「興味があるなら、少しでも早く」。映画制作の現場でインターンを経験した遠藤さんが語る、単位認定型インターンの魅力
遠藤百華さん
2022年度入学
DHUには、60時間以上の就業体験とレポート・自己学習により1単位として認められる「単位認定型インターンシップ(最大4単位)という独自のプログラムがあります。これまでに、UUUM株式会社、株式会社博報堂プロダクツ、特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)など、“クリエイターで知らない人はいない“とも言える企業にご協力いただき、多くの学生がインターンシップを経験してきました。
今回インタビューしたのは、とある映画制作の現場でインターンシップを経験した遠藤百華(えんどうももか)さん。なぜ2年次でインターンシップに参加することを決意し、どんな学びを得たのでしょうか?
“やりたいことがない”と悩んでいたとき、夢中になれたのが映像制作だった
――遠藤さんが映像制作に興味を持ったきっかけを教えてください。
初めて映像を作ったのは、高校2年生のとき。文化祭の出し物で映像作品を作ることになり、その監督を担当したのがきっかけでした。
監督を立候補で募ったのですが、誰もやりたがらなくて。なんとなく「やってもいいかな」と思って手を挙げました。ただ、それまでに映像を作ったことはなく、経験と言えそうなものは友だちの誕生日に写真をつなげたスライドショーを作ったことくらい。ツールの使い方も構成の仕方もまったくわからないところからのスタートでした。
――それでも文化祭はうまくいったのですか?
はい。監督という役割はあったものの、企画のアイデア出しは役割に関わらず皆で行い、脚本や撮影も協力して考えながら進めていきました。担任の先生の専門科目が国語だったので、和歌をテーマの作品を作り、良い作品に仕上がったと思います。
――それを機に、映画制作を専門的に学ぼうと決めた?
映画に限らず、映像というか、芸術というか、表現することに興味を持ちました。今までなんとなく生きてきたから、自分が何をしてこれから生きていくべきなのかまったく見えていなかったのですが、「これだ!」という感覚になりました。
現場を見てみたい一心でインターンへ応募
――遠藤さんが参加したインターンについて、概要を教えてください。
今回わたしは、2023年7月下旬から8月末にかけて行われた「単位型インターンシップ」を活用し、「映画スタッフ育成事業(https://vipo-cinema-intern.jp/overview/)」の映画制作現場でのインターンに参加しました。単位型インターンシップとは、インターンシップで学びを得ながら単位ももらえるもので、夏休みの期間を活用して参加しました。
――本募集をどのように知りましたか?
大学のシラバスや時間割がまとめてある「デジキャン」というサイトにインターン情報も掲載されていて、そこで初めて目にしました。
もともと「いつか映画制作の現場を見てみたい」と思ってはいたものの、映画の現場は拘束時間が長く大変という噂も聞いてましたし、課題や授業のことを考えると長期で参加するのは難しいなと参加まで至らずにいました。
ですが今回の募集はちょうど夏休み期間だったので、自分でスケジュールをやりくりすればなんとかなるかもしれないなと気になりました。ただ、それでもすぐに乗り気になったわけではなくて…。
――というと?
映画に限らず、撮影現場は監督や関わる人によって大きく雰囲気は変わるものだと思っていました。現場の雰囲気が自分に合うかも不安でした。だから監督やプロデューサーさんの過去の作品を調べて見たり、インタビュー記事を読んだりしました。作っている作品の雰囲気とか、話す言葉を見て自分と合いそう、会ってみたいと思って申し込みました。
――初めてのことはなんでも勇気がいりますよね。ためらいつつも、一歩踏み出せたのはなぜだったのでしょうか。
現場に行ってみたい、その気持ちが大きかったことが理由です。大学で映像制作を学び続けてはいたものの、生きた学びは現場に出なければ得られないということはなんとなくわかっていました。今はSNSで自分から現場を探すこともできるのですが、商業映画はなかなかなくて…。
学校がインターンの募集を出しているということは、あちら側もインターン生を必要としているということ。それならこのチャンスを逃すわけにはいかないと思って、思い切って応募しました。
――面接はどのように行われましたか?
