モーショングラフィックスとは?導入メリットや基本テクニック紹介

モーショングラフィックスという言葉を聞いたことがありますか?イベントなどのオープニング映像や人気アーティストのMVを彩るアニメーション表現のひとつで、現在ではエンタテインメント業界のありとあらゆるシーンで活用されている技法です。
この記事では、モーショングラフィックスの概要から制作手順、活用事例、ソフトウェア選び、学習方法までを総合的に解説します。視覚的に訴求力の高い映像を作りたい方や、将来映像制作に携わりたいと考える高校生・受験生の方にも読みやすい内容となっていますので、ぜひ進路選択の参考にしてみてください。
<目次>
モーショングラフィックスとは

モーショングラフィックスとは、文字や図形、イラストなどの静止したデザイン要素に動きを加え、情報をダイナミックに伝える映像表現のことです。映画やアニメーションとの違いは、物語性よりも文字やアイコンなどのデザイン的要素の動きや見せ方を重視する点にあります。
ブランドのイメージ映像、SNSの短尺動画、プレゼンテーション資料など、あらゆる場面で使われており、情報を視覚的かつ直感的に届ける手段として注目されています。3DCGやインタラクティブな仕掛けが容易に取り入れられるようになったことで、近年ますます表現の幅が広がっています。
一例として、デジタルハリウッド大学卒業生の松本豊さんが手がけた、入学式のオープニングムービーをご紹介します。少し古い動画ですが、デジタルハリウッド大学の特徴がモーショングラフィックスを通じて視覚的に表現されています。
モーショングラフィックスの起源
モーショングラフィックスのはじまりは、映画やテレビ番組のタイトルシークエンスで使われた動く文字や背景演出だと言われています。20世紀中頃にアナログ技術で作られていたタイトルデザインは、やがてデジタル技術の進歩により洗練され、パソコンを使った本格的なデザイン制作へと発展しました。現在では、当時では考えられなかった精巧なビジュアルやリアルな質感を、比較的低いコストで制作できるようになっています。
モーショングラフィックスの特徴
モーショングラフィックスの特徴は、動きを通じて視聴者の注意を集めやすいことです。文字や図形が滑らかに動くことで理解を促進し、情報を印象的に記憶に残す効果があります。特に、複雑なコンセプトや統計データなどをシンプルに視覚化する際に強みを発揮し、短い時間でポイントを伝えられるのが利点です。また、オシャレなグラフィックスを使うことで、洗練されたブランドイメージを打ち出すことにもつながります。
モーショングラフィックスと関連技術
モーショングラフィックス制作には、グラフィックデザインや動画編集、時には3DCGの知識が必要となります。PhotoshopやIllustratorで作った素材を動画編集ソフトに取り込み、動きやエフェクトを付けていく流れが一般的です。3DCGを導入するケースでは、立体感や臨場感を強調でき、より鮮烈な印象を与える映像に仕上げられます。こうした技術は日々進化しており、多岐にわたる表現手法が生み出され続けています。
モーショングラフィックスを使用するメリット
モーショングラフィックスは、見る人の興味を引きつけながら情報を伝えられるため、多様な分野で広く活用されています。特に、以下のようなメリットが期待できます。
情報を分かりやすく伝えることができる
動きと音、色彩を組み合わせることで、難しい内容でも視覚的に整理して提示できるのが大きな強みです。静止画や長いテキストだけでは理解しづらい要素も、動きで流れを示しながら説明することで、見る人が短時間で要点を把握できます。
印象に残りやすい
文字の登場タイミングやアニメーションの演出によって、視聴者の意識を特定のポイントに誘導しやすくなります。強調したい箇所やブランドメッセージを、効果的に記憶へ残せる映像表現として、多くの企業が広告やプロモーションで活用しています。
制作コストが安い
動画制作と聞くと高コストをイメージする方もいますが、実写撮影をほとんど行わずにグラフィック素材をメインとするモーショングラフィックスなら、比較的費用を抑えられます。自前で撮影スタジオや機材を用意しなくてもよいため、個人や小規模事業者でも取り入れやすい手法となっています。
表現の幅が広がる
平面的なビジュアルにとどまらず、動きや音と組み合わせられるのがモーショングラフィックスの特徴です。独特のリズムや色彩、構成を使えば、ブランドイメージを際立たせたり、高度な専門知識を分かりやすく説明したりするなど、自由な発想を活かした表現を実現できます。
身近に使われているモーショングラフィックスの事例
身近なWeb広告やSNS動画、PRコンテンツなどを見渡すと、多くの場面でモーショングラフィックスが用いられています。以下の例は、その一部です。
mountain studio デモリール
モーショングラフィックスを中心に、3DCGアニメーションや映像制作、Webデザインなどを手がけるマウンテンスタジオ社が公開しているデモリール(実績紹介動画)を紹介します。アパレルから医療系まで多様な企業の紹介ムービー、新作ゲームのプロモーション動画など、幅広いクライアントからモーショングラフィックスが求められていることがわかります。
2100年の結婚式
