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【開催レポート】特別講義「『仮面ライダーの作り方』キャラクタービジネスとマーチャンダイジングの全て」

【開催レポート】特別講義「『仮面ライダーの作り方』キャラクタービジネスとマーチャンダイジングの全て」

2026年7月28日、山辺浩一氏(株式会社石森プロ取締役)が登壇する特別講義「『仮面ライダーの作り方』キャラクタービジネスとマーチャンダイジングの全て」がオンラインで開催されました。マーチャンダイジングの原初としての仮面ライダー1号から、最新作『仮面ライダーマイス』まで、キャラクタービジネスの歴史と背景について、学生たちに解説しました。

「仮面ライダー」のビジネスモデル――キャラクターとマーチャンダイジングの歴史

仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎氏が生み出したヒーローです。1971年の放送開始から今年で55周年を迎え、昭和、平成、令和の3世代にわたって展開されてきました。現在では日本だけでなく、中国やアジア圏にも人気が広がっています。

今回の講義で山辺氏がまず解説したのは、仮面ライダーをはじめとするキャラクタービジネスの仕組みです。その中でも重要なキーワードとして挙げられたのが、「マーチャンダイジング」です。マーチャンダイジングとは、作品に登場するキャラクターやアイテムを玩具などの商品として展開し、映像作品と商品を連動させるビジネスです。仮面ライダーの場合、番組を見た子どもが「かっこいい」と感じ、そのキャラクターやアイテムを実際に欲しくなるような仕掛けが作られています。

その中心となったのが「変身ベルト」です。山辺氏は、鉄腕アトムや鉄人28号、ウルトラマンなどの歴史を振り返りながら、日本のキャラクタービジネスが、キャラクターと玩具を結びつけることで発展してきたと説明しました。なかでも仮面ライダーの変身ベルトは大きな転機となりました。玩具の売上によって番組制作を支え、そこで得られた収益をさらに作品へ還元する。こうして、「商品が売れることで作品を豪華にでき、作品が面白くなることでさらに商品が売れる」という共存関係が生まれたのです。

その後、マジンガーZの「超合金」などにもこの流れは広がり、現在の日本独自のキャラクタービジネスの基盤が形成されていきました。

「仮面ライダーW」はどう作られた?――ヒーロー、商品、物語をゼロから設計するていることが強みになる

こうしたビジネスモデルを背景に、山辺氏が実際の制作事例として紹介したのが、2009年に放送された『仮面ライダーW』です。

『W』の企画が始まった当時、平成前期の『仮面ライダーキバ』はビジネス面で苦戦していました。そこで、それまで1月ごろだった仮面ライダーの放送開始時期を9月へ変更。クリスマス商戦に合わせて新商品の展開ができるよう、番組の放送スケジュールそのものを見直しました。さらに、放送開始までの期間には『仮面ライダーディケイド』を挟むことに。結果として『W』の制作時間が増え、作品の内容をさらに練り込むことができたといいます。

「『W』が失敗したら、しばらく仮面ライダーはお休みになるかもしれない、という状況だったんです」。そんな状況からスタートした『W』。山辺氏たちは、まず「どんなヒーローにするか」というところから考えました。そこで生まれたのが、左右で異なる色と能力を持ち、2人で1人の仮面ライダーになるというアイデアです。

さらに、「子どもが触ってはいけないものを、面白く見せよう」という発想から、USBメモリをモチーフにした「ガイアメモリ」を設定。異なるメモリを組み合わせることで、さまざまなフォームに変身できる仕組みを作りました。

ただし、玩具としては組み合わせを増やしたい一方で、フォームを増やしすぎれば物語が複雑になってしまいます。「バンダイさんは、左右の組み合わせを無限に作りたい。でも、それを全部やってしまうと、お話としては取り留めがなくなるんです」。そこで、商品展開の可能性を残しながらも、ストーリーとして成立する範囲にフォーム数を調整していきました。

また、過去のヒーロー作品に登場した「2人で1人になるヒーロー」の事例も研究。『ウルトラマンA』や『超人バロム・1』などを参考に、2人のキャラクターをどのように組み合わせれば、視聴者が自然に受け入れられるのかを考えました。

そして、物語の軸として採用されたのが「探偵」です。地球上のあらゆる情報を検索できる天才・フィリップと、人情派の探偵・左翔太郎。シャーロック・ホームズとワトソンのような対照的な2人を主人公に設定しました。フィリップが検索によって事件の手がかりを探し、翔太郎が実際に街へ出て人と接する。それぞれ異なる方法で情報を集め、2人が力を合わせて事件を解決する構造です。

さらに、探偵事務所のメンバーとして鳴海亜樹子を加えました。「視聴者と同じように、『え、何これ?』って驚いてくれる人が必要だったんです」。亜樹子は、視聴者と同じ目線から仮面ライダーや事件の謎を受け止めるキャラクターとして機能することになりました。

「商品を売るための番組」にしない――玩具とストーリーをどう両立させるか

『W』の制作で特徴的だったのは、企画段階ですべての内容が決まっていたわけではないことです。

実際の制作現場では、番組を作りながら玩具メーカーやテレビ局などからさまざまな要望が入り、そのたびにストーリーを調整していきます。『W』でも、変身アイテムだけでなく、巨大マシン「リボルギャリー」や2号ライダーの「仮面ライダーアクセル」など、制作途中から新たな商品やキャラクターが追加されました。特にアクセルは、当初のシリーズ構成には存在していなかったキャラクターです。

