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【開催レポート】THINK FROM MONEY. 大久保 圭太先生による特別講義「財務のデザインが導く、サステナブルな企業サイズ。」

【開催レポート】THINK FROM MONEY. 大久保 圭太先生による特別講義「財務のデザインが導く、サステナブルな企業サイズ。」

開催日時

2023年1月19日(月)19:30~21:00

場所

デジタルハリウッド大学駿河台ホール/Zoomオンライン中継

サステナブルな企業のあり方、事業の構築を再考する特別講義「THINK THE SIZE.」。全5回の共通のテーマは、未来を見通すためのひとつの視点である「サイズ」です。2023年1月19日に実施された「THINK FROM MONEY. 財務のデザインが導く、サステナブルな企業サイズ。」では、Colorz Consulting 株式会社 代表取締役 / 税理士の大久保 圭太先生が登壇しました。

税理士として、お客さんの財務面をサポートし、経営者としても自社の資金繰りを経験してきた大久保先生だからこそできる、お金から未来を考える講義が行われました。

本講義は、デジタルハリウッド大学駿河台ホールとZoomによるオンライン中継のハイブリッド形式で実施しました。

大久保圭太Okubo Keita
Colorz Consulting 株式会社 代表取締役/税理士

会計事務所を経て旧中央青山PwCコンサルティング(現みらいコンサルティング)グループに入社。中堅中小企業から上場企業まで幅広い企業に対する財務アドバイザリー・企業再生業務・M&A業務に従事。2011年に独立し、堅実な財務コンサルティングを中心に、代表として累計1000社以上の財務戦略を立案している。著書に「借りたら返すな!」(ダイヤモンド社)

企業を守るのは利益ではない、現預金である

企業が半永久的に存続し続けるために、つまり倒産させないためにはどうすればよいのでしょうか。

大久保先生は講義冒頭で、「経営者は売上や利益などをよく重視しますが、企業を守るのは現預金です」と断言しました。「なぜなら、金融機関は返せる見込みのある企業に積極的に融資し、お金を持っていない企業への融資は消極的だからです」と話します。

借金=お金に困っている人がするもの、というイメージが強いかもしれませんが、実際はそうではありません。銀行は自身の経営を安定させるために、現預金を持っているけれど融資が必要だという企業を好みます。

1990年代にはバブルが崩壊し、2000年代にはリーマンショック、2010年代には東日本大震災が起き、2020年代には新型コロナウイルスが流行。このように、不測の事態は定期的にやってきます。いつの時代も、現預金を持っている企業は生き残り、お金を持っていない企業は倒産してきたと大久保先生は言います。

「企業を守るのは現預金である」という考え方は、企業の財務戦略を考えるうえで、基本原則であることを話しました。

大久保先生は、財務の相談もできる税理士事務所として差別化を図る

2011年に独立して以来、大久保先生は税理士として多くの企業の財務を見てきたと言います。

「僕の税理士事務所がお客さんに選ばれた理由は、財務コンサルティングができたからだと思っています。税理士事務所の多くは申告書類の作成を主に行っており、財務面のサポートはしていません。その中で僕たちは、資金調達のお手伝いに力を入れたり、財務の観点から経営上のアドバイスをしたりして、お客さんがお金を集められるように尽力しました」

一般的な会計事務所や税理士事務所の場合、申告業務の中で節税のアドバイスをしてお客さんの資金繰りをサポートするケースが多いそうですが、大久保先生の考え方は違います。

企業を守るのは現預金という前提のもと、利益をきちんと出して、税金を適切に納め、会社を強くする。財務戦略上、節税はそこまで重要ではないのです。

簡単に言えば税金というのは、「納税額=売上−経費」と計算されます。経費の増加を重視するのが節税の基本的な考え方ですが、大久保先生は売上額の増加を重視するそうです。その理由を大久保先生は「節税は短期的なメリットでしかなく、財務基盤を弱らせてしまうから」と話しました。

起業したら、成長、成長、成長。ではその先は?

大久保先生が立ち上げたColorz Consulting 株式会社は、自社としても億単位で融資を受けました。

しかし大久保先生は、急にお金持ちになったせいで金銭感覚が麻痺してきたと話します。「僕たちは利益で得たお金ではなく、融資によって資金を調達して、会社が大きくなったと錯覚してしまいました。まずバーのようなオフィスを作り、筑波にも別事務所を立ち上げて内装にもこだわりました。ほかにもフードトラックを始めるなど、後先考えずにお金を使った結果、資産よりも借入の方が多くなってしまったんです」

自社の経営のことになると、いかに財務戦略が難しいか、ご自身の失敗談をもとに話しました。

成長させるのは、それだけ守る範囲も増えるということであり、リスクも拡大します。大久保先生は数々の起業家に会う中で必ず、「事業を成長させたい」という言葉を聞くそうです。彼らに理由を聞いても「なんとなく大きい方が良い」という答えが多く、成長した先の世界観が見えてこない。

ご自身の経験も踏まえ、事業を推進する際には目的地を明確にすることで、節税を重視するのか成長を重視するのかが変わってくると話しました。

会社の出口は、IPO・M&A・事業承継・清算・倒産のいずれか

では、日本の企業は自社の目的地をどのように設定しているのでしょうか。ここで会社の出口戦略に話が移りました。

大きく分けて、会社の出口は5つ。まずは「IPO(株式公開)」です。IPOとは、自社の株式を一般投資家に売り出すために、株式市場に上場させること。上場前までは経営者が会社の主権を持ちますが、IPOをした会社は公的なものになり、会社の主権は株主に移ります。

