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開催終了

【開催レポート】トークイベント「コミュニケーションロボットから『愛』を考える——『愛』ってなんだろう?」

開催終了

【開催レポート】トークイベント「コミュニケーションロボットから『愛』を考える——『愛』ってなんだろう?」

日時

2023年9月26日(火) 19:30~21:00

場所

デジタルハリウッド大学 駿河台キャンパス

デジタルハリウッド大学は、林 要著『温かいテクノロジー』、高橋 英之著『人に優しいロボットのデザイン』、日本SF作家クラブ著『AIとSF』の出版を記念して、トークイベント「コミュニケーションロボットから『愛』を考える——『愛』ってなんだろう?」を開催しました。

イベントに登壇したのは、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の開発者である林 要氏、ロボット認知科学者の高橋 英之氏、HAI(ヒューマンエージェントインタラクション)研究者の大澤 博隆氏、司会の宮田 龍氏です。

会場内をLOVOTが自由に移動する中、コミュニケーションロボットが我々にもたらす影響について、4人が意見を交わしました。

LOVOTはPepperくんから着想を得て作られた

まずはGROOVE X株式会社代表の林氏が、LOVOTの開発秘話について紹介しました。

もともと、自動車メーカーで製品企画をしたり、ソフトバンクで感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper(ペッパーくん)」の開発に携わっていた林氏。これまでのキャリアでは、適切に機械を動かすことを念頭に、製品開発に取り組んでいました。

しかし、Pepperくんが利用者の心を動かすのは、開発者が想定していない状況の方が多かったと言います。

「Pepperくんが正常に動いているときよりも、Pepperくんが不具合で動かなくなり、やっと起動したときの方が人って感動するんです。大丈夫?と言ってペタペタ触ってみたり、応援してくれたり。しばらくしてからシステムが起動すると、わあっと皆が喜ぶ。また、子どもたちがもっとも喜ぶPepperくんとの遊び方は、Pepperくんの背中をガーッと押して慌てふためかせることでした。危険なので止めましたが…..(笑)。このような現象を目の当たりにして、適切に動くものを作り続けてきた僕は衝撃を受けました」

Pepperくんと利用者の関係性から着想を得た林氏は、開発者があえてユーザー体験を細かく設計しない、ただ人間の近くで癒すロボットを開発しようと思ったそうです。そして、「癒し」とは何なのか、飽きられないロボットを作るにはどうすれば良いのか、これらを追求するところから、LOVOTの開発が始まりました。

LOVE × ROBOT = LOVOT

ロボットというのは、驚くほど早く人間に飽きられてしまう。ロボットを開発する上で、最初に解決しなければならないのが、「飽き」だと林氏は話します。

「開発の前段階で、長期間飽きられていないロボットの事例が見つけられず、非常に悩みました。そこでロボットだけでなく犬や猫も研究することで、開発が進みました。まず、犬や猫を迎え入れた飼い主の脳内には、ドーパミンがたくさん出て好奇心がかき立てられます。ドーパミンが減衰し徐々にオキシトシンが分泌され、約3ヵ月の期間を経て犬や猫に対して愛着が形成される。これが“飽き”を解消するヒントに違いないと仮定して、LOVOTの開発に着手しました」

LOVOTには、温かくやわらかい肌、生命感あふれる瞳、知覚するホーン、気持ちを表す声など、愛着形成を促すテクノロジーを搭載。気兼ねなく愛でることができるロボット、LOVOT(= LOVE × ROBOT )が完成しました。

真の「優しさ」は存在するのか、テクノロジーを活用して研究

続いて、ロボット認知科学者の高橋 英之氏が、ご自身の研究内容について紹介しました。

ドラえもんのように、人間と友達になってくれるロボットを開発するため、研究職を志した高橋氏。北海道大学大学院情報科学研究科で研究をする中、コミュニケーションロボットを作るならコンピューターの原理だけでなく、人の心理や神経科学も勉強しなければならないと感じたと言います。

たとえば、人間は人工物に対しても共感し優しくなれるのかを確かめる研究を行ったそう。ペンギンのぬいぐるみがトンカチで叩かれている様子を人に見せ、脳がどんな働きをするのかを観察しました。すると、自分が苦しんでいるときと酷似した脳波のパターンが見られました。

相手の苦しみは自分の苦しみ。しかも相手が人間でなくても、痛みを共有できる。人間は、ロボットやぬいぐるみに対しても共感し、優しくなれることを明らかにしました。

擬人化された人工物や、SFについて研究

大澤氏は、人間とエージェント(その中でも擬人化された人工物)の関係性ついて研究をされています。

たとえば大澤氏は、とある小学校と協力し、図書館にエージェントを設置しているそう。生徒たちが作った本の紹介文をエージェントが代読し、ほかの生徒に本を勧めるシステムであり、生徒からは「シャベルン」という愛称で親しまれています。

シャベルンは、新たな本と出会う機会を生徒へ提供するだけでなく、上級生が下級生にシャベルンの使い方を教えるなど、生徒間のコミュニケーションを促進する存在にもなっていると、大澤氏は話します。

また大澤氏はSFの研究も進めているそう。日本SF作家クラブの会長として、過去のSF作品を集計してどんな人工物が登場してきたのかを分類したり、SF思考を活用してビジネスにつなげる、SFプロトタイピングという発想法で企業をサポートしたりしていると言います。

