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【開催レポート】墨田クリエイターズバトン第1回 地域とクリエイターの化学反応

【開催レポート】墨田クリエイターズバトン第1回 地域とクリエイターの化学反応
日時
2021年12月2日(木)19:20~21:00
場所
オンライン開催(ZOOM)
レポート
デジタルハリウッド大学 2年 堀合 桜子
2021年12月2日、デジタルハリウッド大学では特別講座『墨田クリエイターズバトン第1回 【地域とクリエイターの化学反応】』を開講しました。
講師を務めてくださったのは、有限株式会社モアナ企画取締役の三田大介さんです、三田さんは、地域コミュニティの活性化に関する企画・デザイン・コーディネートを行っており、今回はクリエイティブな力を地域の活性化に活かす方法についてご講演いただきました。
本講座はZoomによるオンライン中継での開講となりました。

地域活性化活動のきっかけ
三田さんは大学で土木工学を学ばれた後、卒業後は建築コンサルタントとして橋の設計をされていました。土木デザインは人の安全が第一のためデザインが保守的になってしまうこともあり、当時の三田さんはさらに面白いデザインの仕事がしたいと考えたそうです。30代でデザイン事務所に転職した後、40代の時に地元墨田区にスカイツリーが建設されることにをきっかけに、三田さんは地元のために何か活動したいと思い、現在は独立して地域活性化のコーディネーターとして貢献されています。
三田さんは特に30代のデザイン事務所の仕事が印象的だったとお話され、2つの例を挙げられました。
1つ目は岐阜県の小鳥トンネルです。小鳥トンネルでは空間が狭いことや、走っていると車の速度や現在位置がわからなくなるなどの問題がありました。デザイン事務所はこれらの問題を解決するため、トンネルの壁画に色と配置のパターンの変化を利用したデザインをしました。白く塗装した壁の上に車から見える自然な色域を用いて線を配置したそうです。このデザインにより小鳥トンネルが抱えていた問題を解決しました。
三田さんは、「この小鳥トンネルのデザインのように静止画だけではデザインの効果がわかりにくい場合は、CGなどを使用した動画を用意して視覚的にデザインの効果を確認できるようにしたなどプレゼンテーションの工夫がされています」と仰っていました。
2つ目は新宿の南口にある仮囲いのパブリックメディアとしての利用です。新宿駅南口は約15年以上も工事をしていました。当時の駅の周りは工事用の白い壁、仮囲いが多くあり、デザイン事務所では殺風景に見える新宿駅をもったいない、何か生かせないかと考えたそうです。
どうにか活用する方法はないかと考えた末、仮囲いをパブリックメディアにするアイデアがあがりました。国土交通省から許可を得ることができ、今の新宿を伝えるパブリックメディアを仮囲いに掲載しました。等身大の新宿を見てもらうため、新宿の人々を撮影し、新宿で働く様々な人に取材をしていくうちに、三田さんは「知れば知るほど街は面白い」と感じたそうです。この新宿駅の仕事から、三田さんは地域に関わる仕事の面白さに気づき、地元の墨田区のような下町をより探究したいと思い、地域の資源や課題をつなげて新しいことや面白いことを生み出せたらと考えるようになったとお話しされていました。
すみだクリエイターズクラブとは
三田さんがコーディネーターとして所属するすみだクリエイターズクラブは、墨田区に在住在勤のクリエイターが集い、すみだ&下町を面白くするために2014年から約30人程度のクリエイターが中心となって活躍しています。
すみだクリエイターズクラブのロゴマークは相撲取りの髷を、線は糸をイメージして描かれており、「クリエイターが物事をつなげる存在になりたい」という思いが込められているそうです。

すみだクリエイターズクラブは地域の人材を見える化し、繋げています。様々なプロフェッショナルが集まり、お客さんのニーズや目的に応じてマーケティング、ブランディングなども含めたクリエイターチームを組んで、行政や地域企業のパートナーとしてデザインの力で問題を解決しているそうです。
講義の中では、すみだクリエイターズクラブに所属するクリエイターが手掛けたデザインも紹介していただきました。講義参加者の中には実際に紹介されたデザインを目にした方もおり、「魅力的なデザインに思わず立ち止まって見てしまった」という感想もコメントとして寄せられました。
三田さんはすみだクリエイターズクラブの活動に対し、「色々な事業に関わることで今まで知らなかった職業の方にも出会うことができました。そして出会いが新しい挑戦へと導いてくれました。」とおっしゃっていました。
地域の課題と課題の掛け算で新しいことを作る“すみのわ”
三田さんがチームで8年継続して行っている事業”すみのわ“は地域連携型福祉プロジェクトで、「地域の課題と課題の掛け算で新しいことを作る」をモットーに活動しています。具体的にご紹介いただいた知的障がい者の多い福祉施設では、
・商品開発の専門家を雇用する時間がないこと
・自主生産品の材料に当てられる予算が限られていること
・日常業務に追われて、販路を広げることができないこと
という課題があったそうです。
これらの問題に対しチームでは、クリエイティブな力で課題を解決できないかと考え、その結果、町工場の廃材を組み合わせた商品を提案されました。墨田区は農業などの第一次産業はありませんが工業などの第二次産業は多くあります。第二次産業を担っている町工場には紙の端材や布切れなどの質のいい廃材が沢山出るそうです。これらの廃材を使ったオリジナル商品は、町工場の廃材の処分費用を減らし、福祉施設は安い材料費で工賃をあげることができるWin-Winの関係になったそうです。

まとめ
三田さんは最後に、「クリエイターは化学反応を起こすための触媒になります。触媒は一般に特定の化学反応を加速させてくれ、触媒のようにクリエイターもクリエイティブな力を社会や人のために使かうことでクリエイターならではの視点で地域資源の発掘、地域の資源と課題の掛け算、そして人と人をつなげ環境を作ることができると思います。今皆さんは勉強していると思いますがそれらを地元や街に活かしてもらえればと思います。ぜひ頑張ってください。」と参加者に対してメッセージを送ってくださいました。