遊び場×物語×空間をテーマに掲げる表現団体「ENK3I」が発足。旗揚げ公演を皮切りに挑みたいこと
桂川 智陽さん(2024年度入学)
水野 花音さん(2026年度入学)
加藤 泰輔さん(2026年度入学)
武田 夏央里さん(2024年度卒業)
演劇に留まらず、より複合的な表現活動に挑戦してみたい——。
一念発起した3年生の桂川 智陽さんは、新しい表現団体「ENK3I」を設立。その試みを大学全体に周知させ、0からメンバーを募りました。
そしてENK3Iの記念すべき初回公演『泡く』が、2026年3月12日に、デジタルハリウッド大学(DHU)の駿河台ホールで開演しました。
脚本・演出・主演は、ENK3Iの主宰である桂川さん。また、1年の水野 花音さんと加藤 泰輔さん、本学卒業生の武田 夏央里さんも出演。公演前の出演者に、『泡く』の見どころや本番への意気込みを伺いました。
演劇に留まらない体験を届けるENK3I

——ENK3Iを立ち上げようと思ったきっかけは?
桂川:もともと学内には劇団らふるという演劇サークルがあり、僕はその劇団員でした。その主宰の方の退団に伴い、劇団らふるの活動が終了してしまって。らふるに所属していたメンバー、そして新たなメンバーを加え、新しい挑戦をしようと思いENK3Iを立ち上げました。
在学生全員が閲覧できるチャットツールのグループ内で呼びかけ、現在はらふるに所属していなかった人も含めて13人のメンバーが所属しています。
——ENK3Iの名前の由来は何でしょう?
桂川:円形という言葉の響きが由来で、今まで出会った人との縁が、これから出会う人との縁をつなぐ、循環を生み出したいという気持ちを込めて”えんけい”にしました。
またENK3Iに含まれている3という数字にも意味があります。僕たちが大事にしているのは、遊び場×物語×空間の3つです。
自分たちが表現活動を楽しまず、遊び心を忘れてしまっては、人を楽しませることはできません。ENK3Iがメンバーにとっての遊び場となり、物語が生まれ、お客さんも含めた舞台空間が成立する。表現をすることは遊ぶように楽しいものだと、初心の気持ちを忘れないように活動していきたいと思っています。
——どんな活動をしていますか?
桂川:インスタレーション体験や作品の展示など、演劇に留まらない複合的な表現活動をしたいと考えています。
今検討しているのは、体験者を空間に没入させられるような、インスタレーション展示です。最近は、作品を言葉で解説せず、少し分かりにくい、お洒落なインスタレーション作品が多いと思います。その中で、より身近なインスタレーション作品と言える、原点のようなものは何だろうと考えたときに、お化け屋敷だと思い至ったんです。この夏、もしかしたらどこかでお化けとして演じる機会があるかもしれません。
あくまで演劇を軸に置きつつ、演劇から派生した作品を、自分たちでプロデュースしていく予定です。

——ENK3Iとして初めての舞台『泡く』について教えてください。
桂川:『泡く』でもっとも大切にしているテーマが「嘘」です。人は人と関わる中で、多かれ少なかれ嘘をついてしまいます。何かを嘘で隠そうとするときもあれば、たとえ本人が意識せずとも誤った情報を伝えたことで「嘘をつかれた」と誤解されるときもある。嘘からどんな物語が生み出されるのか、注目してほしいです。
——『泡く』の企画から公演までは、どれくらいの期間をかけましたか。
桂川:実はもとの台本は僕が高校3年のときに書いたものでした。学園祭の演目のひとつとして公演したのですが、自分の中でどうしても、嘘というテーマを消化した気がしなかったんです。この作品はもっと面白くなると思って、いつか再公演する機会をと考えていました。
それからDHUに入学して、劇団らふるに所属しました。そこで出会った先輩が主催の演劇祭で30分の枠をいただき、ショートバージョンの『泡く』を披露できました。そして今回の公演は3回目。2回目の公演で伝えきれなかったことを大幅に加筆し、75分の尺になりました。

