一人ではできないことを、みんなで。「東京ゲームショウ2025」への出展を果たした在学生ゲーム製作コミュニティの挑戦

2025年9月に開催され、国内外から約26万人が来場したアジア最大級のゲームの祭典「東京ゲームショウ2025」。その熱気あふれる会場には、デジタルハリウッド大学の有志学生により結成された「デジタルハリウッドゲームズ(DHG)」による5つのオリジナルゲームが展示されました。
東京ゲームショウ(TGS)当日の様子を中心に、DHGメンバーたちのゲーム製作にかける想いについて伺いました。
デジタルハリウッドゲームス(DHG)
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学生の“本気”が形になった
TGS2025の会場である幕張メッセには、大手ゲームメーカーやデベロッパーが一堂に会し、各ブースには最先端のゲームが並びました。デジタルハリウッド大学はインディーズゲーム部門のターンキーブースに出展するため、2024年12月から大学事務局主導で有志学生を募集。学内展示などを重ねながら、この日に向けて準備を進めてきました。

イベント当日。ブースには、DHGのメンバーが来場者に積極的に声をかけ、試遊に呼び込む姿がありました。取材班も実際にゲームを体験しながら、ゲームの概要と見どころを聞きました。
展示作品紹介
『Masq Mystique』──猫「ミモ」が導く、儚くも美しい異世界の旅
ジャンル:3Dプラットフォームゲーム

異世界の廃校を舞台に、猫の「ミモ」として探索を進める3Dプラットフォーマー。「七つの美徳」をテーマにストーリーが展開されます。
この作品では「図書館」がプレイアブル化され、壁登りや二段ジャンプなど猫らしいアクションが繰り広げられます。“猫らしい”軽快なアクションと操作感が気持ちよく、プレイした人からも「学生製作とは思えない完成度」「イラストがとにかく美しい」といった声が寄せられていました。

『クラリオン』──重力を操り、異形に挑むスタイリッシュアクション
ジャンル:3Dアクション


絢爛豪華な学校で起きた異変に立ち向かう精霊を描いた3Dアクション。プレイヤーは重力操作を駆使しながら、怪物たちを倒し校舎を進んでいきます。華やかなグラフィックと流れるような戦闘演出が目を引きます。カメラワークが秀逸で、キャラクターを動かすだけでも世界観そのものを楽しめる作品に仕上がっていました。
『Blue』──深海に眠る謎を追うアクションアドベンチャー
ジャンル:アクションアドベンチャー


深海「ネモ」を舞台に、環境破壊を進める勢力「アトランティス」と対峙する物語。立体ブロックのようなビジュアルで構成されているにもかかわらず、水中の様子が繊細に表現されていて、まるで映画を見ているような感覚で楽しめる作品に仕上がっていました。勢力に立ち向かうだけでなく、生き物と共に自分だけの水族館を作り上げていく体験が新鮮で、単なるバトルゲームとは違った面白さがありました。
『BUMP OF CHICKEN』──食べて強くなるローグライクRPG
ジャンル:3Dローグライク


チキンを食べてスキルを強化しながらモンスターを倒す、ローグライク / RPGアクションゲーム。毎回異なるスキル構成で挑むリプレイ性と、テンポの良い戦闘演出が魅力です。アクションの痛快さはもちろん、イラストのかわいらしさも見どころのひとつ。製作者のキムさんは、コミック製作を得意とする学内の友人にも協力を仰ぎながら仕上げたと話してくれました。
『Land Run』──西部の荒野で繰り広げる戦略カードバトル
ジャンル:戦略カードゲーム


