デジタルハリウッド大学の「いま」を伝えるキュレーションメディア  
デジタルハリウッド大学の「いま」を伝えるキュレーションメディア  
デジタルハリウッド大学の「いま」を伝えるキュレーションメディア  
デジタルハリウッド大学の「いま」を伝えるキュレーションメディア  
デジタルハリウッド大学の「いま」を伝えるキュレーションメディア  
デジタルハリウッド大学の「いま」を伝えるキュレーションメディア  

メディアアーティストとは?なり方や仕事内容、将来性を紹介

漫画、ゲーム、アニメーション。世界に衝撃を与えている日本のクリエイティブは様々ありますが、その中でも近年すさまじく勢いがあり、注目を集めている分野があります。

その分野とは、メディアアートです。落合陽一氏、真鍋大度氏など、天才と呼ばれるメディアアーティストが日本から続々と登場し、人々を「誰も経験したことのない世界」へと誘う圧倒的な表現力の作品を生み出し続けています。

この記事では、そのメディアアーティストとは一体何かをお話しします。難しい言葉の定義ではなく、実例を用いながら3つのポイントに絞って説明していきます。

<目次>

1. メディアアートとは

メディアアートとは、「一般的にはあるメディアそのものが作品の制作原理、もしくは作品の素材として用いられている表現を指す。一方で、明確な定義が共有されにくいために数多くの問題を生み出している用語である」と記されています(参考:現代美術用語辞典)。

その定義には様々な解釈があり、メディアアートとは何かを一言で説明することは困難です。そこでこの記事では、メディアアートを理解するためのポイントについて実例を用いながらお話します。

2. メディアートをざっくり理解するための「3つのポイント」

[1]テクノロジーの発明を伴うアート
お茶の間がざわついた、「リオオリンピック閉会式での8分間」

メディアアートをざっくりと理解するために、まずは作品をご覧ください。数ある日本のメディアアート作品の中でも、最も多くの人々が目撃したのは、「リオオリンピック閉会式での8分間」ではないでしょうか。

映像、ダンスとともに感動を呼び起こしたのが、緻密に計算されつくしたAR(拡張現実)の手法を用いた、テクノロジーによる演出です。

スタジアムの空間に、オリンピック競技の選手たちがまるで宙に浮いているかのように映し出されます。現実と非現実の境目がわからなくなるような、体験したことのない表現に「これは一体どうなっているの?」と不思議に思った人も多いと思います。

これがメディアアートです。テクノロジー自体を生み出し、それを駆使して、人々を「誰も経験したことのない世界」へと誘います。

作者の真鍋大度氏によると、このテクノロジーは「生放送の限界にチャレンジした」とのこと。あらかじめレーザースキャナーでスキャンしたスタジアムのデータと、リアルタイムでセンシングしたキネクト映像を融合させ、仮想空間を実現させるという仕組みで成り立っています。

これは非常に高度な技術で、前年の『SXSW』で披露されたPerfumeのライブで礎となる技術が使用されるなど、試行錯誤を繰り返す中でようやく確立されたものです。

(参照:デジタルハリウッド東京本校ブログ

このように、従来のアート作品とは一線を画し、アートを表現する「装置」自体のテクノロジーを創出するものを「メディアアート」と呼びます。

“現代の魔法使い”、落合陽一氏が発明した「触れる光」

日本を代表するメディアアーティストである落合陽一氏も、テクノロジーの発明を伴う数々の作品を世に送り出しています。“現代の魔法使い”と呼ばれ、テレビ番組への出演も多い落合氏は大変有名な方ですが、その作品を見たことはありますか?

