ニュース&イベント

【開催レポート】「ハリウッドのパラダイムシフト」

【開催レポート】「ハリウッドのパラダイムシフト」

開催日時

2018年08月02日(木)19:20~21:00

場所

デジタルハリウッド大学 駿河台キャンパス
東京都千代田区神田駿河台4-6
御茶ノ水ソラシティ アカデミア3F

アクセス

JR「御茶ノ水駅」聖橋口より徒歩1分/東京メトロ千代田線「新御茶ノ水駅」B2出口直結/丸の内線「御茶ノ水駅」より徒歩4分/ JR「秋葉原駅」より徒歩9分
都営地下鉄新宿線「小川町」より徒歩6分
Google MAP

レポート

デジタルハリウッド大学 3年 松﨑 拓也

 デジタルハリウッド大学では、2018年8月2日、ギャガ株式会社の創業者・フィロソフィア株式会社代表取締役社長であり、本学の特任教授でもある藤村哲也氏による特別講義「ハリウッドのパラダイムシフト」を開催しました。
 今、大きく変わりつつあるハリウッドの映画産業について、一体なにが起きているのか?ということを解説していただきました。

はじめに

 現在のハリウッドは変わりつつあります。それは100年もあるハリウッドの映画産業の歴史を振り返っても初めて。
 今回の講義では、その転換点がなぜ起きたか、なにが起きたか、順を追って説明していきます。
 藤村氏は32歳で映画配給会社、株式会社ギャガ・コミュニケーションズを創業。映画の買い付けを行ってこられました。現在でも頻繁にハリウッドへ足を運び、大手映画スタジオのプロデューサーと話をされています。

そもそもハリウッドとは?

 ハリウッドは世界の映画産業の中心地。ロサンゼルスに拠点を置く大手6スタジオを、ハリウッド・メジャースタジオと総称しています。
 転じて、「ハリウッド」はアメリカ映画産業の代名詞となりました。
 大手6社(Walt Disney、Warner Bros、Universal、20th Century FOX、SONY、Paramount)を中心に北米興行収入の90%を占め、100年に渡りハリウッドを支えてきました。

ハリウッドを揺るがす驚愕のニュース

DisneyによるFOXの買収!

 2017年12月14日、FOXのオーナーであるルパート・マードックがDisneyにFOXを売却することに合意しました。どれだけ衝撃であったかというと、アニメ「シンプソンズ」の中で、過去にFOXは「DIVISION OF WALT DISNEY(ディズニーの一部門、つまり買収された意)」と皮肉られたほど。当時は冗談になるほどありえない話であったことを知ることができます。FOX内部では買収による混乱が発生。優秀な人材が流出が多発しました。
 ちなみに、藤村氏の友人のFOXの方も4社ほどからリクルーティングのオファーが届いたとのこと。また買収前にこの話が囁かれ出したのはFOXの内部からであったそうです。

なぜFOXはディズニーに売却を決めたのか?

 FOXのオーナーであり、メディア王と呼ばれるルパート・マードックによれば「FOXは今が売り時と思った」とのことでした。

何故、売り時と思ったのか?

 2017年9月27日(買収劇の3ヶ月前)にAmazon Studiosが劇場映画配給進出を発表しました。
今までのAmazonの映画産業への関わりは、

制作⇒Amazonは5年前から制作には着手
映画館⇒まだ着手していない
家庭⇒Amazon Prime Videoとして着手済み

 しかし、これからは映画配給会社へ。
 今までの制作や家庭向けサービスは、Amazonの有料会員向けサービスの一部としか思われていませんでしたが、FOXの競合たる映画配給スタジオに変貌しました。 決定的であったかは分かわかりませんが、これが一因であることは間違いありません。

FOXとAmazonの時価総額を比較

FOX:9.27兆円
Netflix:16.21兆円
Amazon:96.27兆円

 FOXは2016年10月にNetflixに時価総額で抜かれてしまいましたが、現在はDisneyによる買収によって若干株価が上昇しました。
 株主が将来性を見て株を買うと株価が上昇し、企業の時価総額も上昇します。つまりはFOXの将来性に魅力を感じる投資家が減少していることになります。Netflixに時価総額で追い越されるなど、こういった市場の変化が背景にある中で既存のビジネスモデルの将来性に限界があるとルパート・マードックは悟りました。

では逆に、Disneyは何故、FOXを買収したのか?

 FOXを買うことは、IPの育成などの成長にかかる時間を買うことにつながります。Disneyの目的は、映画を中心としたエンターテイメント企業として世界のNo.1として君臨し続けることです。

DisneyとNetflixの時価総額

Disney:18.58兆円
Netflix:16.62兆円

 Netflixは一度、Disneyを抜いています。

Disneyの企業としての状況

 MarvelやLucasfilmの買収により、順調に株価が上昇していました。しかし、スポーツ専門の有料チャンネル、ESPNの契約世帯数が大幅に減少し、放送業界が厳しく、将来性が無いと判断されたのか、株価が下落しました。

