デジタルハリウッド大学の「いま」を伝えるキュレーションメディア  
デジタルハリウッド大学の「いま」を伝えるキュレーションメディア  
デジタルハリウッド大学の「いま」を伝えるキュレーションメディア  
デジタルハリウッド大学の「いま」を伝えるキュレーションメディア  
デジタルハリウッド大学の「いま」を伝えるキュレーションメディア  
デジタルハリウッド大学の「いま」を伝えるキュレーションメディア  

アニメーターとは?なり方や仕事内容、将来性を紹介

0.まえがき

長い歴史のある日本のアニメ業界が、デジタル化の波によって転換点を迎えています。紙と鉛筆の代わりに、ペンタブレットを使って絵を描く「デジタル作画」が浸透し始め、それに伴いアニメーターの働き方が変わり始めています。

この記事では、アニメーターの仕事内容やアニメ業界の現状、また「デジタル作画」の浸透によってアニメ業界にどのような影響が起きているのかを解説します。

<目次>

1. アニメーターとは

アニメーターは、アニメーションの制作行程の中で、主に「作画」を担当する人を指します。

「作画」とは、アニメーション作品を構成する絵を1枚1枚描くこと。キャラクターや背景などの動きを、脚本や絵コンテに従って指示通りに描くことが、アニメーターの役割です。

2. アニメーターの仕事内容

アニメーターの仕事は、大きく2つに分けられます。「原画」を描く仕事と、「動画」を描く仕事です。アニメーションの中でポイントとなる絵のことを「原画」と言い、原画と原画をつないでなめらかな動きを与える絵のことを「動画」と言います。多くの場合、新人は「動画」からスタートします。

1つのアニメーションを作るために、何千、何万もの絵が必要です。そのためアニメーターには、画力や表現力はもちろんのこと、効率よく絵を完成させるスピードも求められます。

地道な作業の連続となりますが、アニメを愛する人にとって、自らの手で作品づくりに携われることのやりがいは計り知れません。チームワークで作品を完成させていく達成感を味わえること、その先に視聴者に感動を与えられることも、この仕事の大きな魅力です。

3. アニメ業界の現状

アニメーターの過酷な労働環境が問題に

アニメーターの仕事にはやりがいがある一方、その労働環境の過酷さが問題視されています。長時間労働や、低賃金についての報道を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

その背景として、アニメーターは多くの場合、個人事業主であることが挙げられます。アニメーターになるということは、制作会社のデスクを借りて仕事を請け負えるということであり、必ずしも社員として雇用されるわけではありません。個人事業主に労働基準法は適応されないため、長時間労働が発生しやすくなります。また給料は出来高制であり、新人アニメーターの報酬は「1枚あたり数百円」と言われています。作業スピードが上がらないうちは、生活していくことさえ困難な経済状況に陥ることも珍しくありません。

もちろん中には、アニメーターの正規雇用を行い、働きやすい環境を整えている企業もありますが、多くのアニメーターは個人事業主として目の前の作業に追われている現状があり、その過酷さによるアニメ業界の人材不足が懸念されています。

「デジタル作画」が存在感を増している

しかし今、アニメーターの仕事に一つの転換点が訪れています。紙に鉛筆で描く「アナログ作画」から、ペンタブレットなどのデジタルツールで描く「デジタル作画」にシフトし始めているのです。

「デジタル作画」とは、CLIP STUDIOなどのソフトを使い、液晶ペンタブレットに絵を描いて、それをデジタルデータとして保存し共有する作画手法です。動画用紙がペンタブレットに置き換わるのみで、絵を描く手法は「アナログ作画」と大きく異なりません。

この流れは、2017年ごろから顕著になり、現在は「アナログ作画」と「デジタル作画」の両方が入り交じって存在しています。まだ「デジタル作画」が少数派ですが、確実にその存在感を増しつつあります。新人アニメーターの採用においても、「デジタル動画」ができることを条件としている募集が増えています。新人はベテランに比べて会社の方針に合わせやすいため、これから「デジタル作画」に移行していく制作会社が多いことの現れと言えます。