西部開拓時代をモチーフに、カードを見極めながら駒を動かす戦略ゲーム。デッキ構築や体力管理といった要素が絡み合い、頭脳戦の駆け引きを楽しめます。普段はゲーム企画を専門に学んでいるという製作者。戦略性が高いゲームに、試遊をした来場者も苦戦しながら楽しんでいる様子でした。
TGS出展の舞台裏
今回は「Masq Mystique」を製作した「Overnight Artelier(オーバーナイトアトリエ)」のMOCHAMAD ALBARI AKITO FIRAK(アキト)さんとパーレント太陽さん、「BUMP OF CHICKEN」製作者のキム ファジュンさん、「Land Run」製作者のチャ ミンソクさんにお話を伺いました。出身が日本、韓国、インドネシアと、多様なバックグラウンドを持つ学生たちです。
自分の発想や技術を超え、高め合える環境を求めて
——今回、コミュニティの立ち上げと東京ゲームショウ(TGS)への出展の打診はほぼ同じタイミングだったと聞いています。どのようなきっかけで出展が決まったのでしょうか?
アキト:TGSは、基本的には法人が出展できるイベントです。学生が出展できる枠も一応ありますが、1000応募から1つ作品が選ばれるような狭き門。そこで、法人である大学として出展しようと考えました。さらに同時期に「学生がチームを組んでゲームを作れるコミュニティを作ろう」と、2024年の秋ごろから事務局スタッフの方と協働でDHGの立ち上げをスタートし、12月頃から本格的に動き出しました。
——コミュニティへの参加、そしてTGSへの出展に声を掛けられた皆さんはどのように感じましたか?
パーレント:私もアキトさんと同じチーム(Overnight Artelier)で動いていたので、最初は「学生でもTGSに出られるの?」と驚きました。出展となると、締め切りが明確になる。だから「なんとしてでも完成させなければならない」という健全なプレッシャーができ、モチベーションになりました。
チャ:自分はちょうどゼミの先生から「自分の作品を出せるイベントを探してみたら?」と言われたタイミングでした。だから、TGSはいいチャンスだと思いました。
キム:ゲームディレクターを志望しているので、TGSはずっと憧れの存在でした。自分の作品を大勢の人に見てもらえるなんて夢のようで、参加が決まったときは本当にうれしかったです。
——アキトさんは、なぜ自分が中心となりコミュニティを運営してみようと思ったのでしょうか?ほかの皆さんは、なぜ参加を決めましたか?
アキト:いろんな専門分野の人が交わる場をつくりたかったからです。私がゲーム製作に惹かれたのも、製作プロセスの中で音楽・プログラミング・デザインなど、さまざまなスキルが融合する点に魅力を感じたから。同じように、多様な視点を持った人たちが集まれるコミュニティをつくってみたいと思ったのが、DHG発足のきっかけです。
パーレント:DHUには本当に多様な学生が在籍していますが、日常的にコミュニケーションをかわすのは自分の親しい人たちだけ。でもTGSを目指して集まる人たちはきっと知らない人たちのはず。だからこそ、自分にはない視点からアドバイスをもらえると感じました。
チャ:これまでずっと一人で企画から製作まで行ってきました。でもそれだと、どうしても自分の発想や技術の範囲を超えられない。コミュニティがあれば、自分の企画を形にしてくれる仲間も見つかるし、逆に他の人のプロジェクトを手伝うこともできる。そうやって補い合える環境がほしかったんです。
キム:私もまさに同じです。私自身はプログラマーで、音楽や企画、デザインの知識が足りなかった。だから、他の人の得意分野を間近で学べるコミュニティはとても貴重だと感じました。
どうしたら立ち止まってもらえるのか
——実際にTGSに出展してみて、印象に残ったことはありますか?
キム:僕は2020年からTGSに一般来場者として通っていましたが、「出展者」として立つとまったく目線が違いました。目の前を通る人の多さに圧倒されて、「自分がこんな場所に立っていいのかな」と緊張しましたね。
チャ:コミュニティの大切さですね。今までは一人で作って、一人で何かに出展して、そこで完結していました。今回はチームで作ったからこそ多くの人が声をかけてくれたし、フィードバックもたくさんもらえた。また、通り過ぎていくたくさんの人を目にして、「人は本当に面白いものにしか反応してくれない」という現実も学びましたね。
パーレント:私はプロモーションの重要性を痛感しました。TGSでは何百ものブースが並ぶ中で、どうやって目立つかを常に考えなければなりませんでした。展示の工夫や声かけの仕方、プレゼン力を磨けたのは大きな収穫です。
アキト:僕も同じく、製作と同じくらいPRが大事だと痛感しました。X(旧Twitter)やWebサイトで発信しつつ、チーム内のスケジュール管理も並行する。変更やリスケが重なって、まるで“蛇行運転”のような進行でしたが、チームの結束力は高まったと思います。
より多くの人と学び合えるコミュニティにしたい
——DHGの今後の活動について教えてください。
アキト:今年はTGSのほかに、オープンキャンパスやラウンジ展示など、学内イベントにも積極的に出るようにしてきました。来年はTGS、学内イベントに加え、「東京ゲームダンジョン」にも挑戦したいと考えています。展示の機会を増やすほど経験は積めますが、その分エネルギーも必要なので、どのイベントに最も注力するかを見極めていきたいですね。
パーレント:今年はTGSのほかに、交流会も開催しました。具体的には、お互いの作品をプレイしてフィードバックをし合ったり、ディスコード上で意見交換したり。終わったあとにファミレスで作品やコミュニティの活動について熱い議論を交わした日もありました。来年は、そういった教え合う機会ももっと増やしていきたいです。
——フィードバックというのは、具体的にどんな内容ですか?
パーレント:学内展示だと「面白かった!」という感想をいただく機会が多いのですが、コミュニティ内では技術的な意見が飛び交います。UIやUXの改善点、処理の重さの原因など、開発者同士だからこそ気づける点が多いので、今後も積極的に意見交換をしていきたいです。
——キムさんは、今回をきっかけに他の製作チームへの参加をきめたと聞きました。
キム:はい。自分の強みであるプログラミングを活かせるチームを探していたところ、アキトさんたちのOvernight Artelierがちょうど人手不足ということで声を掛けてもらいました。私はプログラミング以外のことを専門領域にする人と一緒にやりたいと思っていましたし、アキトさんのチームはプログラミングができる人を探していて、目的も一致していたので、参加を決めました。
アキト:もともと僕たちのチームは、プログラマーが少なかったんです。そこにキムさんが加わってくれて、製作の幅が一気に広がりました。DHGが作ってくれた縁で、とても嬉しく思っています。
——最後に、今後このコミュニティをどう活かしていきたいかを教えてください。
アキト:TGSのような世界的イベントに学生として出展できるのは、本当に貴重な機会です。だからこそ、ただ作品を出すだけで終わらせず、経験や人脈を次につなげていきたい。今年は3・4年生の参加が多いですが、来年はツールの使い方講座など、下級生も参加しやすいイベントを企画しながら、少しずつコミュニティを広げていけたらいいなと思っています。
パーレント:僕は、DHGを通して“自分の知らない分野を学べる”ことが何よりの魅力だと思っています。たとえばチャさんやキムさんと関わることで、チーム内だけでは得られない刺激があった。今年は5チームでしたが、来年はもっと増えていくのが楽しみです。
チャ:一人でやっていると、どうしても視野が狭くなってしまいます。だからこそ、仲間たちと意見を交わすことに意味があると思っています。専門分野が違う人同士が交流することで、新しいアイデアや発想がどんどん生まれる。もっと気軽に参加できる場所にしたいですね。
キム:プログラミングには“100通りの正解”があります。だからこそ、他の人のやり方を見ると毎回刺激を受けるんです。このDHGというコミュニティが、互いの知識を共有して高め合う場所になっていけばいいなと思います。<終>



