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開催終了
【開催レポート】面白法人カヤック・山口 真吾氏による特別講義「面白法人の面白コンテンツのつくり方」

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【開催レポート】面白法人カヤック・山口 真吾氏による特別講義「面白法人の面白コンテンツのつくり方」
開催日時:2023年7月13日(木)16:00~17:00 場所:デジタルハリウッド大学駿河台ホール |
2023年7月13日にデジタルハリウッド大学(DHU)では、面白法人カヤックのコピーライター・山口 真吾氏をお招きし、特別講義「面白法人の面白コンテンツのつくり方〜面白いには種類がたくさんある。あと面白い人生の過ごし方もお話しします!〜」を開催しました。
山口氏はこれまでに、コピーライターやクリエイティブディレクター、広告プランナーなどを複数社で経験し、面白法人カヤックへ転職。クリエイティブ職として約20年活躍されてきた経験を元に、面白いコンテンツができる法則や、クリエイターを続ける秘訣などをお話しいただきました。

「まちづくりからうんこまで」を手掛ける面白法人カヤック
山口氏が所属している面白法人カヤックは、面白プロデュース事業や、ゲーム・エンタメ関連事業、eスポーツ関連事業、まちづくり事業など、さまざまな価値を提供しています。
面白法人カヤックの本社は、神奈川県鎌倉市。そして、ただオフィスがある、というわけではなく鎌倉のまち全体をオフィスとして、地域の方なら誰でも利用できる「まちの社員食堂」や「まちの保育園」などを運営しています。まちづくり事業の一環も担っているのです。


一方で面白法人カヤックでは、うんこミュージアムのような企画展を開催することもあります。「うんこ演算」や「UN高」など、これまでに数々のうんこコンテンツを生み続けました。中でもうんこミュージアムは全国各地や海外でも開催され、爆発的にヒットしました。
そのほかにも日清食品のカップヌードル発売50周年を記念した企画「カップニャードル」、DHU生やプロのクリエイターの失敗作を展示する「失敗作ミュージアム」のようなプロデュース事業も展開しています。
面白い!を生み出す法則とは
面白法人カヤックに所属していると、社名から「面白いアイデアを作ってください」と言われる機会が非常に多く、そもそも面白いとは何なのか、山口氏は自問自答することが多いと言います。
面白いと言っても、お笑い的な面白さ、最先端の技術を体感する面白さ、IPやSNS文脈を応用した面白さ、企画自体の骨太な面白さなど多岐に渡るうえ、人によって面白いと感じるものは違う。結局は感情をどれだけ強く動かせるかしかなさそうだ…と。
悩みに悩んだ末「結局、人は欲張りな生き物だから全部乗せが最強なんだ」ということに気づいたそう。ラーメン屋の券売機で最も上にボタンがあるのが全部乗せのラーメンであるように、いろんな要素を盛りに盛ったコンテンツは興味深いし、面白くなるのだと言います。
たとえば、「転生」「サスペンス」「芸能界」「アイドル事務所の実態」などの要素が盛り込まれた『推しの子』や、「親子愛」「恋愛」「復讐劇」「飲食業界での成り上がり」などの要素がある『梨泰院クラス』など。ヒット作品には、興味を引く要素が複数盛られているという共通点がある。(器の大きさに対しての盛りすぎにはもちろん注意です)
山口氏はこの法則に気づき、知的財産の大切さをサバンナで普及啓発する動画「スタートアップ社長 in サバンナ」にもさまざまな要素を盛り込み、束にしてコンテンツを制作しました。広告なのに見てしまう動画としてYouTubeやTwitterを中心に拡散され、公開からおよそ2ヵ月で合計346万回再生を記録しています。

