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【開催レポート】ヤーッコ サーリー特任准教授就任記念公開講座「フォトリアルの追求 Unreal Engineによる映像制作」
【開催レポート】ヤーッコ サーリー特任准教授就任記念公開講座「フォトリアルの追求 Unreal Engineによる映像制作」
デジタルハリウッド大学は、CGアーティストのヤーッコ サーリー氏を特任准教授として招聘しました。
ヤーッコ先生は、アドビ株式会社やフリーランスを経て、2022年に株式会社SonaGrafを創業。デジタルハリウッド大学では、Unreal Engineを使った授業「リアルタイムコンテンツ」や、3年次後期以降に履修できる「ゼミ」や「卒業制作」などを担当します。
そして2024年10月17日には、特任准教授就任を記念した公開講座「フォトリアルの追求 Unreal Engineによる映像制作」を開講しました。本授業では、リアルタイムCGがゲームやVRなどで活用されるようになった背景や、ヤーッコ先生がこれまで制作してきたフォトリアル(写実的)なCGにどんな技術が用いられているのかを解説しました。
リアルタイムでCGを描画するUnreal Engine
講義の冒頭で、VFX市場が年々拡大していることに触れ、Unreal Engineやバーチャルプロダクションの普及が市場拡大に大きく影響していると、ヤーッコ先生は言います。
そもそもVFXとは、現実世界を撮影しただけでは作れない映像を実現するために、実写とCG映像を融合させる技術です。従来は、グリーンバックなどを用いて撮影し、その後撮影した実写映像にCGの背景を描写したり、架空のキャラクターのアニメーションを追加したりしていました。
しかし現在はUnreal EngineによってリアルタイムでCGをレンダリングすることが可能になり、バーチャルプロダクションが普及してきたと話すヤーッコ先生。LEDビジョンに仮想空間を映し、それを背景として実物の被写体と同時に撮影する方法が、バーチャルプロダクションです。
バーチャルプロダクションの利点は数多くあり、たとえばロケーション・ハンティングを仮想世界で進められます。またバーチャルカメラが現実世界のカメラと連動して動くため、まるで仮想世界に存在しているような状態で演者はパフォーマンスができるのです。
従来の撮影方法から、今後はUnreal Engineを用いた撮影へシフトするのではないかとヤーッコ先生は話しました。
Unreal Engineを活用できると、キャリアの可能性が広がる
Unreal Engine=ゲーム制作ツールという印象が強いかもしれませんが、ヤーッコ先生はUnreal Engineを扱えるクリエイターは、ゲーム以外のさまざまな業界にも転職できると言います。
「VR、AR、コーポレートビデオの制作、建築会社など、CGアーティストの皆さんが、いろんなジョブチェンジをしているのを見てきました」
そのほかにもヤーッコ先生は、CGアーティストが活躍できる現場として、ニコンクリエイツの複合型撮影施設「平和島ステージ」や、キヤノンの「ボリュメトリックビデオスタジオ—川崎」を紹介。
ボリュメトリックとは、時間と空間を丸ごと撮影して3Dデータ化する技術(*)で、スポーツリプレイやミュージックビデオ、音楽ライブなどさまざまなシーンで使われている技術です。
このように、CGアーティストがさまざまな業界や場所で必要とされている現状を解説しました。
(*)参考:キヤノングローバル「ボリュメトリックビデオとは」
駅、高速道路、火山など、リアルなデモを解説
ここからヤーッコ先生は、Unreal Engineで自作したバーチャル世界が、どのように作られているのかを解説しました。
たとえば、2023年に公開されたJR代々木駅のホームの動画は、X上で拡散され一気に約60万回も再生されました。
見慣れた緑色の時計や黄色い点字ブロック、電車とホームの間にあるゲート、光の反射で見えにくくなった壁面のポスターなどすべてが緻密に再現されており、実写で撮影したと言われても疑わないほどリアリティがあります。
ヤーッコ先生は、どんな素材(マテリアル)を使って、雨上がりの代々木駅を表現しているのか、太陽の色味を調整してどのように時間の経過を演出するのかを解説。
ほかにも、高速道路や、錆びた車、火山などのデモを用いて、CG風に見えなくするテクニックや、PCG(Procedural Content Generation Framework)という機能を使って広大なワールドを作る方法など、Unreal Engineの画面を操作しながら普段の制作の様子を再現されました。
キャリアの相談ならヤーッコ先生に
公開講座の終盤には、参加者の学生や社会人の方々から、「先生の授業やゼミでは飛行機や車などハードサーフェスモデリングを作れる?」「煙のシミュレーションはどうやってループしている?」「リアルタイムにレンダリングすると、パフォーマンスが重くならない?」など数々の質問が寄せられました。
また最後に、ヤーッコ先生から学生へメッセージがあり、公開講座は終了しました。
「ゲーム制作や、ゲーム以外のCG制作を仕事にしたい方がいれば、私に相談してください。給与付きでトレーニングが可能な職場を紹介することが可能です。またデジタルスケープというクリエイターの仕事探しを支援している企業を紹介することもできるので、興味がある方はぜひ連絡してください」