ここでは落合氏の代表作の一つ、『Fairy Lights in Femtoseconds』を紹介します。フェムト秒レーザーという技術を使って、触ることができる小さな3D映像を空中に映し出すという作品です。

空中に3D映像が浮かぶというだけでも魔法のようですが、さらに自らの指でその映像を触り、形を変え、感触を得ることができるということに驚かされます。

これは、1000兆分の1秒のパルスレーザーを空気の一点に照射し、空気分子をプラズマ化して、3D映像を映し出しているとのこと。科学を勉強したことがない人にとっては難解ですが、その映像を実際に見ると、未来への想像が膨らみます。

こういったテクノロジーの発明により、未来にはまったく新しい形の映像や広告などのクリエイティブが生み出されていくのでしょう。

なお、落合氏はメディアアーティストとしてだけでなく、実業家としての活動や、次世代育成にも注力されています。本学デジタルハリウッド大学でも、客員教授として「メディアアート」と題する講義を担当されています。メディアアーティストを志す学生に大人気の講義です。

落合 陽一 客員教授 | 教員紹介 | 大学の特長 | デジタルハリウッド大学【DHU】

[2]インタラクティブ(双方向)なアート

メディアアートの類義語に、「インタラクティブ・アート」というものがあります。これは、観客を「参加」させる形式のアートのこと。たとえば観客の動作にセンサーが反応して作品が変化するなど、双方向性があるもののことをいいます。

インタラクティブ性は、メディアアートにおいて必須条件ではありません。しかし新たな表現を創出する上でインタラクティブ・アートは大変効果的な形式であり、多くの作品に用いられています。

ここではメディアアートにおけるメジャーな手法である、インタラクティブ・アートの事例について見ていきます。

チームラボによる、「全く新しいミュージアム」がお台場に誕生

「観客を参加させるインタラクティブ・アート」と言うと、チームラボの存在を思い浮かべる方も多いかもしれません。

チームラボは“ウルトラテクノロジスト集団”として、観客が参加して楽しめるインタラクティブなアートを創り出し、子どもから大人まで魅了しています。『お絵かき水族館』で、自分の描いた魚が目の前で泳ぐという体験に衝撃を受けた方もいるのでしょうか。

そんなチームラボが2018年6月、森ビルとともに全く新しいミュージアム、『MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless』をオープンしました。オープン当初から入場チケットは完売、週末には大混雑の人気施設です。

10,000㎡の巨大空間のキーワードは、「ボーダレス」。展示作品は他の作品との境界がなく、コミュニケーションし、時には融合します。また作品と鑑賞者との境界もないため、この世界に没入し、さらには自分と他者との境界すら連続的なものになっていきます。

ボーダレスで、インタラクティブな新しい体験を創り出す「全く新しいミュージアム」は、2020年に世界中から人々が集まる東京にとって、力強い求心力となるでしょう。

O l g a氏が開発した「抱き合うと光る、インタラクティブな服」

インタラクティブなメディアアートのもう一つの事例として、本学デジタルハリウッド大学大学院の修了生であるO l g a氏の作品を紹介します。

「Fashion×Technology」をテーマにするデザイナーであるO l g a氏は、自身が代表を務めるファッションメゾンEtw.Vonneguetにおいて、『「 – A – C – T – (アクト)」ぼくらの「いいね!」が見える服』を開発しました。

この作品は、「複数人のコミュニケーション行動、抱き合う、肩を組む、ハイタッチするなどのアクションをトリガーとした、光るスマートコミュニケーションウェア」をコンセプトにしており、音楽イベントやフェスで、いかにもっと楽しめるかを考えて作られています。盛り上がった時、会場にいる誰もが、喜びを分かち合う行動をとることで、いいね!という共感を視覚的に表現することができます。

この事例のように、メディアアートはもはやクリエイティブ業界のみならず、ファッション業界をはじめとしたあらゆる領域に進出しています。「誰も経験がしたことのない世界」へと誘う、あらゆるジャンルの作品が、今後も日本から生まれ続けていくことでしょう。

[3]現実社会に異質な問いを投げかけるアート

メディアアートをざっくりと理解する上で重要なポイントの3つ目は、「社会に対する問題提起があること」です。

クリエイティブ作品の価値には二種類あります。一つは「既存の問題を解決するもの」、もう一つは「まだ人々に認識されていない問題を提起するもの」で、メディアアートは後者の位置づけにあります。

