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EdTech(エドテック)とは?教育現場での導入メリットについて

新たなテクノロジーの開発や、それに伴う進化・発展が続く現代において、さまざまな産業や分野がそれらを取り入れることで多くのイノベーションを起こしています。「EdTech(エドテック)」もまた、テクノロジーにより教育産業に新たなイノベーションを巻き起こしつつある取り組みの一つです。一時的な盛り上がりではなく、今後もさらに注目を集め、避けては通れないものになることは間違いありません。ここでは、そんなEdTechの概要から教育への影響、特に現在の教育現場における課題へのアプローチや導入によるメリットにフォーカスしながら解説していきます。

<目次>

1. EdTechとは?

教育(Education)とテクノロジー(Technology)の2つの単語を合わせたものが「EdTech」です。ITやICTなどをはじめとしたテクノロジーを用いて教育産業の新たな形を生み出そうとする試みや、関連する事業やツールなどを総称しEdTechと呼んでいます。この言葉そのものが非常に広い意味を持っており、認知の広がりを見せているAIやVRなどに加え、多くの人が暮らしの中で日々活用しているアプリケーションやソフトウェア、さらにはスマートフォンやタブレットなどの端末もEdTechのツールに含まれます。

日本国内におけるEdTech関連のサービスには、受験用アプリやオンライン英会話サービス、学習記録ツールや自動採点システムなどがあり、さまざまなものが実用化され広く活用されています。個人で使えるものから学校、あるいは企業の人材育成で活用されているものなど多岐に渡り、すでに何かしらの形で触れている人も決して少なくはないでしょう。また、導入費用や利用料なども、無料のものからサブスクリプションタイプのものまでさまざまです。こうした非常に幅広い概念やサービスとして捉えられるEdTechは、教育という領域において新たな価値観を生み出すことが期待されています。

2. EdTechの広がりと市場規模

教育分野においては、テクノロジーの積極的な導入や活用が諸外国と比較しても遅れているという指摘のある日本ですが、国としてはすでに、教育機関等へEdTechツールの提案や導入を行う事業者に対する補助金制度を整えています。EdTechに関連したコンテンツやプラットフォーム、支援ツールなどを合わせると、その市場規模はすでに2000億円を超えていると言われており、今後はさらにこの市場規模が拡大し、EdTechが広がりを見せていくことは間違いないでしょう。

EdTechにより期待されていることの一つに、受動的に学んでいた生徒が主体的に授業に参加し、学ぶことそのものを楽しむようになる変化があります。科学(Science)、技術(Technology)、工学・ものづくり(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)という5つの分野からなる「STEAM」という教育方針、あるいは教育概念が注目を集めていますが、これがまさにEdTechにより実現する未来の教育の姿といわれています。子供の好奇心を掻き立て、創造性を育むことができる、そんな教育へと移行していくことが予想されているのです。

3. EdTechで教育はどう変わるのか

EdTechは、これまでの教育を根本的に変える可能性も秘めています。特に従来の学校現場では、1人の教師が数十人の生徒を担当し、学習指導要領や教科書などの教材に沿って画一的な授業を行ってきました。生徒は学校側に振り分けられた教室に通い、クラスごと、もしくは教科ごとに同じ教師から学んでいましたが、EdTechがさらに進むことで、生徒が授業や先生、学習内容を選択できる未来がやってくるかもしれません。同じ場所に数十人の生徒を集めて行っていた一斉授業の機会が減り、個別指導に近い形での学習環境が当たり前になることも十分に考えられます。こうした変化により、教える側も広く浅くではなく、より専門的な授業が行えるようになるでしょう。

現状の教育現場での課題

現在の教育現場では、授業の準備や書類の作成、会議や部活での指導などを日々こなさなければならず、教師に大きな負担がかかっており、しばしば生徒と丁寧なコミュニケーションが図れない状況にあります。1人の教師が数十人の生徒の感情や思考を読み取ることは難しく、それぞれの生徒に対して適切な対応ができていない教師が多数いることも課題の一つです。画一的な授業により、生徒のレベルに合わせた授業が行えず、生徒に学習の意欲を持たせる難しさも課題とされています。授業についていけない生徒はそのまま進学してしまい、能力の高い生徒は先へ進めず成長が阻害されているという問題点も指摘されています。

