XR(クロスリアリティ)とは?VR・AR・MRなどの違い・活用事例など
最近、ゲームやエンターテイメントなどの領域を中心に「XR(クロスリアリティ)」といった言葉を耳にする機会が増えてきました。しかし、VR・AR・MRといったよく似た言葉との違いが分かりづらいこともあるのではないでしょうか。
この記事では、「XR」とは? といった基本的な解説から、VR・AR・MRのような類似した技術の違いやそれぞれの活用事例、さらにXR業界で働くにはどうしたらよいのかまでを解説します。
<目次>
1. XR(クロスリアリティ)とは?
「XR(クロスリアリティ)」または Extended Reality (エクステンデッドリアリティ) とは、後述する VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・MR(複合現実)・SR(代替現実)など、現実世界と仮想世界を融合して、新しい体験を作り出す技術の総称です。
VRとARを組み合わせたゲームや、ARとMRとの間にあるようなコンテンツなど、各技術が融合しているサービスも「XR」と呼ぶことができます。
まずは、XRを構成する各技術について見てみましょう。
VR(仮想現実)

「VR(仮想現実)」は、Virtual Reality (バーチャルリアリティ)の略で、仮想世界を現実世界のように体験できる技術です。通常、専用のデバイス(ヘッドマウントディスプレイ)を通じて、CGや360度カメラによって作成された映像を体験するもので、高い臨場感と没入感が得られることが特徴です。
デバイスとしては「Oculus Quest」や「PlayStation VR」などのヘッドマウントディスプレイが有名です。スマートフォンを差し込むだけで体験できる安価なタイプのVRゴーグルも多数発売されています。
ゲームなどのエンターテイメント領域で多く活用されているほか、最近では不動産の内見や、旅行の疑似体験、企業での作業訓練や接客教育など、日常生活での活用も広がってきています。
VRゲームとして人気の「Beat Saber」
https://www.moguravr.com/vr-game-selection-2022/
AR(拡張現実)
「AR(拡張現実)」は、Augmented Reality (オーグメンテッドリアリティ)の略で、現実空間に仮想世界を重ねて投影して見せる技術です。例えば、現実の街並みにCGのキャラクターが登場する「ポケモン GO」や、人の顔の映像に動物の耳や鼻などのCGを重ね合わせることのできるカメラアプリ「SNOW」など、スマートフォンのアプリで体験したことがある方も多いのではないでしょうか。
スマートフォンが1台あれば体験できる気軽さもあり、ゲームのほか、観光地での名所紹介や道案内などにも幅広く活用されています。
最近では、家具を販売する店のアプリで家具を自身の部屋に試し置きしたり、服やスニーカーを仮想試着したりといった小売りビジネスに活用されることも増えてきています。
花王では環境への配慮から店頭での毛束色見本を廃止し、ARで髪色のシミュレーションを行うことが出来るアプリを公開しました。
https://www.kao.com/jp/corporate/news/products/2021/20210624-001/
MR(複合現実)
「MR(複合現実)」は、Mixed Reality (ミックスドリアリティ )の略で、現実空間と仮想世界を融合させて見せる技術です。AR(拡張現実)との区別が難しいですが、ARは現実空間を主体としているのに対しこちらは、現実空間と仮想的なものがリアルタイムで影響し合い、新たな空間をつくりだします。
代表的なデバイスとしては、MicrosoftのHoloLens(ホロレンズ)が挙げられます。デバイスに内蔵されたカメラやセンサーを利用することで、マウスやキーボードなどの入力機器を使わずにジェスチャーや音声で操作を行ったり、仮想の物体に触れたりといった操作が可能となります。
ゲームなどのエンターテイメント領域での活用のほか、今後は特に、建設や医療といったいわゆる”現場仕事”の分野での活用が期待されています。
ニトリは、国内で初めてMRグラスを実店舗・ショールームに実際に導入。色変更のシミュレーションや、、引き出しの開閉など、実際に商品に触れているかのような体験を提供しています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000049796.html
SR(代替現実)
「SR(代替現実)」は、Substitutional Reality (サブスティチューショナルリアリティ) の略で、過去の映像を現実世界に重ね合わせて見せることで、過去にあった出来事があたかも今目の前で起こっているかのように見せる技術です。ヘッドマウントディスプレイを装着して体験します。
視覚や聴覚だけでなく触覚なども組み合わせることで、よりリアルな体験が得られます。まだ、実用化された事例はほとんどありませんが、今後、心的外傷後ストレス障害のような心的疾患に対する新しいタイプの心理療法としての活用が期待されています。
2014年にはハウステンボスのアトラクションとして理化学研究所監修のもと、世界初となる SR(代替現実)ホラーアトラクション「ナイトメア・ラボ」が展開されました。