「100色の結婚式−2100年までにカタチにしたい100のこと−」という展示会で公開された映像作品。原作はお笑い芸人で小説家の又吉直樹さん。モーショングラフィックスを担当したのは、デジタルハリウッド大学卒業生で「映像作家100人」にも選ばれている伊藤聖也さん(8sek) です。
モーショングラフィックスの作成の流れ

モーショングラフィックスを制作するときは、いくつかの段階を経ることで効率的に進められます。流れを把握しておくと、完成度の高い作品が作りやすくなるでしょう。
目標設定
制作前に、モーショングラフィックスで実現したい目的を明確にすることが重要です。新しいサービスの説明なのか、ブランドイメージの強化なのか、学習教材としての視覚化なのかなど、用途によって最適な演出や表現は変わります。ターゲットの年齢層や興味関心も踏まえながら、作品全体の方向性をはっきりさせましょう。
ストーリー作成
次に、情報をスムーズに見せるための絵コンテやストーリーボードを用意し、全体の構成を考えます。まず「どの順番で何を見せるか」を設計し、必要な素材や演出を洗い出すことで、後の作業が効率化します。ここで過剰な情報を詰め込みすぎると、視聴者が混乱する可能性があるため、整理と取捨選択が重要です。
デザイン・テイストを決めて素材を用意する
ストーリーの骨格が固まったら、映像の基調となるデザインを考えます。ブランディングカラーやフォントの選定、図形やイラストの方向性といった要素を統一し、見る人に一貫した印象を与えられるようにしましょう。事前に作成したイラストや写真素材、ロイヤリティフリーの音源などを準備し、編集環境でスムーズに扱える状態にしておきます。
動画編集
デザインと素材が揃ったら、After EffectsやAviUtlなどのソフトでタイムライン上に配置し、アニメーションを付けていきます。動きのスピード感や文字の出し方、効果音の追加などで作品の雰囲気が大きく変わるため、試行錯誤しながら調整することが大切です。最終的にプレビューを確認し、不要な部分を削ったりテンポを整えたりしながら完成度を高めていきます。
モーショングラフィックスを作成する際に役立つポイント
制作工程をスムーズに進め、魅力的な映像に仕上げるためのコツをまとめます。
目的を明確にする
まずは何のために作るモーショングラフィックスなのかをはっきりとさせることが重要です。広告・PR、学習教材、プレゼンテーションなど、ゴールを意識するほど全体の演出を最適化できます。
視認性を考慮したデザインを意識する
見やすい配色や文字の大きさ、余白の活用を心掛けると、情報の優先度が伝わりやすくなります。さらに、要点を強調するためのアニメーションをシンプルにまとめることで、短時間で内容を理解してもらいやすくなります。
動きやタイミングに一貫性を持たせる
スムーズな動きと一定のリズムは、映像全体の統一感を高めます。重要な情報が出る場面は動きを遅めにし、インパクトを与えたい部分は速度を変えるなど、意図的に緩急をつけるとメリハリのある映像になります。
参考作品を研究する
他のクリエイターの作品を多く見ることで、最新のトレンドや多彩なアニメーション手法を学ぶことができます。自分の目標やジャンルに合った動画を探し、どのような演出が効果的かを研究し、積極的に取り入れましょう。
モーショングラフィックスの作成はどのような人が向いている?
モーショングラフィックスを手がけるには、多角的な才能や興味が求められます。映像とデザインを掛け合わせるクリエイティブな作業なので、次のような人に適性があると考えられます。
クリエイティブな発想を持っている人
文字や図形などのシンプルなパーツに動きとアイデアを加えて、新しい表現を生み出す力が求められます。独自のアイデアで「魅せ方」を工夫し、伝わりにくい要素を一気にわかりやすくできるのが大きな醍醐味です。
デザインが好きな人
配色やフォント、レイアウトなどデザインの基礎を応用できる場面が多いため、もともとグラフィックデザインに興味がある人はスキルを伸ばしやすい分野です。
動画編集や映像制作に興味がある人
モーショングラフィックスは、単なる静止画では味わえない映像表現の面白さを体験できます。動画のカットやリズム、エフェクトの扱いなど、映像制作の基礎知識も必要となるため、映像クリエイション全般に関心がある人にはやりがいが大きいでしょう。
分析力や構成力がある人
複数の情報を整理し、映像化するためにシンプルな流れを組み立てる力が不可欠です。論理的に整理し、見やすい形に落とし込むことで、初めて視聴者に伝わりやすい映像が完成します。
集中力がある人
細かなエフェクト設定やタイミング調整など、緻密な作業が続くことがあります。作り込みを粘り強く行える人は、高度なアニメーション演出を身につけやすいと言えます。
学ぶ意欲がある人
ソフトウェアやデザインのトレンドは絶えず変化するため、最新の技術を吸収し続ける意欲も大切です。常に新しいツールに触れ、自分の表現の幅を広げていく姿勢を持っている人は、より深くモーショングラフィックスの魅力を追求できます。
チームでの作業が好きな人
映像制作はチームで進める場面が多いです。互いの得意分野を補完し合いながら作業を進められるコミュニケーション力や協調性があると、スムーズに完成度の高い作品を作り上げられます。
モーショングラフィックスを作るためのソフトは?