さらに日本の教育分野全体を見渡してみれば、教育格差の問題もあります。都市部と地方では存在している学校・塾などの数や質に差があり、地方は都市部と比べて選択肢が少ないため、教育格差が生じやすいことは否めません。教育格差は日本にとって大きな損失であるため、EdTechの導入や普及による課題解消へ向けて早急に動き出す必要があります。

EdTechで解決できる課題1. オンライン学習

インターネットに接続できる環境があれば、どこにいても授業が受けられるオンライン学習。EdTechの代表的な学び方の一つです。広く知られているのは、アメリカで誕生した「MOOC」でしょう。一流大学の講義をオンライン上で受講できるため多くの生徒が利用し、今や世界中に普及しています。単にオンラインで学べるだけではなく、条件を満たせば修了証の取得もでき、その後のキャリアにも生かすことが可能です。これほど大規模なものに限らず、一般的な学校や塾、予備校などでもオンライン学習を取り入れることができます。

オンライン学習は、教室で行う授業とは異なり、教師と生徒との物理的な距離が離れている点が大きな特徴です。教師は生徒の態度などに左右されることなく授業や講義に集中することができ、これは教師の精神的な負担の軽減へとつながります。生徒側は場所を問わずに学習できるため、地域による教育格差の解消が期待できます。また、好きな講師や講義を選択できることから、学習意欲を高めることにもつながるでしょう。

EdTechで解決できる課題2. アダプティブラーニング

各生徒に合わせたレベルや内容等で行う学習が「アダプティブ・ラーニング」です。学習の進捗状況や理解度などを記録できるツールや採点システムなどのEdTechツールを駆使することで、各生徒に合わせた授業を行うことが可能となります。1人の教師が数十人もの生徒の学習能力を細かく把握することは難しく、仮に把握できたとしても、それぞれに合わせた授業を個別に行うことは困難でしょう。アダプティブ・ラーニングにより生徒それぞれのレベルや苦手な箇所を的確に把握することができ、より能力を伸ばすために必要な学習をオーダーメイドで作り上げることも可能になるのです。

こうした学習の最適化は、教師と生徒の双方の負担を減らすことへとつながるでしょう。教育格差の是正にも役立ち、現在の教育分野における多くの課題を解決できる可能性を秘めています。また、学校教育に限らず、社員研修などにも活用可能です。教育の考え方を根本から変え、適切に活用することで個々の能力を最大限引き出すことができるようになるはずです。

EdTechで解決できる課題3. VR・ARを使った疑似体験学習

教師など教える側ができることには限界がありますが、こうした課題や問題は、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などのEdTechを用いることで解決できるかもしれません。VRは、専用のヘッドマウントディスプレイなどを装着することで、人工的に作り出された環境に入り込むことができる技術です。子供や初心者が体験することが難しい建築現場や災害現場での作業や危険な状況等を擬似的に体験することができます。普段は行くことが難しい宇宙空間や世界遺産へも、VRであれば行くことが可能です。やはり学校現場だけではなく、職業訓練や企業での研修など幅広く活用できる点も魅力です。

現実空間に人工的に作り上げたものを加え表現するARも、教育や学習のためのツールとして活用できます。VRのように自分が仮想空間に入り込む体験はできませんが、スマホやタブレットなどで動く教科書や絵本などを手軽に作り出せるため、子供たちの学習ツールなどとしては非常に有用です。これらも教育格差の是正や、学ぶ意欲の増進などに寄与してくれるでしょう。

EdTechで解決できる課題4. 効率的かつ個別最適な学習管理

アダプティブ・ラーニングのように、それぞれの生徒に合わせた授業や学び方ができるだけではEdTechを最大限実現できているとはいえないでしょう。教師用に作られた管理ツールなどを活用することで、適切な学習管理を実現し、無駄のない効率的かつ個別最適な学習環境を学ぶ側に提供し続けることが可能となります。

4. なぜ今「EdTech」なのか?

