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【開催レポート】柴山 智隆特任教授 就任記念公開講座—映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』ができるまで—

【開催レポート】柴山 智隆特任教授 就任記念公開講座—映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』ができるまで—

映画『千と千尋の神隠し』、映画『心が叫びたがってるんだ』などの制作に携わった後、スタジオコロリド作品『泣きたい私は猫をかぶる』でアニメーション監督デビューした柴山 智隆氏。

2024年5月24日には、監督として2作品目の映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』がNetflix にて世界独占配信、日本で劇場公開されました。

【本予告】映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』5月24日(金)公開

そんな数多くの劇場作品、テレビシリーズ、アニメーションCMに携わってきた柴山氏(以下、柴山先生)が、2024年4月にデジタルハリウッド大学の特任教授に就任しました。柴山先生は、アニメーション監督の役割と具体的な業務を指導する授業「アニメ制作概論」を担当します。

そしてデジタルハリウッド大学では6月4日に、柴山先生の特任教授就任を記念して、公開講座「映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』ができるまで」を開講。

今回は柴山先生と司会の高橋先生とのトークセッション形式で授業が行われ、柴山先生は、最新作がどのようにして作られたのか、監督はどのような役割を果たすのかを解説しました。

10代をターゲットに、オリジナルのアニメ映画を作ってほしい

2020年、映画『泣きたい私は猫をかぶる』がNetflixで全世界に配信された直後、再び柴山先生はオリジナルの完全新作アニメ映画の監督を任されます。

「『泣きたい私は猫をかぶる』のように、10代の方に視聴されたケースは珍しい。また同じターゲットに届くような、まったく別の作品を作ってください」

2020年から企画が立ち上がり、4年もの制作期間を経て『好きでも嫌いなあまのじゃく』は2024年に公開されました。アニメ映画の制作にはやはり時間がかかるものなのか、司会の高橋先生から問いかけられます。それに対し、「オリジナルだとこれくらいかかってしまうもの」と柴山先生。

近年、マンガや小説などすでに原作がヒットしている作品をアニメ化するケースが多く、『新世紀エヴァンゲリオン』や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のような、描きおろし作品の公開が少ない状況です。

「すでにファンを獲得している原作をアニメ化するなら、ある程度の興行収入を見込めるのですが、オリジナルシナリオのアニメを作ろうとすると、興行収入を予想できない。そのため出資者を説得するのが難しいんです」と柴山先生は解説します。

しかし、柴山先生が所属しているスタジオコロリドはNetflixなどと協力し、『泣きたい私は猫をかぶる』や『雨を告げる漂流団地』のようにオリジナル長編アニメの制作に挑み、ヒット作を連発しています。

【プリプロ】アニメ監督の最初の大仕事

アニメの製作工程は、「プリプロダクション」「プロダクション」「ポストプロダクション」という3つに分かれています。一般的にプリプロダクションとは、映像制作前の準備段階であり、企画やシナリオを整える工程。プロダクションの段階で、場面レイアウトや原画作成、ペイントなどが行われ、ポストプロダクションの段階で映像と音声を組み合わせ、作品を完成させます。

『好きでも嫌いなあまのじゃく』のプリプロダクションで、柴山監督は、企画・プロット・シナリオ・絵コンテなどを担当。最初に4つの企画をプロデューサーに提出し、その内の1つである鬼の少女の物語が採用されます。

当初は、男の子少年がお面をつけると若返ってしまい、鬼の女の子少女との関係性が変わり、最後は女の子少女が男の子少年のお母さんのようになってしまうというシナリオを考えていたそう。

一方で本作は、主人公の柊が鬼の少女ツムギと出会い、ツムギの母親を探す旅に巻き込まれるシナリオです。完成作品と原案のシナリオがかなり異なることが分かります。

プリプロダクションの段階では、シナリオの詳細が確定していなかったと話す柴山先生。シナリオと同時並行で、絵コンテの制作を始めたそうです。

「絵コンテとは、絵で表したシナリオのことです。映画全体の設計図のようなもので、すべてのシーンの絵コンテを用意しなければアニメーターの方は原画を作ることができません。今回は監督である僕が絵コンテを担当し複数人の演出さんに描いていただいた絵コンテを監督として修正して、僕の担当パートと合わせる形で、大まかな画面構成、カメラアングル、カメラワーク、セリフ、ト書き(登場人物のアクションや心情など)、尺などを場面ごとに決めていきました」

