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【開催レポート】遠藤貴則氏による公開講義「ザ・ニューロマーケティング 最新の科学が暴いた消費者の「買いたい」を行動につなげるビジネス戦略」

【開催レポート】遠藤貴則氏による公開講義「ザ・ニューロマーケティング 最新の科学が暴いた消費者の「買いたい」を行動につなげるビジネス戦略」
2026年4月17日、デジタルハリウッド大学は公開講義「ザ・ニューロマーケティング 最新の科学が暴いた消費者の「買いたい」を行動につなげるビジネス戦略」を開催しました。担当講師はニューロマーケティングの第一人者・遠藤 貴則氏です。
遠藤氏は、⽶国アルビズ⼤学⼤学院にて臨床⼼理学博⼠課程修了(法廷⼼理学特化)後、⽶国オレゴン州にて臨床⼼理学者の国家免許を取得。FBI、CIAの捜査・調査⽀援に携わり、犯罪⼼理、依存、再犯防⽌分野での実務経験を積み、現在は「脳がYESと⾔ってしまう構造」をビジネス・教育・組織開発へ転⽤する活動を展開しています。
本講義では、法廷臨床⼼理学と脳科学を基盤に「⼈が意思決定してしまう瞬間」を科学的に解明し、ビジネス・マーケティング・教育へ応⽤するニューロマーケティングについて解説しました。
注意力を奪い合う時代。「選んだつもり」は本当に自分の選択なのか

日々あらゆる情報が、アルゴリズムを通して私たちに届けられる現代。遠藤氏はそんな2020年代のマーケティング戦略を「消費者の注意力の奪い合い」であると語り、「本当にあなたは自分で選んでいるのか?それとも選ばされているのか?」という問題提起から講義はスタートしました。
「2000年代ごろにロイターなどのメディアが『新しい経済の通貨は注意力である』と伝えました。多くの集中と注意を得られるか否かがお金に直結すると言うんですね。そして今では、Web広告をはじめ各企業が集中力の奪いをしています。なので、今の時代を紐解きたいなら、人は何に注意を求めているのかを知ることが重要です」
こうしたマーケティングの仕組みを知らないと、無意識的に注意力を奪われ、判断が短絡化すると遠藤氏は警鐘を鳴らします。
「一番怖いのは、人生にかかわる選択でも判断の短絡化が起きていることです。医大で講義をさせてもらった際、学生に医者を目指した理由を聞きました。すると一定数、親に言われて医者を目指している人がいる。本当になりたいのであればいいのですが、本当に自分の選択なのか、考える必要があると思いましたね。もし判断の短絡化が起きていた場合、先に待っているのは『何に俺は時間を費やしたんだろう』という空っぽな感覚です」
では、どうすればより良い選択が出来るようになるか。
脳の状態において最も生産性の高い状態を「フロー」と呼びます。このフローになるには、物事に8分以上集中する必要があるものの、現代は注意力を奪い合う時代。通知、広告、オススメなど、集中を阻害するものに溢れ、全員の生産性が落ちているといいます。
つまり、より良い選択や判断をするためには、8分以上集中できる環境を作る必要がある。買い物であれは、その商品が本当に欲しいのか、邪魔されることなく8分間吟味しなければならない。それが最良の意思決定をする方法だと、遠藤氏は話します。
人は考えて買うのではなく、感じてから理由を作る
講義は、購買行動における意思決定の話に移っていきます。
遠藤氏は消費者の購入プロセスを「私たちは考えて買ったと思っているが、実際には感じてから買い、理由はその後に作られている」と説明します。第一印象や雰囲気、ブランドイメージなど、マーケティングによって手渡された「後付けの理由」に大きく影響されているのです。
「脳は混乱するとドロップオフと呼ばれる買わない選択をします。何を言っているか分からないから買えないんです。マーケティングが上手な企業は、商品の説明が上手い。要するに買いやすい状態を作っているんですね。人間は8~9秒で判断して離脱していきます。伝わらない情報を排除することはとても重要なんです」
また、同じ情報でも伝え方によって印象が大きく変わるフレーミング効果の体感ワークが行われました。ワークは、小中大3つの選択肢として、500円、800円、820円の商品が並べられたとき、どれを選ぶかというもの。学生たちは直感的に真ん中の金額との価格差の小さい820円が得に感じ、選ばれやすくなる「デコイ効果」を体感しました。