世界は日々めまぐるしく変化しているにもかかわらず、特に日本の教育分野は、そうした変化についていけていない現状があります。今後はAIなどのさらなる発達によって多くの仕事が人間の手から離れていくと考えられていますが、EdTechにより、そうした時代を生き抜く人材を育成するための教育へと移行する必要があるのです。国を挙げてEdTechの導入を促進していることからも、世界に遅れをとり続けるわけにはいかないという意思が見てとれます。日本全体が成長するためには教育格差の是正が必要不可欠であり、EdTechの積極的な活用を避けて通ることはできません。

日本が災害の多い国であることも関係しています。地震や台風、洪水被害などが頻発する日本において、そうした災害が起きた際にも子供たちの学びの場が確保されなければいけません。オンライン学習やスマホなどで活用できるシステムが普及することで、学校に集まることができない子供たちでも学習することが可能となります。個性が重視される時代になってきたことも、EdTechが注目を浴びている理由の一つです。これまでの画一的な授業には、個性を伸ばすこととは相反する側面があります。個々人が自分で考えながら、それぞれの特色を活かして働いたり活動したりしていくことこそ、これからの時代に求められていると考えられているのです。グローバル化が日々進んでいる現在の状況を見ても、今EdTechが注目されることは必然といえるでしょう。

eラーニング・ICT・MOOCとの違いは?

テクノロジーやインターネットを活用した学習システムやプラットフォームにはさまざまなものがあります。例えば、eラーニングやICT、MOOCなどです。eラーニングはインターネットを活用し学習するスタイルやシステムを指す言葉です。ICTは情報通信技術そのものを表し、MOOCは上述の通り、大規模なオンライン講座を指します。EdTechという概念や、それを実現するサービスやシステムの中に、eラーニングやICT、MOOCなどが含まれていると理解するとよいでしょう。

コロナウイルス蔓延による教育現場自体の変化が必要に

突如として世界をパンデミックに陥れたコロナウイルス。日本の教育現場も大きな影響を受け、子供たちは学校に通うことができないという状況に一時置かれてしまいました。もしすでにEdTechが普及していたらどうだったでしょうか。自宅でオンライン学習を受けることができ、授業が遅れることもなかったでしょう。オンライン授業を導入していた一部の学校とそれ以外の学校とで教育格差が生じたとの指摘もあります。今後はそのようなことがないよう、教育現場そのものに変革が求められているのです。

2020年プログラミング教育が必修化する

2020年から、小学校でプログラミング教育が必修化しています。プログラミングのスキルとともに思考力や創造性を育む目的がありますが、この考え方は、まさにEdTechがもたらすSTEAMの教育概念と共通しています。早い段階で自分の頭で論理的に考え、自由な発想を形にする能力を養うためには、こうした教育の必修化とともにEdTechのさらなる導入が欠かせません。今後はさらに最新のテクノロジーを用いた科目や学習が取り入れられていくことでしょう。

アダプティブ・ラーニングへの教育業界の関心が高まっている

関心や注目を集めているアダプティブ・ラーニングは、文部科学省も推進に力を入れており、今後は、より個々人の能力に合わせた学習に重きを置いた教育へと移り変わっていくでしょう。能力だけではなく、適正にも着目し学習を行える点もアダプティブ・ラーニングのメリットです。得意なことを伸ばすことで、才能を活かすための土台を作ることができます。優秀な人材を育てることを重視している教育業界では、特にアダプティブ・ラーニングを積極的に取り入れる必要があるため、さらに関心が高まっていくことが予想されます。

5. デジタルハリウッド大学における今後のEdTechの展望

2022年8月現在、デジタルハリウッド大学(DHU)の一部の科目では、オフライン(対面)とオンラインを組み合わせた「ハイブリッド型」授業や、どちらで出席するかを選べる「ハイフレックス型」授業を行っています。

コロナ禍から始まったハイブリッド・ハイフレックス授業ですが、DHUのテクノロジーに関する知見を活かして従来以上のクオリティを目指し、授業環境の改善(=教育DX)を続けています。

「教育DX」の最前線。アメリカ出身・英語教育コンサルタントがつくる理想の授業とは。

アナログ/デジタル/ハイブリッド。教師目線で考える、これからの教育のかたち

6. まとめ:EdTechがこれからの教育現場のスタンダードになる

世界ではすでにEdTechが当たり前のように導入され、さらに日々、進化・発展しています。日本においても、今後の教育現場においてはEdTechが当たり前のように導入されていくでしょう。テクノロジーを活用した学習が日常でありスタンダードとなる日は、そう遠くはありません。早くから取り入れることで世界に取り残されることなく、優秀な人材育成や個性・特色を伸ばす教育が可能となります。その恩恵は、日本にとっても個人にとっても計り知れないものとなるでしょう。

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