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【開催レポート】株式会社リヴァによる特別講義 「社会人になっても長く活躍するために~リワークを知り、体感する90分プログラム~」

【開催レポート】株式会社リヴァによる特別講義 「社会人になっても長く活躍するために~リワークを知り、体感する90分プログラム~」

2026年5月22日、デジタルハリウッド大学は公開講義「社会人になっても長く活躍するために~リワークを知り、体感する90分プログラム~」を開催しました。

講師には、メンタルヘルス不調からの社会復帰支援を行う株式会社リヴァの岡山氏をお招きしました。

株式会社リヴァは「自分らしく生きるためのインフラをつくる」を理念に、メンタル不調や精神疾患などによって休職・離職した方の社会復帰支援サービス「リヴァトレ」を提供しています。これまでに2,000名以上の復職・再就職を支援し、復職後の定着率は約90%にのぼります。

本講義では、架空の若手社員の物語を題材に、ストレスとの向き合い方や対処法、そして休職した際に利用できる社会資源について、ワークショップを交えてお話しました。

メンタル不調は誰にでも起こりうる

「メンタル不調による休職が誰にでも起こりうるということを、本講義の前提としてお伝えします」

将来就きたい職業や実現したい夢を考える時、多くの人は自分が健康であることを前提にしています。しかし、心身の健康は決して保証されたものではありません。

「皆さんは将来やりたいことを実現するために、大学で学んでいるはずです。長く活躍し続けるために、ストレスとの向き合い方を知ってほしい。そして、もしもつらくなった時には頼れる場所があることを知っておいてほしいです」

本講義の目的は2つ。1つは「ストレス対処を学ぶこと」、もう1つは「社会資源を知ること」です。架空の若手社員・翔太くんの物語を通じて、メンタル不調と向き合う方法を考えていきます。

知識があると、対処の幅は大きく広がる

翔太くんはリヴァ商事に勤めて2年目の若手社員。仕事は忙しいものの、ジョギングや友達との飲み会などの趣味を楽しみながら、充実した日々を送っています。ある日、事件が起こります。仕事上のミスによって問題が生じ、顧客からクレームを受けてしまいました。

上司に報告しなければいけないものの言い出せず、問題を抱えたまま帰宅。眠れない夜を過ごしました。翌日勇気を出して報告したものの、上司からは「どうしてすぐ言わなかったんだ!」と怒られてしまいました。

「頭では分かっているのに行動できず、結果として状況が悪化してしまった。そんな経験は皆さんにもあるのではないでしょうか」

岡山氏はそう問いかけました。続いて、今の翔太くんの立場に立って、自分ならどのようなストレス対処をするか各自で考える時間が設けられました。学生がスマートフォンを通じて回答を送信すると、リアルタイムでモニター画面に表示されます。

「8時間寝る」「カラオケに行く」「飲みに行く」「忘れて次のことを考える」といった意見があがりました。

「8時間寝る。とてもいい答えですね。何時間寝れば自分は元気になるのか、知っていることがとても重要です。わからない、という答えも正直でいいですね。自分がどんな手段を持っているのか、いないのか。把握していることが大切です。それでは、皆さんにストレス対処の方法をお伝えします」

会場のモニターに、指で押されてへこんだゴムボールの絵が投影されます。ボールを押す指がストレスの原因、ボールのへこみがストレスを受けた状態を表します。ストレスへの対処には4つの着眼点があるといいます。

A:きっかけへの対処
ボールをへこませる指を退けるアプローチです。仕事量の調整や優先順位の整理、周囲への相談などが該当します。ストレスの原因そのものに働きかける対処法です。

B:捉え方の変換
指がボールに当たる角度を変えるアプローチです。状況を書き出して客観的に整理したり、別の視点から考えてプラスに捉え直す対処法です。同じ出来事でも、見方を変えることでストレスの感じ方は変わります。

C:注意サインの発散
ボールがへこむと、全体に圧力がかかる。その圧力を逃すアプローチです。趣味や運動などを通じてストレスを発散する方法です。自分なりの気分転換の方法を持つことが重要です。

D:自分の健康を見直す
ボールの強度を上げるアプローチです。ボールはへこんだとしても、指が離れれば元の形に戻ります。しかし空気が抜けてボロボロだと、一度へこむと元に戻りません。健康の3要素と呼ばれる、「運動・食事・睡眠」を中心に、生活習慣を整えストレスに耐えられる土台をつくることです。

4つの着眼点を踏まえた上で、もう一度ストレス対処を考えるワークを行いました。今回は各自で考えたのち、グループで意見交換を行います。会場から「わかる」「それは思いつかなかった」という声があがりました。

「リヴァトレでもグループワークをたくさん行います。共感が生まれますし、自分にはない対処法を知ることができます。他の人の考えを知ることで、相対的に自分の特性や弱点に気づくきっかけになります。自分に合ったストレスへの対処法を知っておくことがとても重要です。知識があれば、対応の幅が大きく広がります」

状態が悪い時には、取れる手段が少なくなる

翔太くんの物語は続きます。

ミスを取り返そうと、翔太くんは仕事に没頭することに決めました。生活のための時間は二の次。次第に生活リズムが乱れていきます。趣味のジョギングはやらなくなり、友人の誘いにも応じなくなりました。健康状態が徐々に悪化するなか、さらに経験のない新しい仕事を任されることになります。

今度は状態が悪い翔太くんの立場で対処法を考えるワークを行いました。会場からは「寝る」「休む」といった答えがあがります。はじめのワークであがった「カラオケに行く」「飲みに行く」のようなアクティブな答えはありません。