脚本家の柿原 優子氏と共同でシナリオ制作をしながら、柴山先生は絵コンテの制作に約9ヵ月かけたと言います。

【プロダクション】 「発注」と「チェック」が監督の仕事

絵コンテができあがってくると、原画、背景美術、3DCGのモデリング、ペイントなどを行う、プロダクションフェーズに移行します。

商業アニメの制作は分業体制が基本。プロダクションの段階で監督が果たすべき役割は、スタッフへの「発注」と、提出されたものの「チェック」です。

たとえば、『好きでも嫌いなあまのじゃく』には原作となる作品がないため、制作陣はシナリオだけでなく、キャラクターデザインも0から自由に考えることができます。

今回は、キャラクターデザインを担当した横田 匡史氏と近岡 直氏に、主人公の柊、ヒロインのツムギ、本当の気持ちを隠す人間から現れる小鬼など、登場するキャラクターのデザインを発注。プロットやシナリオから横田氏らがイメージしたキャラクターと、監督のイメージをすり合わせながら修正を重ねていきます。

「原画を作るアニメーターと、キャラクターデザイナーの仕事はまったく異なります。オリジナルアニメが少ない昨今、0からキャラクターをデザインする機会が少ないので、デザイン担当になりたくてもなかなかなれません。そのためアニメーターさんの中には、仕事以外にオリジナルのキャラクターを落書きとして作って、仕事を得られる方もいますは少ないですが、仕事の合間に落書きをしたり、オリジナリティのある絵を普段から描かれているアニメーターさんが抜擢されることが多いです」と柴山先生は話します。

また、本作で印象的な雪の描写に関しては、監督から3DCGチームと撮影チームに任されます。雪が降る方向、粒の大きさ、密度、重さなど細かい発注をし、奥行きのある自然な環境を構築します。

【ポスプロ】鬼の語源とされる、隠(おぬ)から連想して声優を起用

プロダクションが終わると、着色された2Dの原画キャラクター、3DCGモデルを1枚画として合成(コンポジット)したり、音響を整えたりする、ポストプロダクションフェーズに入ります。

柴山先生の仕事は引き続き、「発注」と「チェック」。主題歌、効果音、劇伴(サウンドトラック)、効果音を担当者さんにキャラクターボイスなどを音響監督に発注し、納品されたものを柴山先生がチェックしました。

『好きでも嫌いなあまのじゃく』の場合、映像を見ながらに合わせて音楽を入れていく、フィルム・スコアリングという方法で劇伴を制作。

一般的にテレビアニメの場合、日常シーンやアクションシーンのようにテーマを決めて、汎用性の高い曲を発注します。一方で今回は、柴山監督と音響監督が相談しながら、シーンごとにどんな劇伴を流すか、もしくは流さないのか線引きをします。それから劇伴担当者作曲家さんに発注し、映像を見ながらに合わせて作曲をしてもらいました。

また柴山監督は、柊の声として小野 賢章さん、ツムギの声として富田 美憂さんを起用します。

「鬼という言葉は、目に見えないもの、人ならざるもの、隠(おぬ)が転じて使われるようになった説があります。柊は、気持ちを表に出さない、人ならざるものと出会う人物であるため、奥行きのある声でいてほしかった。そのため『泣きたい私は猫をかぶる』でもお世話になり、素晴らしい声をお持ちの小野さんに柊役をお願いしました。ツムギは、映画の中では人間界でたった1人の鬼の少女ですから、特別な存在、特別な声でなくてはなりません。存在感のある声が良いと音響監督さんに相談し、何名か候補をいただきました。サンプルボイスを聞いたり、過去の作品を見たりして富田さんにツムギ役をお願いしました」

このように公開されたばかりの『好きでも嫌いなあまのじゃく』の制作プロジェクトを、貴重な資料と合わせて解説してもらい、90分の公開講座が終了しました。

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