いま、社会に対する異質な問いを投げかける作品を生み出している日本人アーティストの存在が、世界的に注目を集め、評価を得ています。

世界的イベント『アルス・エレクトロニカ』における、日本人アーティストの存在感

アルス・エレクトロニカ(Ars Electronica)は、オーストリアのリンツで開催される、芸術・先端技術・文化の祭典で、メディアアートに関する世界的なイベントです。

ここでは、毎年メディアアートに革新をもたらした方々が表彰されており、中でもグランプリは「コンピューター界のオスカー」とも呼ばれています。日本からも、坂本龍一氏、岩井俊雄氏など、過去に多くのアーティストが表彰されました。

2018年のアルス・エレクトロニカでグランプリを受賞したのは、ベルギーのアートデュオLarbitsSistersでした。その作品は、大企業への富の集中に対する仮想的な徴税システムを可視化したインスタレーションで、まさに社会への問題提起を行うメディアアートです。

佳作・栄誉賞には、多くの日本人アーティストが選出されました。古い電化製品を電子楽器として蘇生させた“扇風機バンド”の『エレクトロニコス・ファンタスティコス!』や、市原えつこ氏による、家庭用ロボットに3Dプリントした故人の仮面をつけ、故人が憑依したかのように再現する『Digital Shaman Project(デジタルシャーマン・プロジェクト)』などが注目を集めました。

これらの作品に代表されるような、現実社会に異質なものを投げつけるメディアアートが日本から続々と生まれており、それらは世界最高峰の祭典においても大きな存在感を放っています。

日本では今、次世代のメディアアーティストが続々と育っています。2020年のオリンピック・パラリンピックとその先に、東京がよりクリエイティブな文化都市へとステップアップすることを目指して、多くのアートイベントや作品公募が実施されていくことも、次世代のメディアアーティスト育成の後押しになるでしょう。

これからも、現実社会と対峙しながら、新しい表現を追求し続けるメディアアーティストの活動から目が離せません。

3. メディアアーティストの仕事内容

難解なメディアアートという言葉について、ざっくりとご理解いただけたでしょうか。それを生み出すメディアアーティストの仕事についても、その内容は様々であり、一概に説明することはできません。

しかし共通して言えることは、メディアアーティストは表現者であると同時に、技術者であるということです。アイディアを生み出す発想力に加えて、それを具現化していくための技術を扱うスキルが求められます。最新テクノロジーへの知見はもちろん、プログラミングなど工学分野のスキルが欠かせません。

アートとテクノロジーを柔軟に融合させ、新しいコンテンツやサービスを企画・開発し、研究を重ね、実装していくことが、メディアアーティストの仕事です。その過程には様々な領域の専門性が必要となるため、個人ではなくチームで取り組む場合が多いです。

4. メディアアーティストの将来性

メディアアーティストは、天才と言われるパイオニアが道を切り開いている段階にあり、まだ職業として十分に確立しているとは言えません。そのため将来性については未知数ですが、既に世界で起きているインパクトの大きさから見れば、これからの時代に無限の可能性を持つ職業と言えます。

現在活躍中のメディアアーティストに憧れ、この道を志す若者が増えています。本学をはじめ、メディアアーティストを育成する大学も登場しており、知見を体系的に学ぶことができる環境が整い始めていることも、この流れを加速していきます。

情報にあふれた時代において、人々を驚かせる圧倒的な表現力をもつメディアアーティストは、あらゆるビジネスで強く求められ、世界中に活躍の場が広がるでしょう。

5. まとめ

常に時代の先端を切り拓く、メディアアート。その言葉を聞いたことがなかったという方も、今回取り上げたような事例を通じて、知らないうちにメディアアートの世界を体験していたかもしれません。

「誰も体験したことがない世界」を創りたい。そんな想いを抱く人には、この上なく相応しいクリエイティブのジャンルです。日本に数多いる素晴らしいメディアアーティストの作品に触れ、刺激を受けながら、ご自身の作品制作に挑戦してみてはいかがでしょうか。

デジタルハリウッド大学の学びの特色

VRやプロジェクションマッピングなど、新しいメディア表現やコンテンツを研究し、創造、開発する

関連する記事はこちら

More