そこで山辺氏は、翔太郎やフィリップとは対照的な「復讐の鬼」というキャラクター性を設定。単に新しい仮面ライダーを登場させるのではなく、物語の中で明確な役割を持たせました。「新しい商品が出るから、それを出しました、というだけにはしたくなかったんです」。高額な武器についても、ただ持たせるだけではなく、印象に残る演出を考える。ガジェット類についても、可能な限り物語の中に組み込み、キャラクターの行動や事件解決に活用する。こうして、商品とストーリーを別々に考えるのではなく、「商品が作品の中でどう意味を持つのか」を考えながら制作していきました。

一方、物語の後半では家族のドラマを中心に展開。夏の映画に向けて伏線を張りながら、登場人物たちの関係性や謎を整理していきました。しかし、その裏では次作『仮面ライダーオーズ』の企画もすでに始まっていました。

『W』のヒットによって玩具の売上が大きく伸びると、次の作品では「これだけ売れる」という前提のもと、商品数も増えていきます。その結果、玩具の展開がストーリーの内容に影響する場面も増えていきました。「しっかりお金は稼ぎつつ、お話としては破綻しないように工夫する。そこはずっとやっています」。キャラクタービジネスでは、作品としての面白さと、商品としての魅力の両方が求められます。その二つをどう両立させるか。そこに、仮面ライダーを作る仕事の難しさがあるといいます。

「売れる」だけでは終わらない――世界に広がるキャラクタービジネスへ

山辺氏が大切にしているのは、商品を売ることだけではありません。

『W』では、敵が使用する「ガイアメモリ」を薬物のメタファーとして設定しました。メモリを使うことで強大な力を得られる一方、次第にその力なしでは満足できなくなっていく。こうした設定を通して、子どもたちに「危険なものには手を出してはいけない」というメッセージを込めています。

「単純におもちゃを売ればいいとは思っていなくて。見たからには、何か考えることとか、心に残るものがあるといいと思っています」

そこには、石ノ森作品から受け継いだテーマもあります。山辺氏は、石ノ森作品には「悪いのは技術ではなく、それを使う人」という考え方があると説明しました。新しい技術や力そのものを否定するのではなく、それをどう使うのかを問う。その考え方を『W』の物語にも取り入れたのです。

一方で、マーチャンダイジングそのものは日本独自のものではありません。山辺氏は、ディズニーや『スター・ウォーズ』を例に挙げ、海外でもマーチャンダイジングが作品を支える重要なビジネスになっていることを紹介しました。そのうえで、今後の日本のキャラクタービジネスに必要なのは、番組と玩具を連動させる従来の仕組みだけに依存しないことだと話しました。

現在の仮面ライダーは、テレビ番組に加えて、漫画、アニメ、ゲーム、CG、配信などへ展開を広げています。番組外の収益源を増やしながら、仮面ライダーというIPそのものをさらに成長させていくことが今後の課題です。「日本の特殊な作り方だけじゃなくて、スタンドアローンでも世界に売れるものを考えてほしい」。

講義の最後には、これからコンテンツ制作を目指す学生たちへのメッセージも。

「『仮面ライダーに似ている』と言われるものを作るのではなく、日本から新しいキャラクターを生み出し、それを世界に届けてほしいと思っています」

55年にわたって続く仮面ライダーの歴史。その裏側には、キャラクターを生み出すクリエイティブだけでなく、商品、マーケティング、物語、そして作品を長く育てていくビジネスの設計がありました。

質疑応答

Q. 毎年の仮面ライダーのモチーフはどのように決めていますか?

石森プロ、東映、バンダイなど、それぞれがアイデアを持ち寄って決めています。『仮面ライダーガヴ』はプロデューサーが女性だったということもあり、お菓子をモチーフにしています。

Q. 仮面ライダーのスタッフの魅力は?

監督には勉強熱心な人が多く、「こんな表現ができるならやってみたい」という姿勢を、作品に多く取り入れています。

Q. スーツ制作にはどのくらい時間がかかりますか?

スーツには、アクション用とアップ用という種類があり、アップ用のスーツなら、プロが作っても1ヵ月半ほどかかります。素材が合わなければ作り直すこともあり、費用も1体につき車1台分ほどかかるので、自主制作をするなら安く作るアイデアが必要ですよね。庵野秀明監督もそうでしたが、昔の特撮同人フィルムはみんなジャージで作ってました。

Q. 脚本を書く際に大変なことは?

VFXに対して優先的に予算がかかるので、そことの兼ね合いが大変です。脚本上では巨大な要塞を想定していても、実際には岩場など別のロケーションになることがあるため、撮影できる環境に合わせて脚本を書き換えたりしています。

Q. 最近の仮面ライダーでおすすめは?

やっぱり『仮面ライダーW』がおすすめですかね。かっこいい作品を観たいなら、平成前期なら『仮面ライダークウガ』もおすすめです。

Q. 今後、ゲームなどへの展開はありますか?

ゲームやCGアニメーション、配信サービスなど、番組外への展開も進めています。『風都探偵』、『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』など、漫画から実写、実写から漫画へと展開するような、新しいIPの広げ方を考えているところです。

文:ババショウタ