モーショングラフィックス制作を本格的に始めるには、機能性や安定性に優れたソフトウェアが欠かせません。代表的なものを紹介します。
Adobe After Effects
プロが多数愛用する定番ソフトです。レイヤー管理やエフェクトが豊富で、複雑なアニメーション表現にも対応できます。PhotoshopやIllustratorなど他のAdobe製品との連携もスムーズです。学生向けの割引プランも用意されているので、映像分野を本格的に学びたい高校生・受験生にも身近に利用しやすいでしょう。
AviUtl
無料ながら拡張性が高く、数多くのプラグインが利用できるのが特徴です。Windows専用ですが、多くのチュートリアル情報がネット上にあり、初心者でも基礎を学びながらクオリティの高いモーショングラフィックスを作成できます。コストをかけずに始めたい方に適しています。
Blender
オープンソースの3DCGソフトであり、アニメーション機能も充実しています。3D空間でのモデル作成から動きの付与まで一通り対応しているため、より立体的な演出を得意とする方には魅力的な選択肢です。世界中のユーザーがいるため、オンラインで多くの情報を入手できます。
その他の注目ソフトウェア
DaVinci ResolveやFinal Cut Pro、HitFilm Expressなども、編集機能やエフェクトが充実しており、用途や予算に応じて自由に選べます。作りたい映像の方向性や自身のスキルレベルに合わせて最適なものを選ぶと良いでしょう。
選ぶ際のポイント
ソフトウェアによってユーザーインターフェースや機能、対応OSなどが異なるため、まずは無料版や体験版を試し、自分が扱いやすいと感じるものを探してみてください。映像制作に慣れてきたら、有料ソフトへのステップアップでより高度な表現に挑戦するのもおすすめです。
モーショングラフィックスを学ぶには?
モーショングラフィックスはデザインと映像技術が融合した分野であり、基礎から応用まで幅広く学べる環境を見つけることが大切です。以下のような方法があります。
独学で学ぶ
ネット上にはソフトウェアの使い方やチュートリアル、先輩クリエイターの作品など、多数の情報が公開されています。最初は独学でソフトの基本操作を覚え、シンプルなアニメーションから始めてみるのも良いでしょう。しかし、初心者ほどモチベーションの維持や体系的な学習が難しい場合もあるため、無理のないペースを心掛けることが大切です。
専門学校やオンライン講座を受講する
より効率的に学びたい場合、専門知識を系統立てて学べる環境があるとスキルアップが早まります。専門学校やオンライン講座では、映像制作の基礎理論から実践まで包括的に教わることができるため、短期間で基礎力を高めたい人に向いています。また、学習仲間との情報交換や講師による添削が得られる点も大きな利点です。
リアルな現場で学ぶ
映像制作のアルバイトやインターンシップに参加することで、実務に即したスキルを身につけることができます。実際のクライアントワークを通して、作品のクオリティを求められる環境に身を置くことは非常に刺激的です。チームメンバーと連携を取りながら作品を完成させるプロセスは、独学や講座では得られない貴重な学びとなります。
ロールモデルを見つけて学ぶ
憧れのクリエイターの作品を積極的に研究することも大事です。YouTubeやSNSで作品を発表している人のプロセスをチェックしたり、コンテストや作品展に足を運んだりすることで、多様なアイデアや最新の表現手法を吸収できます。
基礎力の重要性
モーショングラフィックスは見た目の派手さに注目されがちですが、元になるデザイン力や映像編集の基本操作が大前提となります。色彩、タイポグラフィ、構図などの原則を理解していないと、動きだけが先行して完成度を下げる要因にもなります。最初は地道に基礎を積み重ねておくことが、結果的にはハイクオリティな作品につながるでしょう。
まとめ
モーショングラフィックスは、動きとデザインを組み合わせて情報を伝えるクリエイティブな手法として、広告やPR、教育、エンターテインメントなど多様な分野で活用されています。主なメリットとしては、視覚的に分かりやすく印象に残りやすい点や、実写撮影が不要で比較的低コストに制作できる点が挙げられます。
デザインと映像の可能性は今後も広がっていくと考えられ、モーショングラフィックスに対するニーズも一層増していくでしょう。興味を持ったら、まずはシンプルなアニメーションづくりから挑戦してみることをおすすめします。
進路を考えている高校生や受験生にとって、モーショングラフィックスの分野はデザインとテクノロジーの両面から将来性が高い領域といえます。デジタルハリウッド大学では、映像や3DCGだけでなくビジネスやクリエイティブを融合したカリキュラムを用意し、学部内で幅広い選択肢を提供しています。
在学中にコンテストで賞を受賞する学生もいます。モーショングラフィックスをより発展させたものに「プロジェクションマッピング」がありますが、東京国際プロジェクションマッピングアワード(PMA)vol.8の最優秀賞を受賞した羽生優さん(当時学部1年)もその一人です。
ぜひみなさんもデジタルハリウッド大学で映像表現やデザインを学び、ここで挙げた先輩たちのように、モーショングラフィックスを自由自在に操れるようになりましょう!