https://www.huistenbosch.co.jp/event/nightmarelaboratory/
2. XRとメタバースの違いは?
ここ数年で耳にする機会が増えた「メタバース」という言葉。旧Facebook社の社名変更を契機に知った方も多いのではないでしょうか。「メタバース」は、インターネット上のバーチャル空間で、ユーザー同士が交流したり、仕事をしたり、遊んだりと様々なコミュニケーションを楽しめる場所です。
「あつまれどうぶつの森」や「Fortnite(フォートナイト)」といったゲームも広い意味でメタバースと捉えられる場合があります。
仮想空間を活用するためXRと混同されることもありますが、あくまでメタバースは「場所」を表します。XRの機器を使ってメタバースにアクセスすることも可能ですが、そうしたデバイスがなくても、例えばPCやスマートフォン、ゲームデバイスなどからアクセスすることも可能です。また、VRコンテンツが全てメタバースという訳ではなく、他のユーザーとのコミュニケーションがないVRコンテンツも多く存在します。
3. XRが急速に注目を集めている背景は?
では、なぜXR技術は急速に注目を集めているのでしょうか?
その理由には、デバイスやソフトウェアの進化があります。ディスプレイが高解像度化することで画質が飛躍的に向上し、またその処理能力や操作性が大きく向上したことで、これまでには実現できなかった臨場感を体験できるようになりました。小型化・軽量化に伴いデバイスを使用しやすくなったことも理由として挙げられます。
デバイスの価格が大きく低下したのも理由のひとつです。かつては10万円近い価格で販売されていたヘッドマウントディスプレイですが、現在はデバイス単独で使用できるスタンドアローン型でも5万円以下、スマホを差し込むタイプであれば数千円と安価になり入手しやすくなりました。スマホもひとり1台もつことが当たり前となったことで、スマホで体験できるARの日常での活用シーンも増えました。
通信環境の大幅な進化も欠かせないポイントです。XRのコンテンツをインターネットで配信する場合、より高い臨場感を得るためには高解像度の画像データを遅延無く配信する必要があります。5Gによる高速・大容量通信が可能となったことで、こうした高い臨場感を体験できるようになりました。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、非対面・非接触での対応が求められる中、XRを活用したリモートでの業務遂行やイベント開催の需要が高まったことが、さらなる後押しとなっています。
4. XRを活用した具体的事例を紹介
このように注目を集めるXR技術ですが、実際にはどのようなことに使われているのでしょうか?XRを活用した具体的な事例をご紹介します。
バーチャル秋葉原
大日本印刷とAKIBA観光協議会が2022年4月1日にオープンしたメタバース空間で、バーチャル空間上で買い物や会話を楽しむことができます。PCアプリから楽しむこともできます。さまざまなクリエイターたちとのコラボレーションが行われており、VR版ではその世界により没入することができます。
https://www.dnp.co.jp/news/detail/10162340_1587.html
HADO
現在、VRを用いたゲームは数多く展開されています。「HADO」は、専用ゴーグルとセンサーを着用することで、ディスプレイの中のプレイヤーではなく、プレイヤー自身に武器や防御をARで装備させて戦うテクノスポーツです。ゲームの世界が現実世界に飛び出し、プレイヤー自身が本物の主人公となってゲームを体験することができます。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000073609.html
au ビジュアルガイド
美術館や博物館、展覧会などで、スマートグラスとXR技術を活用して作品を視覚的に解説するサービスは、2022年4月15日より開始されました。展示作品は肉眼で鑑賞しながら、目の前に仮想の大スクリーンや仮想のアテンダントを登場させて解説を行うほか、例えば化石から恐竜が生きているように動き出す表現など、ARならではの表現で鑑賞をアシストすることが可能になります。
