プロジェクションマッピングを勉強するには?仕組みを紹介
建物などの物体に、プロジェクターを使って映像を投影する「プロジェクションマッピング」を見たことはありますか?
デジタルアートミュージアムなどで、実際に体験したことのある方も多いでしょう。けれども実際にどうやって作られているのか、その仕組みを理解している方は多くはないかもしれません。
この記事では、プロジェクションマッピングとは何かを説明しながら、その仕組みや習得すべきソフトについて紹介していきます。
<目次>
1. プロジェクションマッピングとは?
プロジェクションマッピングとは、プロジェクターを使用して空間や物体に映像を投影し、重ね合わせた映像にさまざまな視覚効果を与える技術、およびパフォーマンスのことです(参照:IT用語辞典)。
その最大の特徴は、映画のスクリーンなどとは異なり、凹凸のある立体物に映像を張り合わせて投影するという点です。これがうまく機能すると、たとえば建物を変形させたり、キャラクターを登場させたりと、現実ではあり得ないような動きを表現して驚きを与えることができます。
実際に作品を見てみましょう。本学デジタルハリウッド大学の卒業生であり、映像デザイナーとして活躍する松本豊さんが、「東京国際プロジェクションマッピングアワードvol.2」にて最優秀賞を受賞した作品です。
息を飲むような美しさですね。東京ビッグサイトのユニークな形状の建物と、大迫力かつ繊細に躍動する映像、そして音楽が見事に調和して、非日常を演出しています。
この作品は、一体どのような仕組みによって作り出されているのでしょうか? 次の項目で説明していきます。
プロジェクションマッピングはどんな仕組み?
プロジェクションマッピングは、対象の形状に合わせた映像を、専用ソフト・アプリ・メディアサーバー等を使用しながら立体物にマッピング(貼り付ける作業)を行い、プロジェクターで投影したものです。
映像制作、貼り付ける作業(マッピング)、そしてプロジェクション(投影)と、3つの工程を経てプロジェクションマッピング作品が完成します。
松本豊さんのプロジェクションマッピング作品も、そのような工程で作られています。東京ビッグサイトの特徴的な建物の形状に合わせて映像を作り、マッピングを行い、それをプロジェクターで投影しているのです。
その具体的な制作工程について解説した記事が、映像制作ソフトCinema 4Dを展開しているMAXON JapanのWebサイトに掲載されておりますので紹介します。制作ソフト使用中の様子から、制作にあたって気をつけたことなど、詳細なインタビューが掲載されておりますのでぜひご参照ください。
▼ 東京国際プロジェクションマッピングアワード 2年連続で最優秀賞受賞
松本豊氏 インタビュー
プロジェクションとは?
そもそもプロジェクションとは「映写・投影」のこと。制作した映像を、プロジェクターなどの機材を通じて対象物に映すことを指します。
建物などの立体物だけでなく、映画館のスクリーンに映像を映すことや、講義でパワーポイントを投影することも、プロジェクションに当たります。
マッピングとは?
マッピングは、「貼り付ける、割り当てる、位置付ける」を意味します。
プロジェクションマッピングにおいては、投影を行う対象物の形状に合わせ、映像を貼り付けていくことが必要です。この作業を「マッピング」と呼んでいます。
ちなみに、平面の壁に映像が投影されたものがプロジェクションマッピングと呼ばれることがありますが、これは誤りです。投影する対象物の形状に合わせてマッピングを行うことが、プロジェクションマッピングの必須要件であり、その作業がないものは「プロジェクション」となります。
2. プロジェクションマッピングに必要な機材
プロジェクションマッピング作品を制作するにあたって必ず必要になる機材を紹介します。いずれも馴染みのある機材ですが、その概要について簡単に説明します。
パソコン
パソコンは、作品制作にあたってまず必要となる機材です。投影する映像の制作、そして再生のために使用します。
専用のパソコンを入手する必要はありませんが、映像制作や投影を安定した環境で行うためには、ある程度以上のスペックのパソコンが必要となります。
特に映像制作においては、グラフィック制作、CG制作、レンダリングなどの複数の作業を、一台のパソコンで同時進行で進めることが効率化につながります。そのためクリエイター向けのCPUやメモリを完備したパソコンを使用することをおすすめします。
プロジェクター
プロジェクターは、映像を対象物に投影するための機材です。ホームシアターなどで使用される一般のプロジェクターも、プロジェクションマッピングに活用することができます。
ただ、投影距離、対象物の大きさ、設置場所の明るさなどの条件によって適切な機種は異なります。家庭用からハイスペックなものまで、さまざまなプロジェクターがあるので、作品の条件によって機種を選びましょう。
3. プロジェクションマッピングの代表的なソフトウェア
作品制作にあたっては、プロジェクションマッピング専用のソフトを準備する必要があります。専用ソフトを使用することで、複数の映像をリアルタイムに管理しながらスムーズに投影を行うことができます。
数々のソフトがありますので、代表的なものをいくつかピックアップして紹介します。
MadMapper
世界最大シェアのソフトウェアです。プロも使用する高機能のソフトでありながら、シンプルでわかりやすいことが人気の理由です。
具体的には、複数の映像をリアルタイムで管理できたり、自由に映像の加工ができたりと、操作性が優れていることで知られています。
使いやすく価格も手頃なため、多くのクリエイターから支持を得ています。
Resolume Arena
オランダのResolume B.V.が制作している高性能のソフトウェアです。ResolumeにはAvenueとArenaの二種類があり、AvenueがVJソフトウェア、ArenaがAvenueの機能に加えてプロジェクションマッピングを行う機能を備えたものです。
映像をネットワークを通じて他の端末で再生できるメディアサーバー機能を包括しています。映像と音楽を楽器感覚でリアルタイムに操作でき、ライブパフォーマンスを中心に活用されている人気のソフトです。
高度な操作が求められるためプロ向けのソフトであるものの、日本語ガイドページやチュートリアル動画などのサポートが充実していることも特徴です。