「状態が悪い時は、対処の選択肢が限られます。風邪と同じで、引きはじめであれば、薬を買ったり食事を工夫したりと自分で対処できますが、高熱が出てからでは病院に行って寝込むことしかできません。状態の良し悪しによって取れる行動が大きく変わります。悪くなる前に対処することが肝心です。そのためには不調のサインに早く気づく必要があります」

ある朝、翔太くんは布団から起き上がれなくなります。理由もなく涙が止まらず、会社からの電話にも出られない。その日の夕方、なんとか上司に連絡を取ったところ、メンタルクリニックの受診を促されます。そして、うつ病と診断されました。

「メンタル不調は突然起きるように見えて、実は少しずつ積み重なってきた結果です。コップに水が少しずつ溜まり、やがて溢れ出すイメージです。クレームを受けて、上司に報告できなかった。誰にでもあるような出来事がきっかけで、翔太くんはメンタル不調に陥ってしまいました」

前の自分に戻るのではなく、真新しい自分になる。

休職後の翔太くんは、しばらく外出も難しい日々を過ごしました。

数か月が経ち、少しずつ回復してきた頃には、「また働きたい」という気持ちが芽生える一方で、職場で怒られた記憶のフラッシュバックや孤独感にも悩まされます。翔太くんは主治医に復職したい気持ちを相談しました。そこで紹介されたのがリワークでした。

「休職中に孤独を感じる方は多いです。職場を離れることで社会との距離が生まれます。心配をかけたくない思いで、友人や家族にすら休職していることを言えずに孤立してしまうケースもあります。実際、リヴァトレに通い始めた方が最初に驚くのが、こんなに休職者がいるんだ、ということです。休職しているのは世界に自分だけだと思っていた、と話す方が多い」

リワーク(Return to Work)とは、メンタル不調によって休職した方が職場復帰を目指すためのリハビリテーションプログラムです。医療機関や公的機関のほか、株式会社リヴァのような民間企業が運営し、復職に向けた準備を段階的に進めていきます。

「うつ病の再発率は60%ともいわれています。休んで体力が戻っただけで職場に復帰すると、再び同じ状況に陥ることがあります。大切なのは復職することではなく、長く働き続けられることです」

リヴァトレでは、週2日の通所からスタートし、最終的にはフルタイム相当の活動量を目指します。その過程で重視されるのが、次の4つの要素です。

①復職後を想定した生活習慣を身につける
睡眠や食事などの生活リズムを整え、安定した日常を取り戻します。

②職場で働く力の回復・向上を図る
グループワークやプレゼンテーションなどを通じて、実際の職場を想定したコミュニケーションを行います。

③疾病・ストレス対処法を身につける
自分の特性やストレスのパターンを理解し、再発防止につながる対処法を身につけます。

④働き方・生き方の再構築をする
休職期間を、自分の価値観や人生を見つめ直す機会として活用します。

「休職はネガティブに捉えられることがほとんどですが、実は自分が本当にやりたいこと、目指したい方向を見つめ直す良い機会になります。働いた経験をもとに、一度立ち止まって考える機会はなかなかありません。前の自分に戻るのではなく、真新しい自分になっていく。それがリワークのゴールです。そのためにリヴァは、自分を見つめ直す機会を大切に考えています」

その後、翔太くんはリヴァトレに通いながら同じ経験を持つ仲間と出会い、少しずつ自信を取り戻していきます。週5日通所できるまで回復したのち、産業医との面談を経て復職が決定しました。

質疑応答

講義後には質疑応答も行われ、学生から質問が寄せられました。

Q. 楽しいことをしていても疲れてしまうことがあります。体力をつけるべきでしょうか。それとも休むことを優先すべきでしょうか。

「楽しいことに没頭し、時間を忘れて取り組むことはとても大切です。けれど講義でお話したように、コンディションが悪化してからでは遅い。まずは自分のサインに気づくことが重要です。朝起きるのがつらくなる、LINEの返信が億劫になるなど、コンディションが悪くなった時にどのような変化が現れるのかを把握しましょう。早い段階で対処できるようになります」

Q. 休職中の収入面が不安です。経済的なサポートはありますか。

「リヴァトレは、1割負担で利用することができます。残りの9割は公費で賄われるため、利用には自治体への申請が必要です。また前年の世帯収入をもとに負担金額の上限が設けられており、多くの場合は月額9,300円以内で利用できます。傷病手当金や企業独自の給付制度などを活用できるケースもあり、一定の収入を得ながら休職することができます。経済的な不安があっても利用できる制度があります。まずはリヴァに相談してください」

将来、つらくなった時に「助けがある」と思い出してほしい

講義の最後、本学でメンタルヘルスを教え、今回の講義の企画に携わった吉田先生から、次のような言葉がありました。

「学生の皆さんはこれからやりたいことに向けてチャレンジしていく段階だと思います。長く好きなことをやり続けるためには、しっかり知識を持って、困ったら相談できる所を知って、使っていくことが大事です」

うつ病の再発率は2年で6割程度にのぼるといいます。社会復帰を果たしても、6〜7割の方が続けられなくなります。一方リワークをすると、社会復帰から3年後でも7割程度が勤務を継続できるといいます。不調に陥った際はしっかり治療し、再発を防止することが重要だと、吉田先生は言いました。

「とにかく自分の人生を大事にしてほしい。好きなことをいっぱい楽しんでほしい。そう思ってこの講義を企画しました。メンタルヘルス不調になることは当たり前で、WHOも今後はメンタルヘルス不調が世界で一番多い病気になると予想しています。インフルエンザにかかった時にどうしたら良いかを知っているように、メンタルヘルスに対しても正しい知識をしっかり持ってケアしていきましょう」

文:大谷航平