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【開催レポート】Apple Vision Pro向け作品を作る特別講義「NEWVIEW PROJECT -空間コンピューティング-」
【開催レポート】Apple Vision Pro向け作品を作る特別講義「NEWVIEW PROJECT -空間コンピューティング-」
2024年10月4日、デジタルハリウッド大学は特別講義「NEWVIEW PROJECT -空間コンピューティング-」を開催しました。
担当講師はDiscont氏です。Discont氏は株式会社STYLYに所属しながら、XR(クロスリアリティ)アーティストやディレクターとして、さまざまな作品の制作、展示会の企画などを行っています。また、XRを基軸に集まったアーティストによる実験的表現集団「NEWVIEW PROJECT」を主催しています。
今回の特別講義の目的は、空間コンピュータ「Apple Vision Pro」向けの作品を作ること。Apple Vision Proを初めて触る学生が多くいましたが、基本的な操作方法を学びながら、ゲームエンジンプラットフォーム「Unity」でプロトタイプ作品を制作していきました。
空間コンピューティング部門を新設した、XRクリエイティブアワード「NEWVIEW AWARDS 2024」
特別講義の冒頭でDiscont氏は、XR作品を作るのに難しい技術はそこまで必要ないと強調します。
「VR、ARなど3次元空間を使って何かを表現をしようと思った際、3Dモデルがないと作れなさそう、作らないといけないものがたくさんあって大変そう、と思われる方がいますが、全然そんなことはありません」
2018年ごろにSTYLY、パルコ、ロフトワークが共同で立ち上げた「NEWVIEW PROJECT」は、3次元空間での新たな表現と体験のデザインを開拓する、という目的で作られました。
プロジェクトに参加したのは、XRを専門としているクリエイターではなく、ファッション、音楽、映像、グラフィックなど、すでにさまざまな領域で活躍している方ばかりです。XRという新技術を活用して、自分たちのフィールドをどう拡張できるかを模索していると言います。
たとえば、2018年にグラフィックアーティストの伊波 英里氏によって制作されたVR空間『まんじゅうこわい/Scary buns』は、2Dの素材だけで作られました。
ほかにも、映像作家集団・最後の手段は、アナログのクリエイティブを3Dでスキャンして、異次元浴場『NEW 浴 VIEW』を制作。多ジャンルのクリエイターがXR領域に挑戦している事例を解説しました。
このようなXR作品を、世界中から募っているのが「NEWVIEW AWARDS」です。今年はApple Vision Proの登場に伴い、空間コンピューティング部門が新設されました。Discont氏は「ぜひデジタルハリウッドの学生にも挑戦してほしい」と呼びかけました。
Apple Vision Proに対応したサービスが続々登場
2024年6月28日に日本に上陸したApple Vision Pro。
「Apple Vision Proは、デジタルコンテンツを現実空間にシームレスに融合します。作業する。映画を観る。思い出を体験する。みんなとつながる。そのすべてを、かつてない方法でどうぞ。空間コンピューティングの時代が始まります。」(引用:Apple公式ホームページ)
Discont氏は、Appleが“空間コンピューティング”という言葉を用いて何を実現しようとしているのかに着目します。
「AppleはAR・VR・XRという言葉を使わず、空間コンピューティングという表現でVision Proを説明しています。これまでは、テレビやPC、スマホなどのデジタル空間はフレームに閉じ込められていました。ですがこれからはデジタル情報に接する方法が変わっていき、目の前の空間がすべてスクリーンになります。これが、Appleが考えている空間コンピューティングの世界なのでしょう」
それからDiscont氏は、Apple Vision Pro向けにどんなサービスが打ち出されているのかを解説。
たとえばバーチャルリアリティDJソフトウェア「djay」を使うと、ターンテーブルがなくても、目の前の空間に手を伸ばせばパフォーマンスを始められます。実際にライゾマティクスの真鍋 大度氏がApple Vision Proを使い、イベントでDJをしている様子も紹介しました。
また、ファッションブランド「ANREALAGE」は、ファッション体験を拡張するために、Apple Vision Proに対応したアプリケーションをリリースしました。これによって、ファッションショーや店内空間を自宅で体験できるようになります。
このように、空間コンピューティングの世界が広がりつつある事例を紹介しました。
Apple Vision Proを体験してみよう
今回の特別講義では、5台のApple Vision Proを用意していただき、機器の初期設定方法や基本操作から学んでいきました。
まずはApple Vision Proを装着し、目や手の動き方を個人ごとに設定します。すると、Appleユーザーにとって見慣れたアプリが、自分がいる空間に表示されました。アプリ間の移動は視線で、選択はタップで、スクロールはフリックで、入力は音声で行います。
使い方が分からなくなっても、Apple Vision Proで見ている画面を簡単に目の前のMacに表示できるので、Discont氏やティーチングアシスタントの方々がサポートしてくれます。
Apple Vision Proをつけている人とつけていない人で見ている景色が違う、なんだか不思議な光景です。
UnityでApple Vision Pro向け作品を作ろう
ここからは、Apple Vision Proで体験できる作品を作っていきます。
使用するのは、空間レイヤープラットフォーム「STYLY for Vision Pro」と、ゲームエンジンプラットフォーム「Unity」です。Unityで制作した作品をSTYLYへアップロードすることで、Apple Vision Pro向けにデジタルコンテンツを配信することができます。
まずはテストとして、3Dの立方体や球体をUnityで制作。これを再利用可能な1つのオブジェクト(プレハブ)としてファイルに保存し、STYLYへアップロードします。先ほどまでApple Vision ProやUnityを触ったことがなかった人も、20分程度で自分の作品をApple Vision Proに表示させられるようになりました。
特別講義は残り30分、最後は自分の作品を作ります。提示されたお題は「体験者に何かしらの行動を起こさせる作品」です。
たとえば、人がただ立っているだけの空間に、すごろくのオブジェクトを出現させると、その人はコマを進んでみたくなるはず。そんなふうに、何かしらの行動を起こさせるバーチャルオブジェクトを制作し、現実世界にファンタジーを混ぜた作品を学生に作ってもらいました。
自作の3DモデルをApple Vision Proにアップロードすることも可能ですが、今回はフリー素材をダウンロードしたり、テンプレートを使ったりして、自分のアイデアを形にしていきます。
「今回は、単なるオブジェクトをApple Vision Proに表示させましたが、たとえばUnityのVisual Scriptingという機能を使って、インタラクティブな作品を作ることもできます。ボタンを押すと何かが起きたり、サイコロを振ってすごろくゲームができるようになったり、ジェスチャーによってオブジェクトに変化を加えることも可能なので、気になる方は授業後も試してみてください」
Discont氏から最後にメッセージが送られ、特別講義は終了しました。