デジタル化が一気に進んだ背景として、2016年にアニメ映画『君の名は。』の大ヒットが一つのきっかけとしてありました。劇場アニメに再び注目が集まるとともに、インターネット配信の需要も高まり、業界は盛り上がりを見せています。アニメの需要が高まる中、現在の制作体制に限界を感じたアニメ関係者から、労働環境改善と人材不足解消の必要性が叫ばれるようになりました。さらに海外の制作現場から、データ送付に時間を要さない「デジタル原画」の依頼が増えたことも、この流れを加速する要因となっています。

とはいえ、依然として「アナログ作画」の体制を保持している企業も多くあります。アナログの制作環境に慣れていて変えることが難しかったり、設備をデジタル化するためのコストを捻出できなかったりすることが理由です。今後も恐らく、「アナログ作画」がなくなることはないでしょう。今はアニメ業界の過渡期であり、これからの数年のうちに「デジタル作画」が半数以上に伸張するのではと言われています。

4. デジタル作画がアニメ業界にもたらすもの

表現のクオリティと、作業効率の向上

「デジタル作画」が業界に浸透することによって、どんなことが起きるのでしょうか。

メリットの一つが、表現のクオリティの向上です。デジタルツールを使用すると、画面を拡大して細かな線を描くことができたり、色の塗り残しを自動で発見することができたりと、手描きの技術をサポートしてくれます。特に新人アニメーターのクオリティ向上において役立つでしょう。

そして何よりのメリットは、作業効率の向上です。アナログで1枚1枚を描くことには膨大な時間がかかりますが、デジタルによっていくつかの行程を削減し、制作スピードを格段に上げることができます。たとえば、動きを加えない画像部分はコピー&ペーストを使用できることや、バックアップを取れるのでデータを紛失しても描き直す必要がないことが作業時間を大幅に削減します。アナログデータの輸送車での回収に時間も削減でき、交通事故のリスクをもなくすことが可能です。

今はまだ過渡期であるため、アナログで描いた絵をスキャンして、デジタル化する行程が存在します。これには膨大な時間がかかりますが、完全にデジタルに移行することで、この行程も削減できます。デジタル技術がもたらす一つ一つは小さな変化かもしれませんが、それらが集まることによって、大幅な効率化とスピード向上が実現できるのです。

過酷な労働環境と、人材不足の改善

表現クオリティと作業効率の向上は、かねてより問題視されている、アニメーターの過酷な働き方の改革につながります。

個人事業主のアニメーターは、デジタル化で作業効率を上げることで、労働時間を削減するとともに、より高い報酬を得ることができます。さらに、枚数ベースの出来高制であった報酬の仕組みを、成果ベースに移行する流れも生まれています。作業工数や難易度に見合った出来高制が浸透すれば、アニメーターの公正な評価と、働きやすさにつながります。

デジタルに対応できるアニメーターが、多くの制作会社で求められていくことになるため、人材確保の競争が始まります。そのため自社の待遇を見直し、より働きやすい環境を整える企業が増えるでしょう。アニメーターを目指す若者が増え、未来のアニメ業界を担う人材が育つことが期待されています。

今はデジタル化の転換点であるため、まだ明確なルールが定まっておらず、しばらくは適切な制作体制の模索を続けていくことになります。しかし、現状を変えなくてはいけないという共通認識がある以上、アニメーターの環境は次第に働きやすく改善されていくでしょう。

5. アニメーターの将来性

アニメーターの将来性については、賃金の低さや労働環境の過酷さから、これまで不安視されることが多くありました。

しかしデジタル化の波が、長い間変えることができなかったアニメ業界の歪みを直し、これからの時代に適応した環境を構築し直し始めています。アニメーターが安心して働き続けられるように、業界自体がアップデートされるタイミングであり、将来に期待を持つことができます。

劇場アニメやインターネット配信が好調で、盛り上がりを見せている日本のアニメ業界。世界的にも高い評価を受けており、アニメーターの需要がなくなることはありません。特にデジタル技術に精通したアニメーターは、多くの現場から求められるようになるでしょう。

アニメ業界の未来をつくりたいという想いを持つ方は、チャンスの時かもしれません。慣習をなぞるだけではない、新しいアニメーターの形を模索していきたいという方は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

デジタルハリウッド大学の学びの特色

動画制作からプロデュースまで学び、業界で活躍できる力を養う

関連する記事はこちら

More