——前回、前々回の公演と比較して、何か変わったことはありますか。
桂川:いくつものセリフや演出を見直しました。たとえば「長い時間が経ってさまざまなものが移り変わった世界を見つめたときに、自分だけが取り残された気がするんだ」というセリフを加えています。
高校時代に毎日会っていたのに、今は会うことがないクラスメイト。その人に対する印象は当時のままで、お互いが大人になってから再会しても、「この人は変わってしまった」と思い出と現実のずれに寂しさを感じてしまう。こんな経験をしたことがある人は一定数いるのではないでしょうか。僕自身同窓会でそんな気持ちになったことから、自分の経験をセリフに込めました。
——最後に本公演の見どころを教えてください。
桂川:一般的な舞台では観客が一方向を向き、その正面に演者が立つと思いますが、今回は舞台を真ん中に置き、観客がそれを囲うように座ってもらいます。機材の配置など苦労したことは多々ありましたが、今までにない舞台にしたかったので挑戦しました。来ていただいた方の思い出になるような作品になったと思うので、ぜひ見ていただきたいです。
初めて演技に挑戦する1年生と、裏から支える卒業生
続いて、義父役として出演した加藤さん、母役の武田さん、娘役の水野さんたちにも、『泡く』の見どころなどを聞きました。

——企画や稽古をする上で大変だったことはありますか。
武田:わたしは今回、衣装・メイク・ポスターのデザインを担当し、本番では声のみで出演します。衣装やメイクについては劇団らふるに所属していたときにも何度か経験していたので、そのときにうまくいったことや反省点などをメモしており、今回の公演でもそれを活かしました。
ポスターについては、演出の桂川さんに物語の解釈をヒアリングし、要望に沿ってイラストを描きました。SNSで告知する際などにそのポスターを活用してもらっています。

https://www.instagram.com/p/DUScz4_k2Ex
また登場シーンは少なかったとはいえ、声だけで人物の心情や状況を伝える難しい役を任せてもらったと思います。仕事の合間を縫って台本を読み込み、本番に向けて練習を続けていきました。

水野:劇団の稽古というものに初めて参加したので、どんな風に周りの人と関わるのか、悩んでしまうときがありました。自分が演じる人物は今まで自分が経験してきたことも、出会ってこなかったような境遇の人です。その子がどんな気持ちになり、どう立ち振る舞えばよいのか、解釈するのにとても苦労しましたね。
加藤:僕もDHUに入ってから演劇の稽古を初めて経験したので、発声方法もセリフの覚え方も、すべてがわからない状態で大変でした。先輩方から助言をいただきながら、演技指導をしてもらいました。

——本公演の見どころを教えてください。
武田:舞台と客席の位置が特殊だと思うので、座る席によっていろいろな解釈ができると思います。見る場所に正解はないので、それぞれの視点から楽しんでほしいです。また大道具や小道具についてはENK3I のスタッフが手作りをしており、その配置にもこだわっているので注目して見てください。
加藤さんのように初めて演劇に挑戦する人も、経験者にとっても、そして来場された方にとっても、思い出のひとつになればうれしいです。
水野:対話を通じて、父と子の関係性が変わっていく様子を感じ取ることができると思います。見てくださった方の心に少しでも残るような作品にしたいです。

加藤:舞台がお客さんに挟まれているような特殊な配置になっているので、そこが見どころです。座る席によっては、一方の演者の表情が見えても、もう一方の表情は見えない場合があるので、それを想像するのも面白いと思います。初めての挑戦なので至らない点もあるかと思いますが、ベストを尽くします。
ENK3I 第1回公演『泡く』
いよいよENK3I初の舞台が開演。桂川さん演じるある男が、フランツ・カフカの『変身』を読み上げ、静かに物語が始まりました。



その男の部屋に水野さん演じる少女が来訪し、物語は思わぬ方向へ。その少女は十数年越しに再会できた高校生の娘でした。




なぜ今になって彼女は父に会いに来たのか、父に何を聞きたかったのか。その繊細な言葉の応酬に、観客たちは引き込まれていきます。
ある事件をきっかけに、それぞれの地獄を味わった親子。大切な娘を守るため、父と母がついた嘘。真実を隠すため、娘が父についた嘘。親子の思いが交錯する物語が終幕し、ENK3Iの初舞台は成功に終わりました。
ここからどんな“遊び場”が生まれていくのか。演劇に留まらない表現に挑み続けるENK3Iが、次にどんな物語と空間を立ち上げていくのか——その新たな挑戦から、目が離せません。
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