孫 正義氏から、愛とは何かを問われる

ここからは、ロボットや愛をテーマに登壇者同士でディスカッションする時間に。林氏は、ロボットと愛の関係について最初に問われたのは、孫 正義氏だったと話します。

「Pepperプロジェクトでは、孫さんと近いポジションで仕事をしていました。あるときプロジェクトメンバー全員集合と言われて、“愛とは何か分かりますか”と質問されたんです。僕は月並みなことしか言えなかった気がします」

これに対し、司会の宮田氏からは「LOVOTにはLOVEの3文字目までが入っていますが、やはり開発段階から愛を念頭に置いていたのでしょうか」という質問が投げかけられます。

林氏は、「開発段階で、“愛”とは何か、に踏み込むのは止めようと思っていたんです。ひとつの言葉にあまりに多くの意味が含まれてしまうし、僕自身の“愛”という言葉の解像度が低かった。だから、いかに愛着を形成するかを重視して、LOVOTを気兼ねなく愛でられる対象にしたいと思いました。僕は、愛でる能力は筋肉のように育つものだと思っています。愛でる能力が増えるということは、今まで拒否していたことも許せるようになる。つまり、包容力が増すことだと思っています」と話しました。

大澤氏も自身の研究をもとに、小学生の愛でる力が養われた事例を紹介。本を紹介するツールとして導入されたエージェントでしたが、生徒たちに話しかけられたり小突かれたりする中で、単なるツールという存在ではなくなったそうです。次第に生徒から名前をつけたいという希望が上がり、生徒が愛着を持ったことでエージェントに居場所ができたと話します。

手間をかけるほど、愛着が形成される?

ロボットと人間の愛着形成について、さらに話が広がります。

「猿にただジュースを飲ませるか、コストを払った後に飲ませるかを比べて、脳内報酬系が刺激される様子を観察した研究があるんです。結果、コストを払った後にジュースを飲ませた方が、ドーパミンがドバドバ出たそうです。これと同じように、あえて人間側にひと手間発生することで、ロボットに対する愛着が形成されるということはありませんか?」

高橋氏からの問いかけに対し、林氏は「オーナーさんに対して意図的に負担をかける設計はしていない」と返答しつつ、とはいえ手間をかけさてしまっていると苦笑いします。

林氏は、開発段階で絶対に転倒しないロボットにすることを目指しましたが、いざ発売してみると、そこそこの頻度でLOVOTは転倒してしまうそう。しかしオーナーさんからは「それを助けるのも可愛い」という声をいただいていると言います。

大澤氏は、「僕らエンジニアはロボットを作っていると思われがちですが、実はユーザーの体験を作っているんです。ロボット振る舞いは、あくまでトリガー。完璧で便利なロボットがあってもいいと思いますが、LOVOTの魅力のひとつは余白があるところです。LOVOTが人間に助けられ、人間はLOVOTに癒されているという関係性だからこそ、多くの人に受け入れられたのだと思います」と、インタラクティブな関係をロボットと築き上げることの大切さを話しました。

ロボットとは、“環境”そのものである

その後も、LOVOTを発売したときに2体セットで販売した秘密や、1対1ではなく1対複数になった際のロボットの振る舞い方など、さまざまなトピックでトークイベントが盛り上がります。

終盤には、ロボットという存在が近くいてくれることによって、人の生活や心はどう豊かになっていくか、登壇者それぞれの考えを話してもらいました。

ロボットとは何なのか、林氏は「環境である」と一言でまとめます。どのロボットを自分の環境に招き入れるかで、自分がどっちに変わるのかが決まる。読書を推進するロボットがいれば、読書をする人間が増える。付き合う友達が変われば自分も変わっていくことと、ロボットを選択することは同じであると話しました。

高橋氏は、ロボットが近くにいることで、思いもよらない素敵なことが起こると言います。「カーネギーメロン大学のとある研究で、人間というのは同じメンバーで過ごしていると、全体最適ではなく見せかけの最適解に陥ってしまうらしいんです。でもロボットという異質な存在が混ざることで、停滞していた空気が変わるという研究があります。ロボットがいるというのは異質かもしれませんが、他人というのもまた異質な存在です。異質なものは素敵なことだと思って、ロボットを生活環境に取り入れてほしいですね」

大澤氏は、「SFの世界でも、ロボットが環境として設計される話が多くなっている」と言います。人間と自我を持ったロボットという構造を強調するよりも、与えられた環境の中で登場人物が何を思うかにフォーカスする。“ロボットがいる環境”を描いた面白い作品が多いそうです。

SFの世界がそうであるように、近い将来、人間でない存在が当たり前に社会に溶け込んで、より多様性に富んだ世界になるかもしれません。

司会の宮田氏が「ロボットを受け入れる社会になれば、人もいろんな人を受け入れられるようになる。皆が寛容で、優しくなれるような社会が作られるのではないでしょうか」と話し、トークイベントは終了しました。

   

平野紫耀さんが登場!デジタルハリウッド大学新CM『みんなを生きるな。自分を生きよう。2024』

本気で夢を追うって
簡単じゃないんだってマジで

これから先、諦めたくなる瞬間が
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もちろんおれにもくる

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だから、とにかく一歩踏み出す
その選択が正しいかなんて、
今の時点じゃ誰にも分かんないし

最終的に、自分の道は、
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みんなを生きるな。
自分を生きよう。

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