現役大学生作家・桜木シンさんに聞く、「デジタル×シナリオ」で生まれる世界
桜木 シンさん
2022年度入学

2024年9月20日(金)に初の書籍『Live On Stage!』を刊行し、デジタルハリウッド大学(DHU)在学中に作家デビューを果たした桜木シンさん。高校生時代、劇作家の夢を夢見た少年が部活のセンパイに再会することで、劇作家の夢を再び追いかけ始めるという青春ストーリー。桜木さん自身の舞台演劇の脚本を担当した経験から生まれたそうです。
今回のインタビューでは、桜木さんの幼少期の話や、舞台脚本を通して創作活動を始めた学生時代、DHUだからこそ得られた「学び」、作家デビューまでの道のり等についてお話を伺いました。
桜木シン (サクラギシン) (著/文)
東京都荒川区生まれ。幼少から日本語の美しさに魅了される。多くの事柄に興味を抱き、地球史・人類史・神話を独学で追い求める。その後声優を志すが、舞台脚本を担当したことで日本語の美しさに再度魅了され、作家の道を選ぶ。現役大学生。
幻冬舎ルネッサンス:2024年9月20日発刊
<ストーリー>
不器用だって、泥臭くたって、あきらめない。この景色を見せるって君と約束したから。うだつの上がらないフリーター、一宮コウスケは高校時代、演劇部で青春を共にしたツバサ先輩と再会する。ツバサ先輩に背中を押されたコウスケは、劇作家の夢を再び追いかけ始めるが……。瑞々しい筆致で描かれる青春ストーリー!
幼少期からあった文章への「思い」
——幼少期から書くことに対しての興味があったとお聞きしました。
知りたいって思ったことには、もうそれ以外のことは考えられなくなる程、夢中でバーって調べ尽くして、今の段階でわかる最後の部分にいくと、 もう急に冷めちゃって、次に移るっていうのを繰り返していました(笑)。
小学校の時、国語の授業で作文をするじゃないですか。 自分の中でそのキャラクターを作ったりとか、その役を、 私の書き方なんですけど、役を降ろして自由に喋らせるっていうやり方がその時からすごい楽しくて。なんかいつの間にか趣味みたいな感じになってましたね。
——登場人物も桜木さんがオリジナルで考えたものですか?
そうですね。当時、記憶に残っているのは、「はやぶさ」の帰還について作文を書いた時のことです。ニュースでは単調なプロジェクトとして紹介されていたけれど、私はその背後にあるドラマを描きたくて。相模原のJAXAに取材に行ったりして、子供ながらに夢中になって書きました。

——子どものころから、調べることや知識を深めることが楽しかったということですが、具体的にどんなころに興味を持っていましたか?
小さい頃から興味の幅が広く、何事にも没頭するタイプでした。例えば、上野の科学博物館で恐竜を見て地質学に興味を持ち、そこから天文学やギリシャ神話にまで行きついて。全く別の分野でも、意外に繋がりがあったりして、そういった発見が楽しくて。知識がどんどん広がっていく感覚がたまらなかったですね。
——特に影響を受けた作品があれば教えてください。
いくつかあるんですが、特に印象に残っているのはPixarの『カーズ』ですね。物語の中で、年齢を重ねてもなお輝き続けるキャラクターが登場するのが衝撃的です。若者が活躍する物語は多いけれど、『カーズ』は老いてもなお成し遂げる力を持ったキャラクターが描かれていて、その考え方が自分に強く影響を与えました。
——年齢を重ねることに対して、ネガティブなイメージを持たず、むしろポジティブに描くその作品からインスピレーションを得たわけですね。
まさにその通りです。それをきっかけに、若者だけではなく、経験を積んだ大人や年齢を重ねた人が活躍する物語を書きたいと思うようになりました。自分が年齢を重ねたときも、若者たちに負けず、面白い存在であり続けたいですね。老いた時にそういった人物像になりたい。このまま作家を続けて40代、50代とかになった時に、若者たちから見て面白いおっちゃんでありたいんです。
文学部ではなく、DHUを選んだ理由

