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【開催レポート】映画「バースデー・ワンダーランド」における監督原恵一の世界

【開催レポート】映画「バースデー・ワンダーランド」における監督原恵一の世界

開催日時

2019年5月28日(火)19:00~20:30

場所

デジタルハリウッド大学 駿河台キャンパス
東京都千代田区神田駿河台4-6
御茶ノ水ソラシティ アカデミア 3階 駿河台ホール

2019年5月28日、デジタルハリウッド大学では、特別講義「映画「バースデー・ワンダーランド」における監督原恵一の世界」を開催しました。

「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」(2001)、「河童のクゥと夏休み」(2007)、「カラフル」(2010)など、様々な作品を生み出した原恵一監督は、今年の春劇場版アニメ映画「バースデー・ワンダーランド」を公開しました。今回の特別講義は原監督の作品世界を知りたいというデジタルハリウッド大学の学生の要望に応じたもので、原監督が本学に特別講義講師として足を運ばせたことは映画「カラフル」に関する特別講義以来2回目となります。今回の特別講義では、 映画「バースデー・ワンダーランド」の制作過程の裏話や作品に込めた監督の思い、そしてアニメ業界での活躍を目指す学生へのメッセージなどをお話しいただきました。

映画「バースデー・ワンダーランド」

原監督の新作「バースデー・ワンダーランド」は、小学6年生の少女アカネが誕生日に<幸せ色の不思議な世界(ワンダーランド)>を冒険する物語です。今回の特別講義ではこの作品のキャラクターや世界観の初期設定、メカデザイン、建物のデザインなど、貴重な設定資料が豊富に公開されました。原監督はこれらの資料を見せながら、制作の裏話や、制作当時の思いを語りました。例えば、主人公アカネの場合、個人差が大きい12歳の女の子ということでプロポーションを決めることに最も力を入れたとのことです。監督がイメージを決め、キャラクターデザイナーにいくつかのパターンを作ってもらい、そこからまた最終案を選ぶ流れだったといいます。そしてこの作品で、監督の表現したい思いを素晴らしく具現化してくれたのがキャラクターデザイナーのイリヤ・クブシノブ氏(以降イリヤ氏)でした。

キャラクターデザイナーのイリヤ・クブシノブ氏との出会い

「作品を作ると決めて、キャラクターデザイナーを誰に頼むか考えていました。その時たまたま書店に入ったら、彼のイラスト集があったのです。その時ピンとしました。」運命的ですら感じられるこの瞬間が、原監督とイリヤ氏の出会いでした。

原監督は彼に関して何の情報もない状態で、新鮮感の溢れる彼の絵が自分の思いを表現するのに最もふさわしいと思い、彼にコンタクトを取りました。彼がロシアのイラストレーターということを含め、彼に関して分かるようになったのはすべてその後のことだそうです。普段アニメ映画のキャラクターデザインは名前のあるアニメーターが担当することが多いので、このような取り立ては滅多にないことです。

イリヤ氏は子供の頃に攻殻機動隊を見て以来日本のアニメのファンになり、とても情熱的に日本のアニメやイラストを勉強してきました。ロシアでゲームのデザインをしていたことを除けば現場の経験が殆どなかった彼でしたが、原監督は彼がとても素晴らしい仕事をしてくれたと絶賛します。監督によると、当初は彼にキャラクターデザインのみを頼む予定でしたが、彼が描いてくるメカ、建物、背景などに魅了され、イリヤ氏にだんだん多様なデザインを頼むようになったそうです。物語の世界を工夫し、そこに住んでいる人々の世界観、美意識、価値観や生活が刻まれているデザインを、しかもとても速く大量に描く彼が、いつの間にかこの映画では最も重要なスタッフの一人になったていたと、原監督は言います。若くて、日本の現場での仕事が初めてだった分、とても柔軟で、その柔らかさで一緒に仕事することがとても楽だとも振り返りました。