プロデューサーの方お二人と、事務局の方、大学担当者も同席して複数名お話しました。緊張するかも…と思っていましたが、おふたりとも優しかったのでまったく緊張せず、なぜインターンをしたいのか、好きな映画はなにか、将来映画の業界でどんなものを作っていきたいかなどを伝えました。また、いくつか募集部署がある中で、今回は美術部を希望していることも強く伝えました。
技術はもちろん、人間力も学びに
――インターン期間中に担当していたお仕事を教えてください。
希望通り美術部を任せてもらうことができ、インターン期間中は担当の美術さんと一緒に動いていました。撮影が始まるまでの準備期間は、小道具を作ったり、部屋の柱の塗装をしたり。撮影が始まってからは、「ここを直してほしい」と言われたら走って直し、そのシーンで必要なものを運び……。そんな仕事をしていました。
すでに制作のすべての工程が終了しており、試写も見ました。やっぱり自分が作ったものや触ったものが映画の中に登場しているのは感慨深かったです。
――インターン中、印象的だった出来事はありますか?
技術的なことでいうと、シーンのつながりを意識する重要性を学べたように思います。映画の撮影では、1回撮り直しをするごとに動いてしまったものを元の状態に戻す必要があります。元に戻すとき前後がどういうシーンになるのかを意識しないと、流れに違和感が出てしまうことがあります。
また、美術部として動ける人が3~4人いるからこそ、このシーンでは誰が動くべきなのかを考える必要もあって。今自分が動くか動かないか、自分で考えて動くべきときもありました。判断力の感覚も少し掴めたと思います。
また、監督の人との関わり方から学ぶこともとても多かったように思います。インターン期間中、ほとんど毎日ロケバスで渋谷まで帰っていて。監督は前の方の席に乗っていたのですが、私たちインターン生の方を見ながら、業界のこと、作品のこと、いろんなことを話してくれました。監督は現場でも相当神経を使っていて疲れているのに、私たちにちゃんと向き合ってくれているのがすごく嬉しかったです。
監督がコミュニケーションを大切にしているのは現場の様子からも伝わってきました。毎日ほぼ全員に声をかけ、気遣いをしたり、場を和ませたり。技術的なことももちろんですが、人間力についての学びが大きく、今後自分が監督をするときにも同じようなふるまいをしたいと強く思いました。
――スケジュールのやりくりはどのようにしていましたか?
今回の撮影期間はほとんどが夏休みと重なっていたため、スケジュールのやりくりには苦労しませんでした。紙派なので、手帳でスケジュール管理をしていました。朝早いですが、夜も21時ごろには終わっていたので、規則正しく生活できていました。
インターンでの学びを、自らの作品へ
――今回のインターンの学びは、今後の作品作りに生きそうですか?
はい。今回初めて生の制作現場を見られたことで、本当にたくさんの学びがありました。インターンで経験したのは美術部でしたが、何よりも、現場で監督の動きをそばで見られて、人間性を含め「自分もこうなりたい」「こんな風に仕事をしたい」と思えたことが収穫です。
今は自主制作映画(https://camp-fire.jp/projects/view/729508)の撮影を追え、編集作業中です(2024年2月現在)。テーマは「東日本大震災」。6歳のときに被災を経験し、ずっと「震災をテーマにした作品を作りたい」と思ってきました。
インターンで学んだコミュニケーション力を生かしながら、良い作品を作っていきます。
――最後に、インターンへの参加を考えているDHU生に向けて、メッセージをお願いいたします。
震災を経験したこともあり、わたしは幼いころから「人生には何が起こるかわからない」「今生きているのは当たり前じゃない」と思って毎日を送ってきました。だから、やりたいとおもったらすぐに行動するようにしています。後悔しないように、なるべく早く。
今回は2年生でインターンを経験しましたが、1年生のうちに行っておけばと後悔の気持ちも持っています。1年早かったらもっと良いものを早く得られたのかも…って。だから、映像や映画に興味がある人なら、必ず行った方がいいと思っています。
わたしは今回のインターンで監督と出会え、現場を自分の目で見られたことで、映像で生きていきたい気持ちがより強くなりました。また、インターンで出会った方に、今現場に呼んでいただいたりもしています。少しでも興味があるなら、行ってみると良いと思います!