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2022/04/15/6003.html
5. XRの今後の動向は?
XRの市場は、2021年から2026年の予測期間において、世界規模で見て62%以上の成長率が見込まれています。XRはゲーム業界では76%以上、映画・娯楽業界で60%以上、小売業界で34%以上、観光業界で30%以上使用されていると言われ、今後もあらゆる分野で必要とされることが想定されています。
こうしたなか、VR開発エンジニアやXRアプリケーションエンジニアといったXRエンジニアの不足は年々深刻化しており、求人サイト「Hired」が作成したレポートでは、国内のXRエンジニアの求人は2019年には1400%ほど需要が急増したという情報もあります。また、XR業界の人材不足は世界共通であり、日本のみならず世界的にもXRエンジニアの需要が今後も増加していくことが想定されます。
6. 将来、XRエンジニア・クリエイターとして活躍するには?
XRエンジニア・クリエイターに必要なスキル
現在のXRゲームやXRアプリケーションの多くは、3D開発用のプラットフォームとして「Unity」もしくは「Unreal Engine」を使用して開発されています。「Unity」はモバイルアプリの開発を得意とする一方、「Unreal Engine」は家庭用ゲームやアーケードゲームの開発を得意としています。まずはこれらのツールを使いこなすスキルが必要です。
「Unity」はプログラミング言語を知らない人でも操作することができますが、より高品質なゲームや映像を作るのであれば、プログラミング言語も習得する必要があります。ユーザーが実際に見て、楽しむフロントエンドの開発に携わりたい場合には、C#やJava Script、C++、BluePrintなど、データを処理するバックエンドの開発に携わりたい場合には、Go・Ruby・Elixirといったプログラミング言語を習得する必要があります。
クリエイターを目指す場合には、3DCGデザインのスキルも身につけていく必要があります。
未経験でもXRエンジニア・クリエイターになれる?
未経験でもXRエンジニア・クリエイターとして活躍できる可能性はあります。XR業界そのものがまだ黎明期であるため、経験を積んだエンジニアはまだまだ少ないのです。さらに、先に述べたように、XR人材は世界的に不足しており、企業でXR人材を採用したくとも経験者を集めることが難しいのです。
このため、XRエンジニアとしての経験が無くとも、XRやものづくりに対しての強い興味や探究心があれば採用されるかもしれません。
未経験からXRエンジニアを目指すのであれば、ある程度はUnityのスキルを身につけておくと良いでしょう。プログラミング言語がわからなくても操作が可能であるため取りかかりやすく、また、多くの企業で採用されているツールなので、汎用性があります。就職活動前にある程度触れるようにしておくだけでも、企業へのアピールになるでしょう。
7. XRなど最先端技術を学びたいなら、デジタルハリウッド大学がおすすめ
XRの技術を学ぶ場所としては、大学や専門学校、スクールなどが挙げられますが、そのなかでも、本学をお薦めします。
「VR/ARゼミ」ではVR技術でこれからの世界をどのように変えていけるのかを考え、それを実践(プランニング・デザイン・プログラミング)できるようになることを目指します。ソフトウェア構築はUnityをベースに開発し、VRコンテンツを制作するための知識を習得していきます。
また、知識と技術を習得するだけではなく、常に社会の動きを見据えながら最新のデジタル知識と表現を学び、いまだ世の中に登場していないメディア表現やコンテンツを研究し、創造、開発していくことも特徴です。
長年VR活用の研究やVRコンテンツ制作に関わってきたXR領域のスペシャリストの教員から直接指導を受けられるのも魅力のひとつ。
8. まとめ
XR(クロスリアリティ)は急速に注目を集め、今後も大きな成長が見込まれる一方、注目度に対してまだまだ人材が少なく、そのエンジニア・クリエイターは今後も強い需要が見込まれます。
ゲームを始めとするエンターティンメントから、今後は医療、防災、仕事、教育、コミュニケーション、アートなど、日常生活のあらゆる面で人々に深く関わっていく可能性を秘めているXR。XRを使って世界を変えていく方法を高い視座から考えられるようになれば、さらなる強みになるでしょう。
デジタルハリウッド大学の学びの特色
VRやプロジェクションマッピングなど、新しいメディア表現やコンテンツを研究し、創造、開発する