ブランド・価格・選択肢。買いやすさを設計するニューロマーケティング
商品の第一印象やイメージは、「ブランド」そのものです。遠藤氏は、ブランドには体験を変えるほどの力があることを、「コカ・コーラの味覚テスト」を引用して解説しました。
このテストは、中身がペプシコーラ、パッケージがコカ・コーラのドリンクを飲むと、コカ・コーラの味だと思い込むというもの。このテストでは、ペプシコーラ、コカ・コーラを飲んだ際の脳反応まで調べられています。結果、中身とパッケージが異なるコーラを飲んだ場合、ペプシを飲んでいるのにコカ・コーラの反応、コカ・コーラを飲んでいるのにペプシの反応が検出されました。
「端的に言えば思い込みなんです。ブランディングが最高峰に到達すると、中身に関係なく脳がそれだと判断する。ブランドは単なる装飾ではなく、体験価値の一部なんですね」と、ブランドの重要性を説きました。
また、価格設定も重要な要素のひとつ。人は支払い時に痛覚と近い神経反応を示します。そして支払いの痛みは金額だけでなく、不安や手間にも関係します。
「支払の痛みを減らすには『不安』『手間』『迷い』を減らすことが大切です。選択肢は多すぎてもダメで、13個以上になると人は選択できなくなります。ベストは3つか、5つです。そこまで自分で絞ることで満足する選択ができるといわれています」
選択肢が多いことは親切に見えるが、迷いによる離脱につながると注意喚起しました。

質疑応答
Q.選択肢は「3つ」か「5つ」というお話でしたが、4つではダメなのでしょうか?
A.4つではダメです。理由は脳の納得材料にあります。人が納得する選択肢の平均値が3つで、最大でも5つ。納得しない人はいくつ選択肢を与えられても納得しません。なので、分からないなら最大値をとるという意味で5つになっています。納得して選べる状態を作ることが重要なんですね。今回、買い物の例を中心に話しましたが、「買い物に価値を見出したか否か」は満足度の指標になります。商品・サービスを買った後の価値の有無は、使ったかどうかで判断できます。逆の視点で考えると、人生の満足を高めたいなら、得たものを何でも使おうとすることが大事ですね。
Q.グッズをたくさん買うのを辞めたいです。どうすればいいでしょうか?
A.一度止まって考えなければいけないのが、「何のために買っているのか」です。その商品を買って、自分は何をしたいのかを問い直す必要があると思います。そのために、一度完全に買うのを止めてみることをお勧めします。知り合いや友達にも言って、止めさせてみてください。ものによって異なりますが、3日~6週間ほど経てば興味は離れていきます。ロゴを見たら買いたくなる「シグナリング」と呼ばれる効果があるのですが、購買意欲を掻き立てるトリガーを断つことを意識してみてください。

ニューロマーケティングは「操作」ではなく「洞察」である

講義の最後に、ニューロマーケティングの本質的な役割を学生たちに伝えました。
「ニューロマーケティングは『操作』ではなく『洞察』です。言いたくはないですが、不安を煽り、恐怖や焦りを利用するようなケースも存在します。ですが、本来の使い方は『買うべき人が買いやすく、買うべきでない人が早くNOをいえる設計』をつくること。これがニューロマーケティングが作られた理由です」
本当に欲しいものを選べる世の中を作るための考え方がニューロマーケティングであることを、学生たちに伝え、講義は終了しました。
文:ババショウタ