「ホラー」をテーマに、面白くなりそうな企画を考えよう
講義の中盤では、山口氏に教わった企画の考え方を参考に、「学生自身がホラー映像を作る場合、どんな要素を盛り付けたら面白くなりそうか」をワークショップ形式で考えていきました。
たとえば、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』は「銭湯」「家族愛」「余命宣告」などの要素が盛られていますが、最後に「ホラー」要素が食い込んできて物語が完結します。
今回のワークショップでは、『湯を沸かすほどの熱い愛』のように、“ホラーが主軸ではない”が”ホラー要素がある”映像の企画案を考えました。
山口氏が「このフォームにホラー要素と組み合わせたら面白くなりそうなアイデアを書いてみてください」と学生にフォーム渡すと、ミュージカル、大食い選手権、眼球(めだま)焼き、ゴリラなど、ホラーとどのように結びつくのか見当もつかない、さまざまなキーワードが集まりました。
山口氏は「バズりそうな要素をたくさんいただきましたが、この中からメインとなる要素を決めて、ストーリーを考え始めると良いですね。単純にホラー映像を作るよりは、1本2本3本と矢を増やすことで面白さも増していくはずです。」と話します。
実際の作品を紹介したりワークショップを実施したりすることで、現代の面白い企画にはほぼ一つの構成要素ではできておらず、さまざまな要素が盛り付けられていることを強調しました。一つ面白い基点を見つけただけで満足せず、重層的にネタを重ねて破壊力のあるコンテンツを作ることが大切だそうです。
自分の正解を自分で決められれば、息の長いクリエイターになれる

ワークショップの後は、山口氏の社会人生活へ話が移ります。約20年のクリエイター人生の中で、年次が若かったのもありリーマンショックの影響で大量解雇されたことがあったそうです。
フリーランスで一年ほど活動していらっしゃったそうなのですが、その時に究極言ってしまえばコンビニでバイトしても楽しく働けると気づき開き直れたそうです。コンビニの仕事って観察すると、色々あって大変そうだけど面白いですよね。タバコ銘柄だけでも100以上置かれていて番号があったり。そんな風にどの場所にでも面白い部分って見つかるんだなと。極端な話、世界中のどこで働いても、自分はそれぞれの仕事の楽しい部分を見つけられる。そのことが分かり自信がついたそう。
その後は外資系の広告代理店へ転職し、現在の面白法人カヤックに至るまで、国や行政、IT企業のWeb動画をはじめ、大河ドラマや大手フリマアプリWebサイトなど、さまざまな広告企画に携わってきました。
「長年クリエイターをしていると、自分と他人を比べたり、賞に媚びたり、世の中にとっての正解を優先したり、気分が落ち込んでしまったりすることがあります。才能があったのに、自分の本当の声が聞こえなくなったりする人も多い。ですが、”自分の正解は自分で決める”という鉄則を覚えておいたからこそ、自分が満足できる結果になりやすく、仕事を続けてこられたんだと思います」と、山口氏からクリエイターとして活躍し続けるためのヒントを教えていただきました。

質疑応答
特別講義終盤には学生からたくさんの質問が寄せられました。
Q. 面白い要素を見つけるために、どんなインプットをしていますか。
A. ネット上で参考になるネタや記事があったら、ひとことだけメモをしておきます。この前は「今のアイドルは、世界中から顕微鏡で一挙手一投足を見られているようなものだ」といった内容の記事を見かけて、現代の監視社会をテーマにして顕微鏡モチーフが、いずれ何らかの企画になりそうだと思って書き留めました。
Q. 自分の仕事が、趣味や好きなことにつながっている場合、仕事とプライベートの境界線が曖昧になることはありますか?
A. あります。それで疲れてしまい、別の仕事を選ぶ人もいます。でもそれは悪いことではなくて、自分に合う新しい仕事が見つけられればそれも良い人生の選択肢だと思っています。ただ、カヤックにはプライベートと仕事の境界線が完全に溶けている人もいて、その人はその人でイキイキと稼いでいます。
Q. 「面白い」には人によって基準があると思います。企画がまとまらないときはどうやって決めますか?
A. 最終的にはそのチームのプロジェクトオーナーが決めますが、その前段階で、キャリアや年齢など関係なくフラットに話し合っています。ちなみにカヤックは営業担当がいないため、仕事を取ってきた人が主導権を握ってプロジェクトを進行させることが多いです。

コピーライターやクリエイティブディレクターをしている山口氏ですが、面白法人カヤックでは「ぜんいん人事部」制度があり、氏を含む全社員が採用担当です。最後に山口氏からDHU生へインターンのお誘いをいただき、特別講義は終了しました。