2つ目の出口は「M&A(合併買収)」です。2つ以上の会社がひとつになり、売り手の経営権が買い手に移行します。

3つ目は、子世代や第三者へ経営権を譲る「事業承継」です。

ここまでは会社が存続しますが、4つ目以降は会社を畳むという選択肢です。

4つ目の出口は「清算」。一般的には会社の財産を関係者に分配する手続きのことを言いますが、この講義では、資産を保有する会社の経営者自らが判断して、閉業することを指しました。たとえばコツコツ節税対策をして、退職金などを積み上げた個人事業主は、この出口に落ち着くことが多いそうです。

5つ目の出口は「倒産」です。借金を返すことができず企業活動が不可能になり、会社を畳むしか出口がない状態を指します。

日本企業の社長の平均年齢は年々上がり続け、2021年時点で62.77歳。そのため中小企業庁はM&Aや事業承継を積極的に行うよう発信しています。(出典:東京商工リサーチ「2021年「全国社長の年齢」調査」)

しかしながら、帝国データバンク「事業承継に関する企業の意識調査(2020)」によると事業承継に関する計画がない、分からないと回答する人は、全体の47.9%に上ります。社長の年代が上がるにつれて、自社の出口が分からないと回答する人は増えているのです。

また、M&Aは手続きが複雑であるため企業と企業の間に仲介業者が入るのが一般的です。しかしその業者は、会社の購入金額に対する何%かを手数料としているため、大きな企業のM&Aを優先してしまいます。そのため、売買の金額が小さい中小企業では、M&Aが積極的にされない状況にあるそうです。

これらのことから全国の中小企業は後継者不足に陥り、4つ目や5つ目の出口である、清算や倒産に追い込まれているのだと、大久保先生は言います。

日本で起業するメリットは?

ここまでの話を聞いて、進行を務める株式会社〆の泉水さんは「先生は今日、地獄の話をしに来たんですか?」と冗談交じりに聞きましたが、大久保先生は「ここからは、社会に出ていく学生さんにとって希望のある話をします」と続けました。

「日本は他国と比較して低金利で借り入れができることから、起業する人にとって調達天国と言われています。たとえば日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用すると、仮に1,000万円の融資を希望する場合、その額の10%以上の自己資金があれば、融資を受けられる要件に該当します」

さらに大久保先生は、個人で借金をするのと、法人として借金をするのではリスクに大きく違いが出ると話しました。

「会社の借金が返せなかった場合、家や車など全財産が差し押さえされるイメージを持っているかもしれませんが、経営者の財産が侵されない融資制度もあります。法人格として無担保・無保証人で借りることで、個人の財産を守りながら経営者として攻めることもできるのです」

企業が多様化することで、個人事業主が増え、大企業の仕事が減るのでは?

特別講義本編が終わり、ここからは質疑応答の時間。

参加者からは「多様化がキーワードになっている現代社会において、個人経営のような小さなビジネスが増え、大企業のような大きなビジネスは減っていくのではないでしょうか」という質問が届きました。

これに対し大久保先生は、「多様化というのはもちろんキーワードになりますが、おそらくより独自性の高い事業にお金が集まるようになると思います。そのため、多様性の時代だからと言って大企業が減ることはないでしょう。」と主張。

むしろ大企業がビジネスの中心地となって、インフラ的立ち位置になる。給与以外の経費がかかる大企業専属の社員は減り、業務委託契約を結んでいる個人事業主に仕事が集まるのではないか、と予想しました。

出口戦略はどうやって考えれば良い?

ほかには、「大久保先生が目指す、自社のサイズは?」という質問も寄せられました。

「現在Colorz Consultingは、社員だけでなく優秀な業務委託の子たちにも頑張ってもらっています。彼らに仕事を割り振ることで会社は安定していますし、彼らも儲けられる世界観になっていますが、これが最適解かは正直悩ましいところです。早めに若い人たちに席を譲りたいと思っていて、僕らの世代とはまた違った化学反応を起こしてくれると思っています」と、大久保先生が思い描いている出口を紹介。

続けて、「起業するにあたって、どんなマインドで出口戦略を立てた方が良いですか?」という質問に対しては、このように回答されました。

「やはり、何のために起業するかが大切です。シンプルに “お金をたくさん稼ぎたい” でも良いんです。堂々と稼いで、堂々と納税してください。最初は、せっかく生み出した利益なのに、なんで税金を払わされるんだと思うかもしれませんが、そこでぐっと我慢することで、物事を大局的に見れるようになるはずです。10年頑張って、会社をどこかに買ってもらって、あとは自由に生きるという出口もあります。実際に走りだしてから、出口を考えてみるのも良いかもしれません」

大久保先生は学生たちに向けてエールを送り、特別講義は終了しました。

   

平野紫耀さんが登場!デジタルハリウッド大学新CM『みんなを生きるな。自分を生きよう。2024』

本気で夢を追うって
簡単じゃないんだってマジで

これから先、諦めたくなる瞬間が
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もちろんおれにもくる

でも、その夢を実現できたら、
きっと「最高だ!」って思えるんだよ

だから、とにかく一歩踏み出す
その選択が正しいかなんて、
今の時点じゃ誰にも分かんないし

最終的に、自分の道は、
自分で選ぶしかないでしょ!

みんなを生きるな。
自分を生きよう。

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