一方のNetflixの状況

 2013年2月にオリジナルドラマ「ハウス・オブ・カード」が大ヒット。2016年1月には全世界190カ国に展開。そして海外の契約世帯数が米国契約世帯数を上回りました。
 一方でDisneyはというと、企業自体が成熟しているため、これからの成長が見られませんでした。単一の事業体であるNetflixが総合エンターテイメント企業であるDisneyに時価総額で迫っていることは驚くべき事実です。成長性の観点から見ると評価されるのはNetflixでした。

FOXを買収したことによる影響と結果

 FOXを買収したことで、FOXの企業価値がDisneyに上乗せされます。Disneyは2019年に独自の配信サービスの開始を予定していることから、それまでの間に世界一の座を守るための時間を買ったと言い換えられます。

*ハリウッド・パラダイム・シフトの主役

IT技術の発展によるグローバル映像流通革命

 映像を低コストで、世界中の人々にオンデマンドで直接配信できるようになりました。また、映像を観た世界中の人々に直接、課金できるようになりました。
 これまでは

 ユーザー→中間業者→メジャースタジオ(半分以上は劇場などの卸業者へ)

でしたが、現在は

 ユーザー→ストリーミングサービス

に変化し、直接配信できることは、手数料を削減することにつながり、利益率の大幅改善を実現し、観たいときに観たいものを観たい場所で楽しむことができるという圧倒的な利便性を実現しました。また、顧客のデータを直接管理できるため、データドリブンなマーケティングが実現され、作品へと直接反映され、ユーザーの観たい作品を予測して作ることができるようになりました。
 つまり、ハリウッドのパラダイムシフトの主役→ストリーミングサービスを提供する巨大IT企業ということです。具体的には、Apple、Amazon、Google、Facebook、Netflixなど。
 これらの企業は、既にオリジナルTVシリーズと映画の制作と配信をスタート、または準備し始めています。
 巨大IT企業の強みを再度おさらいすると、

 1. 消費者を直接つなげるオンラインのエコシステム
 2. 基幹ビジネスで築いた膨大な資本力
 3. 膨大な顧客データ

 2018年の各社のオリジナル映像作品の制作予算を合計すると約2.2兆円。エンタメ性の強いテレビ企画に資金力をかける時代に。
 一方で、メジャースタジオのコンテンツ制作予算はというと、2017年度の合計額が6400億円。
 主役はメジャースタジオではなく規模、将来性のあるIT系の巨大企業になると予想されています。

ハリウッド・メジャースタジオ再編の流れ

 巨大企業とハリウッド・メジャースタジオの時価総額を比較します。
9兆円で買収されたWarnerを含むAT&Tの現在の時価総額は約25兆円。SONYも、エレクトロニクス事業をすべて合わせた時価総額が約7兆円と、巨大IT企業と比較するとその規模感のちがいが明らかです。DisneyはFOXの買収によりIPの将来性を見越した成長に懸けるところですが、ビジネスの世界では大が小を喰らうのは世の常です。今後のハリウッド再編の動向からは目が離せないでしょう。

再編の可能性は?

1.企業によるメジャースタジオの買収
2.メジャースタジオ同士の合併による再編
3.Apple・Amazon・Google・Facebookなどの巨大IT企業による買収
4.成長したNetflixによる買収

*ハリウッドを狙う第三の勢力

ハリウッドを狙う中国IT企業

 具体的にはアリババ、テンセントといった中国新興IT企業です。こういった巨大IT企業によるメジャースタジオ再編の可能性も、10年の長期的視点では十分に有り得ます。

中国年間興行収入の推移予想

 アメリカは市場として成熟しており、横ばいの傾向。(同じく日本もその傾向)バラエティーの予測では、2020年に中国がアメリカを追い抜くとされており、10年後にはアメリカの2-3倍の興行市場を誇る世界最大の映画大国となり、世界の映画市場に大きな影響力を持つことは間違いなさそうです。

*まとめ

 新興のIT企業のエンターテインメントへの参入により、これまで の映像業界のビジネスのあり方が根底から覆ろうとしています。そのひとつの結果として、クリエイターおよびIPの価値がこれまでより遥かに上がる現象が起きています。クリエイターを取り巻く古い体制が崩壊し、今まで以上に公平に、より高く才能が評価される時代が到来すると考えられます。

   

平野紫耀さんが登場!デジタルハリウッド大学新CM『みんなを生きるな。自分を生きよう。2024』

本気で夢を追うって
簡単じゃないんだってマジで

これから先、諦めたくなる瞬間が
かならず来る
もちろんおれにもくる

でも、その夢を実現できたら、
きっと「最高だ!」って思えるんだよ

だから、とにかく一歩踏み出す
その選択が正しいかなんて、
今の時点じゃ誰にも分かんないし

最終的に、自分の道は、
自分で選ぶしかないでしょ!

みんなを生きるな。
自分を生きよう。

本気で夢を追うって
簡単じゃないんだってマジで

これから先、諦めたくなる瞬間が
かならず来る
もちろんおれにもくる

でも、その夢を実現できたら、
きっと「最高だ!」って思えるんだよ

だから、とにかく一歩踏み出す
その選択が正しいかなんて、
今の時点じゃ誰にも分かんないし

最終的に、自分の道は、
自分で選ぶしかないでしょ!

みんなを生きるな。
自分を生きよう。