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【開催レポート】「デジタルの日」ロゴマークデザイナーが語る クリエイティブな力で社会や人を変えていく「楽しさ」

【開催レポート】「デジタルの日」ロゴマークデザイナーが語る クリエイティブな力で社会や人を変えていく「楽しさ」
開催日時
2021年11月12日(金)19:20~21:00
場所
オンライン開催(ZOOM)
レポート
デジタルハリウッド大学 2年 堀合 桜子
2021年11月12日、デジタルハリウッド大学では岩田直樹氏による特別講座『「デジタルの日」ロゴマークデザイナーが語る-クリエイティブな力で社会や人を変えていく「楽しさ」』を開講しました。
講師を務めて下さったのは、「デジタルの日」最初の年のロゴデザインを手掛けたグラフィックデザイナーの岩田直樹氏です。本講義はZoomを使用したオンラインでの開催となりました。岩田氏の考えるデザインの影響力、そしてクリエイターとしての心構えを手話とスライドを交え解説していただきました。
デザイナーになるまで
岩田氏は生まれつき耳が聞こえず、救急車が横を通った時に初めてサイレンの音が聞こえるくらいと自己紹介をされました。趣味はサウナで「好きになってから5年経ちました」と笑顔で仰っていました。子供の頃から絵を描くことが好きだった岩田氏は中学生の時に深澤直人氏がデザインした携帯電話「I N F O B A R」から影響を受けてデザイナーの道を目指します。学生時代は筑波技術大学でデザインを学び、学外では耳の聞こえない人と聞こえる人の交流の場「ろうちょ〜会」の運営を始められました。
その後、学外活動の場で現在務めている広告会社の社長と出会い入社。デザイナーとして働く傍ら、副業でもグラフィックデザイナーとしても活躍されています。
「デジタルの日」のロゴ製作について
デジタル庁が「デジタルの日」のロゴ作成者を推薦する企画を立ち上げ、デザイナーを募集していました。しばらくしたのち中間発表を確認したところ岩田氏の名前が候補者リストの中に。岩田氏は驚きのあまり同姓同名の別人なのではと疑ったと仰っていました。そして、最終的に内閣官房から正式決定の依頼を受け、ロゴデザインを担当するに至りました。
ロゴデザイナー中間発表時の岩田氏のツイートより
岩田氏は、本来ロゴデザインには3ヶ月かかると仰っていました。しかし、今回の「デジタルの日」のデザインは依頼から発表予定日まで1ヶ月。岩田氏はこの短い時間で納品するために普段は複数の案を出すところを2案に絞り、会議で修正工程を少なくする工夫をしました。その甲斐もあり大きな修正もなく、「デジタルの日」のロゴは決定したそうです。
「デジタルの日」は、デジタルについて、定期的に「振り返り」「体験」「見直し」をするための機会として制定されました。ロゴにはこの「振り返り」「体験」「見直し」の3点を3本の線で表現。加えて、「壁を作らず、誰1人も取り残さない」ということを表現するため不完全な図形を起用されました。では、なぜ四角形なのか。それはスマホやパソコンなどの身近なデジタル機器をイメージしてデザインしたためです。さらに、デジタルの規則性をグリットにそってデザインすることで表現したと仰っていました。そして色遣いについては、どこまでも広がるネットワークを「海」と「空」から連想した青色に配色されたそうです。
岩田氏はデザインを考える時、「言葉からイメージを連想してデザインをします。思いつかない時はインターネットで調べます。よく雑誌も読み、かっこいい・かわいいと思ったものを見つけてどうしてそれに心が動かされたのか考えることで自身のデザインにも活かしています。」と仰っていました。
将来の夢のその先の夢
「将来の夢はありますか?」という言葉が大きく書かれたスライドを画面共有しながら、岩田氏は自分の経験談から「私はデザイナーになりたいという夢を持ち、そして叶えました。しかし夢を叶えた私が感じたのは将来の目標を失った虚無感でした。」と語られました。
岩田氏はその職業に就くことをゴールにしてしまったが為にその先の目標を見失ってしまったと話します。岩田氏は初心を思い出し、自身がなぜデザイナーになったのか、それは、「デザインを作ることの過程を見るのが楽しいからだ」と、自身の原動力が“楽しさ”であることに気がつきます。併せて、「もちろん、目標を持つことは素晴らしいことですが、やらなければいけないと窮屈な状態になるのはあまり良くない。」とも仰られました。

岩田氏のスライドより
講演後の質疑応答では、参加者からチャットで多くの質問が寄せられました。参加者からの「岩田さんがポジティブに物事を考えられるのはどうしてですか。」という質問に対し、岩田氏は「死ななければ大丈夫だと思っているかもしれませんね。もし自分がつまらないなと感じた仕事もマラソンのような達成感があり、そのお仕事から楽しいお仕事が来たことがあるのでそのために頑張ってお仕事をしています。」と笑顔で質問に答えていました。

参加者からの質問に手話で答える岩田氏(左上)
最後に
耳の聞こえないグラッフィックデザイナーの岩田氏は、講演を通じて次のようなエールを学生に対して送り、講演を締めくくりました。
「デザインは常に私たちの生活にあり、切っても切り離せない大切な情報です。デザインを見ることで人は楽しいと感じ、リラックスすることもできます。私が学生時代の時、デザインを考えるうちに個人の思いから社会にどのように考えを伝えるべきか考えるようになりました。そして、その考え作った自身の作品が誰かに影響を与えたときとてもやりがいを感じました。これからの就職の際に、入った1つの会社にこだわりすぎずに自分に合う会社を見つけ、自信を持って社会に自分のクリエイティブな力を発揮していってください。」