キャラクターデザイナーを目指す学生たちに

そんなイリヤ氏はキャラクターデザイナーを目指す学生たちに良いロールモデルになります。原監督の話から、イリヤ氏の長所は次のようにまとめられます。①毎日絵を大量に描くこと、②柔軟であること、③コミュニケーション能力が高く、他のスタッフとの意見交換が活発で、かつ彼らから新しいものを吸収し、仕事中の成長が早かったこと、③美術・建築など多様なジャンルを勉強していて、デザインに使えるアイディアが多かったこと。このような面を踏まえて、原監督はキャラクターデザイナーを目指す学生たちに助言をします。まずは絵を人に見せることをためらわないことです。次はアニメやゲームなど自分の好きな分野だけを見てはいけなく、自然物・芸術作品・海外クリエイターなど、多様なものに普段から触れていて、それらの特徴や描き方も工夫しておくことです。原監督は‘ミケランジェロ’‘スラブ’などのキーワード―だけでサクサク新しいデザインを描いて出したイリヤ氏の一話を話しながら、そのような「引き出し」の重要性を強調しました。

「いい映画」への思い

講義では実際「バースデー・ワンダーランド」の制作に使われた絵コンテが紹介されました。原監督は担当した作品の絵コンテはすべて自分で描いていて、彼にとって絵コンテを描くことが作品作りの最も大事な作業だと語ります。場面の構成やカットの秒数で映画テンポが変わるのと、監督は実際の絵コンテを資料として解説しました。

監督が演出に関わり始めたのは、シンエイ動画株式会社に制作進行として入社して僅か1年半が過ぎた頃でした。当時会社の演出助手が一人辞めたことをきっかけに、常に演出への熱意を表していた監督がその職務に抜擢されたのです。その後絵コンテも任されるようになり、今に至るということです。

当時は車で走り回ることが多く、主に原稿収集やスケジュール管理を務めていた制作進行。その職務に勤めながらも絵コンテを描く力を付けた秘訣を聴くと、原監督は「実写映画、その中でも洋画がとても好きだった」と回答しました。実写映画もカットのつながりはアニメと変わらないので、映画を見ながら研究・真似し、絵コンテの実力にしたということです。そして「当時、身近にものすごい先輩がいて、その人から刺激を受けた」ということも重要だったそうです。

そんな原監督にとって、いい映画とは「観客の想像力を刺激するもの」だそうです。過剰な説明、感情の入れ込みは作品の質を落とす恐れがあるし、全部説明するよりは観る側から自然に「気づいてもらう」方が映画として素晴らしい映画になるということを信じていると、監督は語ります。しかし同時に「映画はお客さんがお金を出して観に来てくれるものなので、いくら作り手がいい作品を作ったとしても、客さんが来てくれないとそれは問題」と、商業作品としての映画の一面も直視します。「作り手の満足と商業的な成功、両方が両立すると最もいいが、それがなかなか難しい」と言う監督の言葉から、映画の作り手としての監督の悩みも覗けられました。

キャラクターデザインと同じく、映像作りも「多様なものを沢山観ること」が大事

沢山の制作秘話と資料解説で進行された特別講義の最後には、活発な質疑応答が続きました。いい映像を作れるようになりたいという学生たちの質問に、監督は「新しい映画だけではなく、古い映画も観ること」を進めました。ただしただ映画を見ることだけではなく、見ながら一歩先を考え、これからどのようなストーリーや演出が来るか、来るべきかを自分で考えながら見ることがためになるそうです。

講義が終わった後も、監督ともっと話をしたがる学生が絶えず、当分監督の前では学生の行列が続きました。いい映画への信念と、作品作りに関して硬い哲学を持った監督の今回の特別講義は、実際の制作に関する実務的な発見はもちろん、作品の作り手としての心得も学べる機会でした。

※本レポートは、本学の大学院生によって作成されました。

   

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みんなを生きるな。
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