——そんな桜木さんの進路選択についてもお聞きします。もともとは役者を目指していたとお伺いしました。
高校時代に役者を目指していたんですが、自分で舞台を作って脚本を書いたときに、日本語の面白さに目覚めたんです。行間を使って感情を表現できること、これが日本語ならではだと思って。そうなると、単に文学を学ぶだけではなく、映画やゲーム、映像など、いろいろなメディアを通じて表現を深めたくなったんです。
——なるほど。その中でデジタルハリウッド大学に決めた理由は?
さまざまな分野の人たちが一緒に学んでいるという点が大きいです。CGデザイナーやプログラマー、映像作家、ゲームデザイナーなど、異なる分野の人たちと一緒に学び、彼らのアプローチや考え方を知ることができる環境が魅力的でした。いろんな分野の人が一同に介している、自分の視野が広がりそうだと思ったんです。机を挟んで、まったく異なるジャンルに詳しい人が同じ環境にいるこの場で学びたいと思ったんです。
——入試についても、覚えていることがあれば教えてください。
実は一度目の受験時、サマー・トライアウト(現:オータム・トライアウト総合型選抜)で落ちてしまったんですが、ただただ「入りたい」の一心で再挑戦して、無事合格しました。3分間の自己PRでは漫談を披露して、面接官の方から「君、面白いね」と言われたのが印象に残っています。
——自分の個性を前面に出して挑戦した結果、成功につながったということですね。その後、大学での学びや創作活動の中で、特に印象的だったことはありますか?
さまざまなジャンルの人たちと一緒に学ぶことで、自分が普段考えていないアプローチを知ることができたのが大きな収穫です。特に、シナリオや脚本を学ぶ授業で、映像制作の方法や物語の作り方を深く掘り下げることができました。先輩でも俳優を目指している方がいたり、シナリオを書いていたり、1つのジャンルでも学生でそれぞれ表現の仕方が違うのでインスピレーションを得られて、楽しいなと思います。
——桜木さんが本格的に作家としての道を歩み始めたきっかけは、「シナリオクリエイティブ」の授業で書いたシナリオがきっかけだと伺いました。
はい。先生にも添削をたくさんいただいたシナリオをきっかけに、ある出版社の担当編集者に見てもらえることになり、そこからプロの作家としてデビューすることになりました。最初は自分の書いたものが評価されるとは思っていませんでしたが、同級生が学生向けのコンテストなどで結果を残しているのを見て、負けたくない、自分の「武器」になるものを作りたい、と思っていました。担当の編集者から面白いと言ってもらえたことで、書き続けようという気持ちが強くなりました。
——そのシナリオの中で、特に印象的なエピソードやテーマがあれば教えてください。
自分自身が高校生時代に役者を目指していたという構想や目線を取り入れています。 今回の作品の主人公は25歳のフリーターなのですが、私自身も一度役者を目指して挫折した経験があるので、役者と脚本家という二つの視点から物語を考えました。一般的なエンタメ作品にはないような視点で、役者や脚本家の気持ちをリアルに描くことができたのは、私自身の経験から来るものが大きかったと思います。
デジタルコンテンツ×シナリオ|「日本語」という言語の可能性を突き詰めていく
——今後の目標や展望についてお聞かせください。
作家として、そして年齢を重ねてからも面白い存在であり続けることが目標です。将来的には自分の作品を通じて、老いてもなお輝くキャラクターや物語を描いていきたいですね。また、デジタルコンテンツを学んでいるので、今後は映像やゲームのシナリオも手がけていきたいと考えています。自分が手がける作品が、より多くの人に届くことを目指して、日々創作活動に取り組んでいきたいと思っています。
——最後に、DHUへの入学を目指していて、桜木さんのように「何かを作りたい」高校生に向けてメッセージをお願いします。
生真面目にならないことですかね。作ることって、厳しくもないし甘くもないんです。だからこそ自分の意見をちゃんと持っておいた方がいいんじゃないかな。なあなあで流されてやってしまうと、いわゆるテンプレートで、型に収まるようなものしか作れない。そこから一歩踏み出すためには、自分の思想や首長みたいなものを持ったうえで、相手に伝えるためのスキルを身につけるといいと思います。
DHUの授業って「これについてどう思う? 」って聞かれることがめちゃくちゃ多いんです。なので、自分の思ったことを三行でまとめる練習をしておくとか、ですかね。それを続けていくと、例えば入学後に仲間を集めて「一緒に何か作ろうよ」ってなった時に、自分が感じたことを素直に言えるようになります。
あと、「自分は何も持ってないな」とか「自分のやってることってまだまだだな」って思ってると、周りに引け目を感じちゃうし、どこかで対等に話せなくなったりとか、自分の意見を言えなくなっちゃったりもしますよね。自分の作品に自信が持てなくていいので、自分の意見さえしっかり持っておく。それさえあれば、大学生活も楽しくなるんじゃないかなと思います。
——ありがとうございました!