゲーム開発を進めつつ、現場では深谷さんが出してくれた他のアイデアも全部テストして、松尾さんの操縦するドローンなどを使って撮影を行いました。クライアントへの最終提案時には「御社が選んだこれもやりますが、実はあれも、これもできますよ」と、全部乗せで提案できたのが良かったですね。

——チームにはIGNTの先輩でもあるDHU卒業生も参加されていたそうですね。

杉上彼はこの企業ゼミに初年度から参加している、一番付き合いの長い学生です。彼は新潟出身なのですが、以前、私が新潟の十日町市で別のプロジェクトを始めた時に「一緒にやろう」と誘ったら、そのプロジェクト終了後も個人的に活動を続けて移住して起業したんです。今回、また新潟の妙高だったので彼に声を掛けたらこのプロジェクトに入ってきて、現地の地理勘やゲーム開発スキルを活かして活躍してくれた。 6年間やってきて、こういう循環が生まれたことは象徴的で嬉しいですね。

実践レポート②:AI×日記×製本「秘密の図書館」

——山口さんと清水さんのチームはいかがでしたか?

山口「秘密の図書館を作ろう」というプロジェクトです。仕組みとしては、スマホのアプリで日記を書くと、AIがその内容を要約してくれて、定期的にそれが物理的な「本」になって自宅に届くというサービスを開発しました。

清水自身の原体験として、高校生の頃に周りと自分を比べすぎて落ち込み、「自分が何者かわからなくなる」という悩みがありました。自分の思考を「本」という物理的な形にして積み上げていくことで、過去の自分にいつでも立ち返れる居場所を作りたかったんです。たくさんの本に囲まれていると、自分という存在の輪郭がはっきりするような気がして。

杉上清水さんのチームは、清水さんの抽象的な感覚から始まりましたね。彼女が言っていたのは、「大量の本に囲まれると、夜空の下で星を見ているような安心感がある」という感覚。宇宙の広さを感じる星空のように、自分の歴史が詰まった本棚に囲まれることで癒やしを得られる。そんな個人的な感覚を、どうプロダクトに落とし込むかが課題でした。

清水最初は自分の頭の中にあるイメージを言語化するのが本当に難しくて……。杉上さんにもメンバーにも「何を言ってるのかわからない」と言われたりしました(笑)。 そこで杉上さんに「話す前に準備をしよう」とアドバイスをもらって、ChatGPTを使って自分の考えを壁打ちし、整理してからチームに共有するようにしました。それでようやく、山口さんやチームメンバーにも言いたいことが少しずつ伝わるようになってきました。

山口作りたいものの要件がコロコロ変わるので、エンジニアとしては大変でしたが(笑)、こだわりをひとつひとつ実装していけるよう努めました。例えば、AIが日記の中から頻出単語を抽出して「タグクラウド」のように1ページ目に大きく表示する機能や、その時の感情に合わせて本の「背表紙」の色が変わる機能などです。

杉上本棚に並べると漫画『ドラゴンボール』の背表紙のようにグラデーションになって、自分の感情の移り変わりが色でわかるようになっています。最終的には、清水さんが独特の感性で発する言葉を、チームメンバーが「ああ、こういうことね」と理解できるようになり、共通言語としての「清水辞典」が出来上がっていましたね。

清水みなさんのサポートのおかげで、ただの日記アプリではなく、自分を見つめ直すための特別な体験を作ることができました。

「思い」の強さがDHU生の武器

——他大学の学生と混ざり合う環境の中で、杉上さんはDHU生の特徴をどのように感じますか?

杉上フィロソフィー(哲学)や「思い」を持っている学生が多いと感じます。もちろん個人差はありますが、全体の傾向として、東大生はロジックやプロジェクトマネジメントに長けていますが、DHU生は「なぜこれをやりたいのか」という情熱が強い。 私はある種、特に進路に悩むことなくシンプルに努力し続けて東大に入ったタイプなんですが、DHUの学生たちは「これやりたい!」と選んで入ってきている。だからこそ、自分の哲学を持っているんです。

技術面での貢献も大きいです。ドローン空撮の技術を持っていたり、グラフィックデザインができたり、エンジニアリングができたり。東大生と藝大生、DHU生、それぞれの得意が混ざり合い、苦手を補完し合えるのが、IGNTの面白さであり、醍醐味です。

座間味卒業生を見ても、この企業ゼミで揉まれている経験を就活で活かしている学生が多いですね。実際の事例ややってきたプロジェクトがあるので、ポートフォリオに載せるネタが増えますし、面接でも実体験を持って話せるというのは強みになっていると感じます。

——最後に、みなさんにとってIGNTとはどのような場所ですか?

山口「安全に失敗できる場所」です。

松尾:「きっかけ」ですかね。いろんな人と関わり、新しいことを始めるきっかけになりました。

深谷:「どんなアイデアを出しても怖くないところ」です。

清水:「遊び場」みたいな感じかな。

杉上: 私にとってライフワークですが、学生にとっても「ライフワークが作れる場所」ですね。アイデアを考えて終わりにするのではなく、作って、使ってもらって、磨いていく。そのプロセスを若いうちから経験してほしいと願っています。

デジタルハリウッド大学では今後も、学生の可能性を広げるキャリア教育に注力していきます。

Ignite Your Ambition
https://ignite-your-ambition.com/

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