Optoma Projection Mapper
簡単にプロジェクションマッピングが作成できるソフトとして、Optoma Projection Mapperがあります。iPadやiPhoneのデバイスで操作できるアプリで価格も安価なため、初めてプロジェクションマッピングに挑戦する方におすすめです。
気軽に使うことができ、初心者が仕組みを理解するために試してみる際に最適ではないでしょうか。ただ大規模なプロジェクションマッピング作品には向かないので、知識を身につけた後は他のソフトも挑戦してみましょう。
https://itunes.apple.com/jp/app/optoma-projection-mapper/id1136686918?mt=8
LAMP(ランプ)
「プロジェクションマッピングを全ての人の手に。」をキャッチフレーズに、株式会社アイデアクラウドが開発したアプリ「LAMP(ランプ)」も、初心者向けのソフトです。
専門知識がなくても直感的に操作ができるよう、機能を絞り込んでわかりやすくしていることが特徴です。さらに本格的なプロジェクションマッピング にも対応できる機能が備わっており、勉強だけでなく実用面でも活用できます。
また日本企業が展開しているため、インターフェイスもすべて日本語。英語や専門知識に不安がある方向けのソフトです。
4. モーショングラフィック作成ソフト
プロジェクションマッピングで投影する映像を作成するには、グラフィック制作ソフト(Photoshop, Illustratorなど)に加えて、グラフィックに動きをつけるモーショングラフィック作成ソフトが必要です。ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。
After Effects
最も主流のモーショングラフィック作成ソフトは、Adobe After Effectsです。文字や図形を動かしたり、特殊効果を足したりできる映像加工ソフトで、プロから初心者まで幅広い方々が愛用しています。
広く普及しているために、チュートリアルやプラグインも豊富で活用しやすいことがメリットです。同じAdobeのソフトであるPhotoshopやIllustratorとの連携もスムーズで、プロジェクションマッピング に取り組む方が習得すべきおすすめのソフトです。
https://www.adobe.com/jp/products/aftereffects.html
Apple Motion
Appleが提供するモーション・グラフィックス・デジタル合成ソフトです。簡単なアニメーションから、エフェクトを伴う複雑なモーショングラフィックスまで、幅広いジャンルの映像を作成できます。
After Effectsと比べると機能面では劣る面もありますが、MacでFinal Cut Proを使用している方は、スムーズな連携を通じて効果的に活用できるでしょう。また価格も比較的安価で入手可能です。
https://www.apple.com/jp/final-cut-pro/motion/
DaVinci Resolve 16
総合映像機器メーカーBlackmagic Design社より提供されているポストプロダクション・ソフトです。Adobe Premiere ProとAfter Effectsの連携で使える機能が詰まっており、モーショングラフィックスソフトとしても機能します。
機能面は充実していますが、操作面の難易度は高く、また一定以上のPCのスペックが必要となります。初心者よりも、編集に慣れているプロの方におすすめの高性能ソフトです。
https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/davinciresolve/
5. CGソフト
Cinema 4D
3DCGでのモーショングラフィックスに特化した機能が豊富で、使いやすいと評判のCinema 4D。After Effectsとの連携もスムーズで、プロジェクションマッピング のクリエイターの多くが愛用しているソフトです。
学生(非営利の場合)は、無償で最上位グレードのCinema 4Dを使用できることも大きな魅力です。
https://www.aanda.co.jp/products/cinema4d/
Maya
Autodesk社が販売する、ハイエンドで高機能な3DCGソフトです。プラグインは多くありませんが、既存のツールセットが充実しています。WindowsとMac OSの両方に対応し、3DCGソフトとして高いシェアを誇っています。
https://www.autodesk.co.jp/products/maya/overview
3dsMax
3dsMaxも、Mayaと同じくAutodesk社による高機能な3DCGソフトです。プラグインが豊富で、優れたアニメーション機能を備えています。ただ現時点でMac OSに対応しておらず、Windowsユーザー向けとなっています。
https://www.autodesk.co.jp/products/3ds-max/overview
Blender
無料で使用できるBlender。寄付によって資金を集めながら開発を続けてきたオープンソースのソフトのため、誰でも無料で全ての機能を使うことがでます。機能性や操作性も充実しており、モデリング、レンダリング、アニメーションなど、3DCG制作で必要なあらゆる機能を取り揃えています。
全てのOSや日本語にも対応し、チュートリアルも充実しています。初めて3DCGをに挑戦する人はまず試してしてみてはいかがでしょうか。
6. まとめ
感動と驚きの体験を提供できる、プロジェクションマッピング。体験する立場では、それがどのように作られているのかを想像することは難しいものです。しかしその仕組みを解きほぐすことで、意外とシンプルに構成されていることがわかります。
初心者であっても、映像制作とマッピングのソフトを一つ一つ習得していくことで、大規模な作品を制作できる可能性が十分にあります。プロジェクションマッピングを体験することが好きな方は、ぜひ自らも制作に挑戦し、人々に感動を与える側に立つという選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
デジタルハリウッド大学の学びの特色
ゲーム、アニメ、映画に欠かせない、高度な3DCG技術、VFX技術を身につける